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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
サラエルド編
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第22話、一軒家

「おう、ここだ!」


 キグナスに連れられてやって来たのは、下級市民が暮らす区画にある一軒家。

 広さは日本の公営住宅と変わらない。玄関から入ると、居間があって、奥には寝室、台所、トイレ、浴室、客間が一つの所謂三LDKだ。


「兄貴はここを買ったんですか?」


 ひととおり、家の中を拝見した俺たちは、庭先に集まってた。

 広くはないが、自家用車なら一台止められる程度の庭だった。

 正直、この世界の家の価格なんて俺には分からない。でも、作りはしっかりしているし、庭もある。決して安くはないだろう。そう思って、キグナスに尋ねた。


「おうよ、まだ頭金しか入れちゃいねぇがな。ガハハ」


「タケくんと会う前に二人で決めてあったの。この街に腰を据えないかってね」


「そうなんですか。でも、俺が一緒に住んだらお邪魔そうですけど……」


 今、定宿にしている坂の上の林檎亭でも、夜な夜なお盛んな二人だ。毎晩、アリシアのあはんうふんな艶声を聞かされてる俺としてはね。二人の愛の巣にお邪魔するのは気が引ける訳ですよ。で、念の為に聞いてみたけど。


「ばぁか。タケは心配すんな。同じギルドだろ。それにな、毎回坂の上の林檎亭に泊まんのは食堂があるからいい。けどな、宿代と食費を五年切り詰めりゃこんだけの家が買えるんだ。ならこっちの方が断然良いだろうよ。飯は、まぁ何とかなるよな?」


 俺はキグナスの言う飯のくだりで、アリシアの視線が泳いだのを見逃さない。

 もしかして、アリシアって料理できないんじゃねぇのか。

 まさか、引っ越した当日から毎日外食とか。それって経済的だっていえるのか。


「それで兄貴。料理は誰が作るんですか?」


「うん? そりゃアリシアに決まってんじゃねぇか。できるよな? えっ……」


 おいおい、アリシアはお花摘みに行ってきます。とか言って席外しちゃったよ。

 お花摘みと言えば、トイレの隠語だけどさ、話題から逃げた感じがプンプンする。

 こんなんで、本当に大丈夫なのか。


「兄貴……」


「おう! 大丈夫だって。うん、大丈夫だ。何とかなっからよ。ガハハハ」


 大丈夫と言いながらも、こめかみに困った時に見せるシワが立ってるのは何でですかねぇ。アリシアの様子じゃ期待できなさそうだけど……。


 米があれば俺にも炊くことはできそうだけど、この世界ではまだお目に掛かってない。露天でも、食堂でも出されるのは必ずパンだからな。

 パンを作るのは職人に任せたとして、問題はおかずか。調味料ですらどんなモノを使っているのか分からない。そう考えるとめっちゃ不安だな。

 しかし、女って見た目では分からないものだね。眉目秀麗なアリシアが、まさか家事は苦手だとは……。全て完璧な女性は滅多にいないって事か。もっとも、俺も知勇兼備でも、花実兼備でもないから人の事は言えない訳だが。


 アリシアが戻ってくる頃には、料理の話題は消し飛んでいた。今の話題は、明日のゴブリン討伐作戦の話題だ。


「でな、タケ。おめぇが森の手前で遭遇したゴブリンの集団だが、この前、どうが? だっけか。それで見せてもらって俺は確信した訳だ。ありゃ、ゴブリンの上位種がいるってな。冒険者組合にも話してみたんだけどよ、組合の見解も俺と同じだ。でな、今回はゴブリンの巣を根こそぎ殲滅(せんめつ)するっていうんで、冒険者三十名。ギルド七チームで当たることになった」


「えっ、でも俺が見たのは三十体程度のゴブリンでしたよ」


「それだがな、おめぇを追いかけてきたのは確かに三十体程度だった。だが、巣に篭もってたヤツがいなかったとはいいきれねぇ。しかも、弓を背負った個体もいたって言ってたよな。それなら最悪、ゴブリンメイジや、その上位種のゴブリンリーダーがいてもおかしくはねぇ。ゴブリンの討伐は剣士見習いでも一対一で余裕で勝てる。まぁ、俺なら三体まとめても余裕だけどな。ガハハハ。だが……、そこに弓兵とメイジが混ざるだけでコロッと形勢は逆転しちまうのが魔物の恐ろしい所だ。まして、リーダーなんて上位種がいてみろ。余裕かましてたギルドがこれまでいくつも――つぶされてんだぜ」


 ゲームの中ではレベル上げの初期に出てくるただの雑魚モンスターだ。最初に殺しまくって、レベル上げに利用するだけの魔物。資金とレベルが上がれば、あとは素通りするだけの何でもないキャラ。それが、ここではそんなに強敵だとは思わなかった。実際、俺も初めて会ったゴブリンは絞め技で倒したからな。

 それにしても、俺がキグナスに見せた動画から討伐にまで発展するとはね。

 俺はまだ村人レベル一程度の戦闘力しかないが、冒険者VSゴブリンか。

 こりゃ、楽しくなりそうだな。


「兄貴、俺、まだ回復魔法しか使えませんけど……」


「分かってるって。おめぇはいつものようにケガをした時の救護班だ。後はどうが? でも撮るなり好きにしろッ」


「あざぁぁぁッス!」


 さすがキグナス。理解があって助かるぜ。


 ゴブリンを俺が倒す訳じゃないからポイントは稼げない。その代わり、一部始終を撮影してネットにアップすればチャンネル登録者も、再生回数だってウナギ登り間違いなしだろ、常考。


「キグナス明日の討伐だけど、できれば私も後方支援でいいかな?」


 あれ……。お花摘んですっきりした顔してると思いきや、顔色がすぐれないぞ。

 アリシアの体調が悪いなら、明日は休んだ方がいいんじゃねぇのか。


「あんま顔色が良くねぇみてぇだからな。明日はアリシアも無理はすんなよ。ゴブリンなんて俺たちで蹂躙(じゅうりん)してやっからよ。ガハハハ」


 キグナスもこう言ってるから大丈夫か。

 しかし、面白くなってきやがった。これぞ異世界の醍醐味(だいごみ)。むふふ。

 明日はお祭りだぜ!


お読みくださり、ありがとうございます。

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