第十六話 星のペンダント
そして五分ほどすると、馬車は止まった。私はまた、エカデに手を取ってもらって馬車を降りた。するとそこにはこじんまりとした、宝石店があった。私はエカデにエスコートされて、店に入った。そして私は、驚いた。こじんまりとした外見からは想像できないほど、店内に多くの商品が並べられていたからだ。ガラスケースには指輪、ペンダント、イヤリングなどが並んでいた。
でも私は、余裕だった。ふ、ふん。こんなモノで、私の心は動かないわよ! 何て言ったって明日の婚約披露パーティーで、私はカイト様からダイヤモンドの指輪をもらうんだから。それはもう、知ってるんだから! でも私は、ガラスケースに吸い寄せられた。でもまあ、ちょっと見るだけなら良いわよね……。
私はまず、指輪を見てみた。そこにはシルバーリング、金の指輪、ダイヤモンドの指輪などが並んでいた。うわー、どの指輪も可愛い! シルバーリングは落ち着きがあって、金の指輪は華やかさがあって、ダイヤモンドの指輪は豪華さを感じる。それらを見ていたら、私は一つ欲しくなった。
だが私は、首を左右に振って我慢した。いかん、いかん。明日、カイト様からダイヤモンドの指輪をもらうんだから、ここは我慢しないと。それにエカデに買ってもらうのは、やはり嫌だ。こいつに借りを作ったら、何をされるか分からないからだ。
このまま指輪を見ていたらどうしても欲しくなってしまうかも知れないので、私はイヤリングを眺め始めた。でも私はピアスよりもイヤリング派なので、つい見入ってしまった。うわー、どれも可愛い形をしてるなー。お。これなんかピンクの宝石が付いている。可愛いー。
でもそこで私は、気付いた。いやいや、いかんいかん。ここでエカデにイヤリングを買ってもらったら、その引き換えに何をされるか分からないということを。なので何か欲しくなる前に、この店を出た方が良いなと考えた。そうして店の出口に向かおうとすると、今度はペンダントが目に入った。
う。ペンダントか。私は、ペンダントも好きなんだよなー。だから、ちょっとだけちょっただけとペンダントを眺め始めた。すると一つのペンダントが、目に留まった。チェーンの部分は金で、下には白く輝く星形の飾りがついていた。
うわー、この星の飾り可愛いなー。それにしてもこの星の飾りは、何でできているんだろう? 白い宝石? うーん。私は今まで、そんなの見たことないなー。ひょっとして、このゲームの中にしかない宝石なのかなー? と私はそのペンダントを、眺め続けた。すると、エカデの声がした。
「すみません、そのペンダントをいただけますか」
え? 何? と見てみるとエカデはお金を払い、男性店員はガラスケースから私が眺めていたペンダントを取り出してエカデに渡していた。私が呆然とそれを眺めていると、エカデはそのペンダントを私の首にかけようとした。私は思わず、大きな声を出した。
「え、ちょ、ちょっと何するの?!」
するとエカデは、爽やかに微笑んだ。
「何って、プレゼントですよ。エマ様が、欲しそうだったので」
う。それは確かにそうだが……。だが私は、断った。やはりエカデはにプレゼントなんかもらったら、後で何をされるか分からないからだ。
「い、いや。いらないわよ! 早く店員さんに戻してよ!」
だがエカデは、やはり爽やかに微笑んだ。
「どうしてですか? これはあなたとカイト王子の婚約を祝う、プレゼントですよ? それを、いらないとおっしゃるんですか?」
くっ、そうくるか。そんなことを言われたら断れないじゃないかー! この策士めー! なので私は、観念した。
「分かりました。そのプレゼントは、ありがたく頂戴いたします……」
するとエカデは丁寧に、私の首にペンダントをかけてくれた。この様子を見た男性店員は、すかさず私に鏡を向けた。
「よくお似合いですよ、お客様」
私が鏡を覗き込んでみると、確かにこのペンダントは私に似合っていた。それに謎の白い星形の宝石も手に入れたことになるので、私は思わず上機嫌になった。するとエカデは、してやったりという表情をしていた。くっ。私としたことが、まんまとエカデの作戦に引っかかってしまった……。だが私はその悔しさをできるだけ顔には出さないようにして、威厳を保つことにした。
「こ、このペンダントはありがたく頂戴しますわ、エカデ様」
するとエカデは、ニッコリと微笑んだ。
「そうですか。エマ様に喜んでいただき、私も嬉しいです」
くっ。何よその笑顔は?! あんたは、そんなキャラじゃないでしょ?! あんたは、俺様系のキャラでしょ?! さあ、私に壁ドンしていきなりキスしなさいよ! と考えたが、私は首を左右に振った。い、いや。ダメだ。それはダメだ。もー、なんでこうなるのよー! と私は、混乱した。なのにふと見るとエカデは、そんな私を見て微笑んでいた。
こうして宝石店での買い物が終わったので、私とエカデは馬車に戻った。するとエカデは、御者に告げた。
「次は、いつものレストランに向かってくれ」




