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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
サラエルド編
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第23話、ゴブリン掃討作戦①

 今日はいよいよゴブリン討伐の日だ。

 俺たち三人は荷馬車に乗り込み、キグナスと初めて会った場所に来ていた。

 荷馬車の隊列は全部で七台。今回参加するギルドと同数だ。

 普通、馬車と聞けば黒塗りで対面座席のものを想像するが、今回の参加者に貴族はいない。よって行商に使うような天井のない馬車ばかりだった。

 もっとも、貴族以外にも天井付きの馬車に乗ってる人はいるだろう。しかし、ここに集まった人員は全て冒険者。馬車に金を掛けるような者たちではない。

 初めてキグナスに会った晩は、ここまで二時間掛かった。だが、早朝から出立した今日は、一時間程度の時間で到着できた。夜と昼ではこれだけの差がでる。御者席に付けられたランプと、日の光では月とすっぽん。当然だな。


「おう、キグナス。この辺で間違いないのか? ここから森までかなりあるぜ」


「なんだよ。まさかここから歩くのか?」


「もう少し馬車で進めんじゃねぇか?」


 この隊を仕切っているのは、情報元の俺たちだ。

 情報をもたらした事もそうだが、【ラフラン】はBランク昇格が決定しているギルドだ。そもそも、他のギルドとは信用が違う。

 俺がこの辺の地理に詳しければ、もっと良い場所で馬車を止められた。でも、そうじゃない以上、記憶を頼りに行くしかない。あの時は暗くて分からなかった。でも、実際現場に着くと、森まではかなりの距離があることが分かった。

 森は左側に霞んで見える。キグナスと会った時は、森から東へ逃げてきた。

 大まかな方角では街の方から離れるように歩いていた訳だ。

 でも、馬車をもっと手前に止めれば、森に近くなる訳ではない。街の方向は南。森は北。街に近くなればそれだけ森へは遠くなる。ややこしいが、これが冒険者の誤解を生んだ。馬車を止めて現場まで行くには遠かったのだ。


「細いこいつ(タケ)の足で夕暮れ時に二時間の距離だ。鍛え抜かれた俺たちならその半分で行けると思わねぇか?」


 憤慨する冒険者たちに、俺を指差しながらキグナスは説明する。

 俺は、学生時代に柔道をやってたといっても、この世界の冒険者と比較すればかなり細い部類だ。そんな俺と、重い大剣を振り回す冒険者を比較するとは。

 キグナスは相手を乗せるのが本当にうまい。

 冒険者たちは渋々文句を言いながら、荷馬車を道の端に寄せる。必要最低限の荷物を担ぐと、林の中をまばらに歩き始めた。


 俺が初めてここを通ってからもう一週間か。


 俺が踏んで折れた林はすっかり元に戻り、足跡さえも見分けが付かない。

 それでも、日が昇る方向と沈む方向を計算しながらひたすら歩く。

 一時間は歩いたが、目的の場所には着かなかった。うん、これは俺がゴブリンに追われる恐怖から、必死こいて走った(にげた)からだな。

 悪路を歩いたからか、アリシアの顔色が優れなくなってくる。大丈夫なのか? 

 でも、この前みたいにキツかったらキツいって言うはずだ。口に出さないということは大丈夫なのか。そんな事を考えてると、目的の場所に着いた。

 前方に小さな人影が見える。いた、ゴブリンだ。

 俺よりも先に発見した冒険者たちは、奇声を上げて駆けだした。


「ひゃっほー、巣穴にお宝があれば拾ったもん勝ちだぜ」


「おい、囲む様にちゃんと散開しろッ!」


「よぉ、キグナス。Bランクになるからって調子こくんじゃねぇぞ」


「ふん。おまえもな。アイザック。いつまでもCランクだからって無理すんなよ」


「さぁ、走れ、走れ、弓兵は後方支援。救護班はここで待機だ!」


 各自、ギルドマスターの指示で動き出す。俺は救護班だからここで待機だ。今回の三十名の冒険者の中に、救護班は俺しかいない。

 そもそも回復魔法を使える貴重な人材は、冒険者をやってないからだ。


 バッグからノートパソコンを取り出し、首にストラップを掛ける。ノートパソコンを左手で持つと、背面カメラを作動させた。いつものLIVE配信をする時の格好だ。録画ボタンを押して、映像がブレないようにしっかりと固定した状態でカメラを被写体へ向けた。


 アリシアは俺の少し前方にいる。五人の弓兵の中に混ざっていた。

 キグナスから中腰になるように指示が飛ぶ。ゴブリンの目を剣士に引きつけるためだろう。回り込まれて攻撃されたらたまらない。大人しく指示に従う。

 この距離なら林が邪魔してゴブリンにバレる事はない。足元にはスライムもいないしちょうどいい。

 前衛役の剣士と槍術士がゴブリンに接近する。次の瞬間、異状を察知したゴブリンが笛を鳴らした。ブォォォォォーとホラ貝の様な音が鳴り響く。それを合図に周囲の地面から次々にゴブリンが湧き出した。

 その数、目視しただけでも三十以上。恐らく百体はいるだろうか。


「くそっ。三十体じゃなかったのかよ」


「確認されてるだけで三十体だろ? その三倍でも俺は驚かねぇぜ」


「ちっ、無駄口叩いてる暇があんなら手ぇ動かせっての」


 前衛はゴブリンとの距離を詰めると、剣の間合いに入った瞬間に屠っていく。


「すげぇぇぇ。これが冒険者の戦いか!」


 俺は思わず戦い方に興奮して声をあげる。しかし、動画を撮影中だった事を思い出すとカメラマンに専念した。この距離では小さくしか記録はされない。

 俺は夢中で前に出ていた。まだ後衛と同じくらいの位置だ。危険はないだろう。


 百体いたゴブリン共は瞬く間に八十体まで数を減らす。数が減った事で焦ったのか、ゴブリンの巣穴からは弓を担いだ個体も出てくる。最後尾には、首一つ他の個体より大きいゴブリンの姿も確認できた。あれが恐らくゴブリンリーダーだろう。

 ゴブリンの上位種。スクープとばかりに俺はそれにカメラを向ける。

 ゴブリンの弓矢の範囲に入らなければ、いい映像は撮れない。


 もっと近づきたい。もっと。


 そんな欲求から後衛のアリシアたちよりも前にでる。

 まだ大丈夫なはず。もう少し、もう少し前へ。

 映像を映し出すモニターには、鮮明な画質で収められていた。


 よっしゃぁぁぁ! これで百万再生ゲットだぜぇ!


 戦闘に参加している訳でもないのに、俺の気分は高揚していた。

 そんな俺などお構いなしに、冒険者たちはゴブリンを始末していく。誰も彼も手練れだ。戦いのプロフェッショナル。危ない場面など一つもない。正真正銘の蹂躙(じゅうりん)だった。

 俺の、なんちゃってスライム蹂躙(じゅうりん)劇とは大違いだった。


 ゴブリンも棍棒では分が悪いと悟ったのか、弓を持った個体の動きが忙しなくなる。そして、隊列を組むと一斉に矢を放った。放物線を描きながら前衛の剣士に襲いかかる。だが、あるものはそれを軽くかわし、またあるものは降り注ぐ矢を剣で打ち落としていく。


 すげぇ。あんなマネが人間にできるんだな。


 俺は目の前で繰り広げられる戦いに夢中だった。そして気付かなかった。

 一本の矢が、キグナスを狙っていることを――。


お読みくださり、有り難うございます。

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