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寝とられ男の足掻きと挽歌  作者: ピョン太郎
17/24

決意

カトレアの居場所はすぐにわかった。

教会の修道女の寮である。

男の所に転がり込んでいるのでは無いかと内心ではヒヤヒヤしていたのだが、修道女の寮は男子禁制である。

良かった


俺は次の日、教会に乗り込んだ。

見習い修道女や新人修道女は、日中、傷病人や負傷した兵士の治療をしている。

カトレアも例に漏れず腕に傷を負った負傷兵の包帯を取り替えていた。

包帯を取り替えられていた兵士は鼻を伸ばしている。

俺は奴に殺気を当て、意識を刈り取った。


するとカトレアがこちらに気付いたようで睨みつけてくる。

俺は明後日の方を向きながら口笛を吹いた。


しかし、本当にカトレアはアイーシャに似てきた。

先ほど見ていた包帯を替える時の横顔は、髪の色こそ違う物の、若い頃のアイーシャそっくりだった。


カトレアは手際よく気絶した兵士の包帯を巻き直し、次の兵士の介抱へと向かう。

しかし、次の兵士は顔はこわばり、冷や汗をダラダラながしている。

俺が後ろから睨み付けているからだ。

少しでも余計な動きをしてみろ、一生後悔させてやる。

俺は、声は出さず、口の動きだけで俺の意思を兵士に伝える。


「コ・ロ・ス」だ


それに気付いた兵士は顔を真っ青にして

「カトレアちゃん、俺は大丈夫っ、ほら向こうの奴の方が重体だしっ」と言って他の兵士を指差す

指さされた兵士は慌てて首を振って、拒絶の意思を示している。

懸命な判断だ。俺の前でカトレアの周囲20センチ以内に近づくなど、自ら処刑台に上がるに等しい。

俺の目の黒い内は誰もカトレアには近づけさせん!


するとカトレアが肩をいからせこちらに歩いてくる。

どうしたんだろうか?粗野な兵士達に囲まれやはり怖かったんだろうか。今日は帰ったらメイドさんにカトレアが大好きな砂糖がたっぷり入ったホットレモネードを作って貰うよう手配しなければ、そんな事を考えていると、

「パパ、こっちに来て」

と言って外に歩いていく

大丈夫、わかってるよ

いきなり家出して俺が怒っていると思ってるんだろう。

そりゃ昨日カトレアが帰って来るのを待っていて貧乏揺すりで床を踏み抜いてしまったし、聖竜騎士団にカチコミに行こうとするのをヨーゼフにしがみついて引きずりながら止められたし、一睡もせず騎士の格好をした藁人形を作り30個程五寸釘で打ち付けた。

しかし、カトレアには全く怒ってはいない

俺がこの天使に怒るなどあり得ない。

この天使は俺に残された最後の希望であり、この天使がいる場所はこの世で唯一の穢れない場所なのだから

だから心配しなくていいんだよ、そう思い教会の中庭にあるベンチの所にやってきた

俺はベンチに遠慮なく腰かけ、先ほど教会のシスターから頂いた紅茶に口をつける

今は真冬なのであったまるわぁ

すると

「どういうつもり?」

カトレアが言う

どういうつもりとはどういう事だろうか?

俺は娘が外泊したので、一晩泊めて頂いた教会の方にお礼を言って迎えにきただけなのだが

そうか、わかったぞ、俺は若い頃とは違い、肉より魚が好きだ。肉だと油が多すぎて胃もたれする。だから我が家では魚料理の比率が多かった。しかしカトレアはまだ幼いから肉の方が好きだ。カトレアの為なら胃もたれなんかドンとこいだ!

「今日はカトレアの好きなチーズハンバーグだぞっ、ヨーゼフも新しい隠し芸を習得したと言っていた、カトレアも今日はいっぱい兵隊さんを介抱して疲れただろう?早く帰ろう、メイドさんも待っている」

俺は微笑みを浮かべ、淀みなくそう告げる

俺は勝手に晩御飯の予定を代え、帰りにハンバーグの材料を買って帰らないといけないな、等と思っていると

「いい加減にしてっ!」

カトレアが、大声で怒鳴る

え?

「父さんはいっつもいっつも私の事を勝手に決めて、教会の仕事もさせず、昨日のリュークの事だってそう、父さんは良い顔をしないけど、私は聖女に選ばれた事を光栄に思ってるし、誇りにもおもってる!もっと色んな人の為に働きたいし、リュークはただの友達でとても良い人なの!ただ相談に乗って貰っていただけなのにっ!」

え?え?カトレアは何を言っているんだ

「もう家には帰らないから!」

カトレアは振り返り傷病者看護棟のほうに駆けていった。

父さん?父さんだと?俺の事をずっとパパと呼んでいたのに

俺は紅茶のカップが手からすり抜け落ちていった事に気付かなかった



それから、またヨーゼフと酒場にきた。

何やらヨーゼフが酒場の娘にサインをおくっている。ヨーゼフはこう見えてマメな男だ。酒場でバイトをしている猫耳女性ミカちゃん(27才バツ1子持ち)と出来ているらしい。

死ねばいいのに。

それから程なくして、ミカちゃんがエールのジョッキ2つとエンドウ豆を運んできた

ヨーゼフはエールに2、3度口をつけてから喋りだす

「カトレアちゃんも、もう16だろ?結婚してもおかしくない年じゃないか」

結婚だと?冗談じゃない!カトレアはまだ子供だ。体は大きくなってもまだまだ精神的に幼い。もっと精神が成熟し、カトレアにふさわしい男が現れるのを俺がちゃんと見極めてやらないと、あの子がどんな苦労を抱え込むかわかったもんじゃない!まだまだカトレアの清い心につけこむハイエナ共から守ってやらないと!

だが、ヨーゼフは

「お前、過保護すぎるんだって、聖竜騎士団と言えば将来が約束された超エリートじゃねえか、世の娘を持つ親からは羨ましがられるぜ」

こいつは何もわかっていない。

確かに冒険者よりは礼儀も重んじ、モラルもある。しかし所詮肉体労働。いつ命を落とすかわからないし、二度と剣を持てなくなるような怪我を負うかもしれない。そうなった時、カトレアは自ら苦労を背負おうとするだろう。そういう子だ。

そう告げると

「肉体労働の代表みたいなお前が言うな」

と言われた

「カトレアちゃんは自分で人の為に役立つ事がしたいって言ったんだろ?それならやりたい事を全力で出来るようサポートしてやるのも親の仕事だと思うぜ」

くそぅ、ヨーゼフの癖にまともらしい事を言いやがって。

俺は小便に行くと言って席を立ち、ミカちゃんにヨーゼフがこの前、定食屋のハナちゃんに鼻の下を伸ばしていた事を告げ口して家に帰った。

今頃、酒場は修羅場と化しているだろう。


そして俺は決意を固めた。

リュークをカトレアに相応しい男に育てあげるしかないと。待ってろ、死ぬより苦しい地獄の特訓がはじまるからな

俺はベッドの上で暗い笑みを浮かべた

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