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はじまりの岸  作者: インフィ
サバイバル編

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第8話 探索



直人は砂浜へ下りると、波打ち際から少し離れた場所を歩き始めた。

足元には大小さまざまな流木や海藻、砕けた貝殻が散らばっている。


その中には、どこから流れ着いたのか分からない人工物も混じっていた。


・潰れたペットボトル

・切れかけたロープ

・変形した金属片

・片方だけの靴


直人は足元に落ちていた空のペットボトルを拾い、中をのぞき込んだ。

砂や汚れが入り込んではいるものの、大きく割れてはいない。



「洗えば、何かには使えそうだな」



直人はペットボトルを手に持ったまま、さらに砂浜を進んだ。

少し先で、別のペットボトルと短いロープを見つける。

その横には、片側が割れたプラスチック製の容器も落ちていた。


使えるかどうかは分からない。

それでも、今の段階で捨てる必要はなかった。


直人は拾った物を両腕に抱え、周囲を見回した。


砂浜から少し離れた場所に、大きな流木が横たわっている。

拠点からも見える位置だった。


直人は流木の脇まで歩き、抱えていた物をまとめて地面へ置いた。



「とりあえず、ここに集めるか」



そこを仮の置き場に決めると、直人は再び周辺を探し始めた。


何かを見つけるたびに拾い上げ、両手で持てなくなると流木のそばへ戻る。

ペットボトルや容器だけでなく、長さの違うロープや板切れ、金属製の部品も一か所へ積み上げていった。


それとは別に、乾いていて燃えそうな流木や細い枝も集めていく。

濡れている物は日当たりのいい場所へ広げ、乾いている物は流木の脇へ重ねた。


ペットボトルは、水を入れる容器に使える。

ロープは、物をまとめたり、運んだりする時に役立つ。

板切れや金属製の部品も、何かを作る時の材料になるかもしれない。


直人は一つ一つの使い道を大まかに考えながら、使えそうな物を拾っていった。

細かい使い方や組み合わせは、相希と相談すればいい。


今は、後から必要になりそうな物を見落とさずに集めることを優先した。


何度か往復するうちに、流木の脇には二つの山ができ始めた。

一つは、ペットボトルやロープ、容器、金属片などの漂着物。

もう一つは、焚き火に使えそうな流木や枝だった。



「火も必要になるだろうしな」



直人は乾いた枝を一本拾い、燃えそうな山へ放り込んだ。


役に立つ物がどれだけ含まれているかは分からない。

それでも、何も持たずに砂浜を歩き始めた時よりは、少しだけ状況が良くなったように感じられた。


直人は腰へ手を当て、集めた物を眺めた。



「思ったより、いろいろあるな」



直人は仮置き場を離れ、さらに先へ進んだ。


拠点の岩場は、振り返ればまだ確認できる。

相希から遠くへ行くなと言われたことを思い出し、一度足を止めた。


だが、まだ呼び声が届かなくなるほどではない。



「この辺までなら、大丈夫だろ」



誰に言うでもなく呟き、直人は再び歩き始めた。


砂浜の先には、大きな流木がいくつも折り重なるように積み上がっていた。

直人はその隙間をのぞき込み、使えそうな物がないか探した。

木材の下から、青く塗られた金属がわずかに見えている。


直人は近くの流木へ手を掛けた。


完全に持ち上げることはできない。

それでも、端を押し上げ、転がすように少しずつ動かしていく。

一本目をどかし、さらにその下の細い木を引き抜く。


やがて、流木の下に埋もれていた大きな金属製の容器が姿を現した。



「これ、ドラム缶か?」



表面はところどころ錆びていたが、大きく潰れてはいない。

上部の蓋は外れ、中には砂や細かなゴミが入り込んでいた。


直人は側面を軽く叩いた。

鈍い音が、空の内部へ響く。



「でかいな……」



両手で持ち上げようとしたが、砂に埋まったまま、わずかに傾いただけだった。

直人は一度手を離し、ドラム缶の周囲を見回した。


一人で拠点まで運ぶのは難しい。

だが、相希と二人なら転がして運べるかもしれない。


直人は周囲の流木をさらにどかし、ドラム缶を動かせる状態にした。

その後も近くを探し、少し曲がった金属製の筒と、比較的長く残っているロープを見つける。

拾った物は、ドラム缶の脇へまとめて置いた。


砂浜には、最初に作った仮置き場と、ドラム缶のそばの二か所に、集めた漂着物が残されている。


直人は二つの場所と拠点の位置を順番に確認した。


最後に相希と合流したら、ロープで拾った物をまとめる。

持てない物は、砂浜の上を引きずって運べばいい。



「これなら、一回で戻れそうだな」



直人は満足そうにうなずくと、ドラム缶のそばへ腰を下ろした。


ここからなら、拠点へ戻った相希の姿も見える。


直人は集めた漂着物を眺めながら、相希が戻ってくるのを待つことにした。





相希は岩場の背後に広がる木々の手前を歩いていた。

いきなり奥深くへ入ることはせず、拠点から見える範囲を保ちながら、地面や植物の様子を確認していく。


木々の間には、足元を覆うほどの下草が生えていた。

場所によっては地面が柔らかく、わずかに湿り気もある。


相希はしゃがみ込み、土へ指を当てた。

表面は乾いていたが、少し掘ると内側には水分が残っている。



「近くに水がある可能性はあるな」



相希は立ち上がり、周囲の木々へ目を向けた。


・葉の色

・地面の傾斜

・虫の飛ぶ方向

・鳥の鳴き声


水場へつながる手掛かりがないか、一つずつ確認していく。

ただ、知識として知っていることと、実際にその場で見分けることは同じではなかった。

植物の種類も、土の状態も、相希がこれまで画面や本で見てきたものと完全に一致するわけではない。


少し先には、地面が低く窪んでいる場所があった。

相希は足元を確かめながら近づき、底をのぞき込む。

泥は残っていたが、水は溜まっていない。

雨が降った時だけ、水が集まる場所なのかもしれなかった。



「すぐに見つかるほど、甘くはないか」



相希は小さく息を吐いた。


さらに奥へ進めば、何か見つかる可能性はある。

だが、直人と決めた範囲を越えることになる。


現在地も分からず、通信手段もない。

最初から行動範囲を広げすぎるのは危険だった。


相希は一度立ち止まり、方位磁針を確認した。


来た方向と、岩場の位置を頭の中で整理する。


木々の中は、ほんの少し進んだだけでも景色が似て見えた。

足元の草や木の幹だけを頼りにすれば、簡単に方向を見失う可能性がある。


相希は近くに落ちていた枝を拾い、通った場所の地面へ目印をつけた。

木の根元には、小さな石を二つ並べる。


それを何度か繰り返しながら、斜面に沿って慎重に進んでいった。


やがて、先ほどよりも湿った土を見つけた。

相希は再びしゃがみ込み、手袋を着けてから土を少し掘る。


数センチ下には、冷たく湿った層があった。

しかし、水が染み出してくる様子はない。



「水分はある。でも、これじゃ飲めないな」



相希は指についた土を払い、周囲を見回した。


近くには濃い緑色の植物が集まっている。

地面も緩やかに低くなっていた。


水源があるとすれば、この先かもしれない。


相希は数歩だけ進み、さらに奥をのぞいた。

木々が重なり、拠点の岩場は完全に見えなくなっている。



「ここまでだな」



独り言のように呟き、足を止めた。


水を見つけたい気持ちはある。

だが、ここで無理をするべきではなかった。

知識があっても、実際にこの場所を歩くのは初めてだ。

一度の判断ミスで、直人のところへ戻れなくなる可能性もある。


相希は周囲の特徴を覚え、目印を確認しながら来た道を引き返した。


途中、木の葉に残っていたわずかな水滴へ目を向ける。


量は少なく、飲み水として集められるほどではない。

それでも、朝露や雨水を受けられれば、水を確保する手段になるかもしれなかった。


相希は頭の中で、使えそうな方法をいくつか整理する。


雨水を集める。

植物についた水分を集める。

湿った土を掘る。

海水を蒸留する。


どれも、道具と時間が必要だった。

確実な水源を見つけられなかった以上、今ある物を使って別の方法を試すしかない。


相希が岩場へ戻ると、直人の姿はなかった。


濡れた衣類は、日の光を受けながら同じ場所に広げられている。

置いていった救急バッグにも異常はない。


相希は砂浜へ出て、直人が向かった方向へ目を凝らした。

遠くに、小さく動く人影が見えた。



「直人ー!」



相希が声を張り上げる。

少し間を置いて、砂浜の先から直人の声が返ってきた。



「おーい! こっち来てくれー!」



相希は声の方向へ歩き始めた。



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