第八話 ちょっと待った!
うーん。目の前に運ばれてきた料理は確かに美味しそうだけど、今はちょっと食欲が無いなあ。私も一応カイト様と一緒に、この大広間で行われている婚約披露パーティーの主役だからだ。うう。こんなに大きなパーティーの主役になって、なったことないよ。ああ、緊張するなあ……。
でも目の前の料理は、確かに気になる。うん? これはステーキ? うーん、やっぱり美味しそうだなあ。よし、ちょっとだけ食べてみようかな。と私はフォークとナイフを使ってステーキを一切れ切って、食べてみた。うま! 何これ、うま! 噛むと肉汁が口の中に広がってうま! 結局私は、ステーキを平らげた。
そして、スープも一口飲んでみた。なにこれ、うま! 私の屋敷のスープよりも、トウモロコシの風味も強くてコクがあってうま! とスープも全て飲み干すと、次はパンを食べてみた。それは二枚の食パンだったが、バターが塗られてこんがりと焼かれていた。うう。このきつね色の焼き目が、食欲をそそる……。食べてみるとやはり、パンがこんがりと焼かれていて食感が良くバターの塩味が効いていた。うん、これもうま!
そして目の前には、グラスに入れられたワインがあった。うーん、ワインか。私はアルコールと言うと、ビールはよく飲むがワインなどはあまり飲まない。でもこの場に用意されたワインなら、きっと美味しいんじゃないだろうか? そう思って、一口だけワインを飲んでみた。何これ、うま! 渋みが深くて、いかにも高級そうなワインだ。うーん。これからはワインも飲んでみようかなと思わせるほど、美味しいワインだった。
と私が全ての料理に満足していると、カイト様が聞いてきた。
「料理には満足していただけましたか、エマさん?」
「はい! どのお料理も、素晴らしく美味しかったです!」
するとカイト様は、ニッコリと微笑んだ。
「そうですか、それは良かったです」
そして私がふとお客さんたちを見てみると、お客さんたちも食事が終わったようだ。そして皆、満足そうな表情をしていた。なので私は、ホッとした。うん、どうやらこのパーティーは大成功のようだ。すると私の後ろで、国王が立ち上がる気配がした。そして国王が、話し出した。
「うむ。皆も料理に、満足してもらったようだ。だから食事の時間は、終わりとする。これから二人に儀式をしてもらい、この婚約披露パーティーも終わりとしたい。さあカイトよ、後は任せた」
するとカイト様は、「はい」と答えて立ち上がった。そして私にも立ち上がるように、目で合図をした。そこで私は、思い出した。そうだ、婚約披露パーティーはまだ終わってなかった! まだ私がカイト様から指輪をいただくこととキスが残ってた! なので私も立ち上がり、カイト様と向かい合った。
するとカイト様は早速、私の左手の薬指にダイヤモンドの指輪を嵌めた。そして私を、抱き寄せた。え、これキスだよね! これからキスするんだよね! この皆が見てる中で、キスするんだよね! と私は一瞬、パニックになった。どうするんだっけ、キスってどうするんだっけ?! するとカイト様は、私に顔を近づけてきた。うん、ここは任せよう。カイト様に、任せることにしよう。そう覚悟を決めると、「ちょっと待った!」という声が響いた。
え? 誰? 何ごと?! と声がした方を見てみると、貴族令嬢のシズが右手を高々と上げていた。そして、言い放った。
「私はこの二人の婚約に反対です!」
するとこのパーティー会場が、ザワザワし出した。当然だろう。さっきまで皆が、私たちの婚約を祝っていたのだから。もちろん誰も、反対なんかしていなかったのに……。すると後ろから、国王の威厳がある声が響いた。
「静まってくれ、皆の者。まさか二人の婚約に、反対する者がいるとは思わなかった。だが私は国王として、それを無視することはできない。なのでまずはシズの話を聞いてみたいと思うのだが、どうだろう?」
すると皆は国王の言葉に賛成したのか、ザワザワが収まった。皆、シズの話を聞く気になったようだ。それを確認した国王は、シズに話しかけた。
「それではシズよ、話してくれ。なぜお主は、この二人の婚約に反対なのだ?」
そう言われたシズは国王に向かって一礼すると、話し出した。
「私に話をすることをお許しいただき、ありがとうございます国王陛下。私が二人の婚約に反対する理由は、エマさんの金銭感覚です。今、エマさんがカイト様からダイヤモンドの指輪をもらったのは、ここにいる全員が見たと思います。でも私は、疑問に思いました。果たしてそれで、良いのだろうかと。皆さんもご存じの通り、今この国の財政状況は苦しいです。なのに私がカイト様に話を聞いたところ、何とエマさんはカイト様にダイヤモンドの指輪を要求したそうです。なので私は、心配しています。もしこのままエマさんがカイト様の妃になったら、贅沢をしてさらにこの国の財政が苦しくなるのではないかと」
するとこの会場にいた皆が、ザワザワし出した。
「うーむ、なるほど……」
「確かにシズさんが言うことにも、一理あるわねえ……」
「うーむ、確かに……」




