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3.喜ばれないおっさん


 別の日に「旅人」は知ります。

 おっさんが言っていた競争というのは幾つもの基準(きじゅん)がありました。


 その一つは「出世(しゅっせ)」でした。


 「旅人」たちと違って、おっさんたちには格付(かくづ)けというものがありました。

 組織(そしき)の中や社会(しゃかい)の中で、ほかのおっさんよりも(えら)立場(たちば)にならないと、居場所(いばしょ)がなくなってしまうのです。

 居場所(いばしょ)を無くしたおっさんというのは、ほかのおっさんから軽んじられ、ぞんざいにあつかわれます。



 その一つは「お金」でした。


 「旅人」たちの星と違って、おっさんたちの星ではお金がとてもとても大事だったのです。

 この星ではたくさんのお金がもっていないものは、ひどくぞんざいにあつかわれてしまいます。

 みんなお金があればなんでもできるという言葉を信じて、お金のためにほかのおっさんをだましたり、足をひっぱったり、追い越されないように叩いたりするのです。

 出世をするとたくさんお金が手に入るので、おっさんたちの競争は苛烈(かれつ)になります。



 その一つは「モテる」ことでした。


 「旅人」たちと違って、おっさんたちの(しゅ)は「雌雄(しゆう)」というものがありました。

 「旅人」も星の者も、どちらでもあり、どちらでもないのでよくわかりません。


 おっさんは「(おす)」です。

 この種族(しゅぞく)たちの「(おす)」は「(めす)」からの人気、支持(しじ)好意(こうい)などをもらえないと、他の「(おす)」から軽んじられたり馬鹿(ばか)にされたり、言葉を信じてもらえなかったりします。


 「旅人」が驚いたのは、「モテる」ことがない「(おす)」はほんらい誰でも持てるはずの自分を大事だと思える気持ちや、自分でもがんばれると思える気持ちを持てなかったり、持ちにくくなってしまうのです。


 そうした気持ちを持っていないと毎日が(くも)った天気のような気持ちになってうつうつとしてしまい、面白いことや楽しいことを考えられなくなってしまうことを「旅人」は知っていました。

 そうなったものは遅かれ早かれ死ぬことへの(あこが)れが強くなって死んでしまいます。

 「旅人」の星にはたくさんそうなったものがいましたから。


 出世(しゅっせ)ができなかった。

 お金がなかった

 モテなかった。


 この星では競争に勝てなかったおっさんのことを「キもくてお金のないおっさん」ともいうようです。

 この星の社会(しゃかい)では自分の責任なので「キモくてお金のないおっさん」が救われることも赦されることもないと聞いて、「旅人」はちょっと悲しくなりました。


 競争に勝てなかったおっさんは、誰にも買われず、どこからも相手にされなくなって、社会のお荷物(にもつ)にされたり、道具に仕立(した)てられて一生を()えていきます。


 公園で会ったおっさんに「そんなのおかしいよ」と言いましたが笑うだけです。

 「旅人」はその姿(すがた)を見ると、(くや)しいやら(なさ)けないやらで、もっと悲しくなって(なみだ)を流しました。



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