第十八話 決心
それでも私はベットの中で、悩んでいた。今日の婚約披露パーティーで、カイト様とエカデのどちらを選ぶべきか。するとドアをノックする音が聞こえて、メイドの声がした。
「おはようございます、エマ様。朝食のお時間です」
でも私は、ベットから出なかった。悩みすぎて、食欲が無かったからだ。だが私は、大事なことを思い出した。私が今日の婚約披露パーティーで、やらなければならないことを。もちろんカイト様とエカデのどちらを選ぶかも大事だが、もう一つあった。それはこのカヒリ国と友好関係にあるイカナ国の王女、ナコとの対決だ! そうだ、こうしてはいられない。もし私がカイト様を選ぶことになったら、私からカイト様を奪おうとしているナコ王女の存在は邪魔だ。なんとしてでも対決して勝たなければ!
そう考えた私はシルクの寝間着から黄色のドレスに着替えて、急いで食堂に行き朝食を食べた。あまり食欲は無かったが、それでも何とか朝食を食べた。腹が減っては戦はできないと、言うからだ。
それから自分の部屋に戻った私は、再び悩むことになった。昨日エカデに買ってもらった、白い星の飾りがついているペンダントをして婚約披露パーティーに行くかどうかだ。そして散々悩んだ結果、私はペンダントをして行くことにした。もし私がエカデを選ぶ場合、これは強力な武器になるからだ。私はあなたから買ってもらったペンダントをして、この婚約披露パーティーに出席している。それはつまり私は、あなたを尊重していますよという、エカデに対するメッセージになると思ったからだ。
だが首にペンダントをかけた私は、自己嫌悪になった。私はなんて、優柔不断な女なの? 今になってもまだ、カイト様とエカデのどちらを選ぶかを決められないなんて。これって、カイト様とエカデの両方に対して不誠実じゃないの? これじゃあ私からカイト様を奪おうとしているナコ王女を、悪く言えないわね。
いや。こうなるとカイト様だけを奪おうとしているナコ王女は、私より誠実な気がする……。と私が自己嫌悪になっていると、ドアがノックされてメイドの声がした。
「エマ様。カイト様がお見えです」
はっ! カイト様がいらっしゃった! わ、私はどうしたら良いのかしら? 私はもう、逃げ出したかった。婚約披露パーティーに、行きたくなかった。ずっとこのままこの部屋に、閉じこもっていたかった。と私が部屋から出ないでいると、心配そうなカイト様の声が聞こえてきた。
「どうしました、エマさん? もしかして、また寝不足ですか? それなら今日の婚約披露パーティーを、延期にしてもいいんですが?」
え? ホントに? それじゃあ、そうしてもらおうかしら? と一瞬、私はそう考えてしまった。だが、止めた。それでは私が、カイト様が私を心配してくれる誠意に甘える卑怯者になるからだ。確かに私は、優柔不断だ。元の世界で私は、食べると幸せな気持ちになるチョコレートを作りたくて、お菓子の会社に入社した。でもそれができないので、チョコレートを作れる会社に転職しようと考えていたが、その決断ができずに転職はずるずると先延ばしになっていた。それは私が、優柔不断だからだ。
でも私は、卑怯者にはなりたくない。もしカイト様が私を心配してくれる優しさに甘えて婚約披露パーティーを延期したら、私はただの卑怯者になってしまう。それだけは、嫌だ。カイト様の優しさに、甘えたくはない。それに今日の婚約披露パーティーを延期しても、いづれはパーティーを開かなければならない。そしてそれまでに私が、カイト様とエカデのどちらを選ぶのか決められる保証はどこにもない。
だから、今日だ。今日、決めるんだ。今日、結論を出すんだ! そう私は決心して、この部屋のドアを開けた。するとそこにはやはり、メイドとカイト様がいた。カイト様は心配そうな表情で、聞いてきた。
「お体の調子は大丈夫ですか、エマさん?」
ホントは寝不足で大丈夫ではなかったが、私は答えた。
「ええ。大丈夫ですわ、カイト様。それでは婚約披露パーティーが行われる、お城に行きましょう」
「はい。エマさんが、そうおっしゃるのなら……。でも体の具合が悪くなったら、すぐに私に伝えてください。すぐにパーティーを、延期するので」
「はい。ありがとうございます、カイト様」
そして私はカイト様と一緒に城に行くために、この屋敷を出ようとした。するとカイト様が、疑問の表情で聞いてきた。
「おや? そのペンダントは、初めて見ますね。どうしたんですか?」
う、マズイ。ペンダントのことが、バレてしまったか。それにしてもカイト様は、私のことをよく見てるなあ……。だが私はそんなカイト様に、ウソをついた。
「これは昨日、今日のパーティーのために自分で買いました。どうですか、似合ってますか?」
するとカイト様は、ニッコリと微笑んだ。
「はい。良く似合ってますよ、とても」
「そうですか。ありがとうございます」
そう答えて私は、心の中でカイト様に謝った。申し訳ありません、カイト様。私はあなたに、ウソをつきました。でも今日の婚約披露パーティーで全ての決着をつけるので、どうかお許しください。そして私とカイト様は婚約披露パーティーが行われる城に行くために、この屋敷の前に停めてある馬車に乗った。




