4.こわがりのおっさん
公園でおっさんを見かけることが減りました。
不思議に思った「旅人」は、おっさんが暮らしている部屋に向かいます。
「公園に来てくれなくなったね。どうしてだい?
僕と話すのがイヤになってしまったのかな」
「そうじゃないよ」
おっさんは少し鬱陶しそうに言います。
そうじゃないとは言いつつも、やはりどこかイヤがっているように見えます。
「そうじゃないのなら、教えてほしいな」
「旅人」は普通に言ったつもりだったのですが、怒りと悲しみが声に滲んでしまいました。
おっさんは困ったようでしたが、「旅人」はそんな、困らせるつもりなんてなかったのです。
しばらく黙っていたおっさんはぽつりぽつりと語ります。
「こわいんだ」
「こわい? 僕がこの星のものじゃないから、こわくなってしまったのかい?」
「いいや、キミじゃない。外がこわいんだ」
おっさんは恥ずかしそうに言って下を向きます。
けれど「旅人」はそれだけで解ってしまいました。
「旅人」たちも、住んでいた星では外が嫌いでしたから。
住んでいた星はいつもギラギラとネオンが光って、どこでも絶えまなく喧騒が響き渡り、たくさんの者が集まって賑やかにしています。
そんな星だったからこそ、少なくはない者が「旅人」になったのです。
おっさんの気持ちがわかってしまった旅人は、「それなら、しかたがないね」とだけ言って去りました。
また別の日です。
外がこわくなってしまったおっさんは部屋から出てきませんので、「旅人」が部屋に行きました。
おっさんは部屋の中で布団にくるまっています。
「ぼくたち「旅人」はまぶしすぎる光や、大きな音や声、いつでもたくさん集まっている者たちがこわかったんだ。
おっさんたちがこわいものって、いったいなんだい?」
「色々さ。たくさんあるんだ」
「色々」
確認するように「旅人」はオウム返しをしました。
「おっさんになると、昔よりもこわいものが増えてくるんだ」
「旅人」はびっくりしました。
生き物は長く生きていると成長していきます。
そして成長をした生き物は、こわいものが減るのが自然だからです。
知識と経験が未知と無知を克服してきたのが文明だからです。
「増えるのかい?」
「そうだよ。色々なことをやって、色々なものを背負わされていくんだ。
そうすると、今までこわくなかったものが急にこわくなってくるんだよ」
「その背負わされているものはどこにあるんだい?」
「旅人」はおっさんの周りをきょろきょろと見回します。
しかしこれといってわかるようなものが見つけられません。
「僕たち旅人には見えないのかな?」
「いいや、誰にも見えないんだ。それを作った人たちにだって見えやしない。
けれどみんなが背負わされて、つけられているものなんだ。
それはきっと、きみの星にもあったものだろうし、きみたち「旅人」がイヤになったものさ」
「そうなんだ」
そう言われて「旅人」は、わからないなりに納得しました。
イヤになったものをかたちにはめてしまうと、次はほかのものもイヤになってしまうからです。
生き物はふしぎです。




