第十五話 エカデのお祝い
私はもちろん、エカデを警戒した。この男は俺様系で、何をするか分からないからだ。
「な、何よあんた?! 一体、何しにきたの?!」
すると何とエカデは、私に向かって頭を下げた! な、何?! 一体、どういうつもり?! するとエカデは、丁寧な口調で話し始めた。
「カイト第一王子とのご婚約、おめでとうございますエマ様。なのでささやかながら私に、そのお祝いをさせてください」
お、お祝い?! 何それ、どういうこと?! こいつはカイト様から私を、奪いたいんじゃないの?! と私が警戒していると、エカデは挑発してきた。
「ほう。私からのお祝いを、お受けにならないのですか? それはつまり、自信が無いのですか? つまり私からのお祝いを受けてしまうと、カイト様よりも私の方に惚れてしまうとお考えですか?」
カッチーン。そうか、そうくるか。今回は、そうくるか。いいでしょう、そこまで言うのならお祝いを受けましょう! でも私はもう、明日の婚約披露パーティーで素敵なカイト様と正式に婚約しようと決めている! この私の決心を、変えられるものなら変えてみなさい! なので私は、冷静に答えた。
「いいでしょう、エカデ様。私は謹んであなたからのお祝いを、お受けしますわ」
するとエカデは、爽やかに微笑んだ。
「ありがとうございます、エマ様。それでは、どうぞこちらへ」
とエカデは、右手を私に差し出した。私がその右手に左手を差し出すと、エカデは私の左手を取りこの屋敷の出口に向かった。だがその途中、早くも私の心は揺れ動いた。な、何なのさっきの爽やかな笑顔は?! こいつ、あんな爽やかな笑顔もできるの?! と。 そしてエカデはこの屋敷の前に止めてある馬車に、私をエスコートした。それは二頭の黒い馬が引く、立派な馬車だった。
そしてエカデは、私に告げた。
「さあ。それでは先に馬車にお乗りください、エマ様。レディファーストなので」
「え、ええ……」
と私が馬車に乗り込むと、その次にエカデが乗り込んだ。するとやはり私の心は、揺れ動いた。レ、レディファースト?! こいつ、こんなこともできるの?! こいつはただの、俺様系じゃないの?! 私は揺れ動いた心を隠すために、エカデに聞いた。
「それで、どんなお祝いをしてくださるのですか?」
「はい。まずは、演劇をご覧いただきたいと思います」
「え、演劇?!」
「そうです」
そしてエカデは、この馬車の御者に告げた。
「演劇場まで頼む」
すると御者の「はい」という返事が聞こえて、馬車は走り出した。そしてレンガ造りの建物の間にある石畳をガタゴトと十分ほど進むと、馬車は止まった。私はエカデに左手を取られ、馬車を降りた。すると目の前には、赤いレンガ造りの半円形の大きな建物があった。その大きさに私は思わず引いた。何これ、でっか?! ここ、ゲームの中だよね?! ゲームの中に、こんな大きな建物があるの?!
するとやはりエカデは私の左手を取り、エスコートしてくれた。
「さあ、ここが演劇場ですエマ様。早速、入りましょう」
「え、ええ……」
と演劇場に入った私は、再び引いた。奥にステージがあり手前に観客席があるのだが、そこが大勢の人で埋め尽くされていたからだ。な、人が多い! これ全部、ゲームの中のキャラなの?! ああ、あれか。いわゆる、その他大勢ってやつ? でも、こんなに多くのキャラがいるなんて。それに私がゲームをプレイした時には、演劇場なんて無かった。うーん、不思議だ……。
と私が考え込んでいると、エカデに声をかけられた。
「さあ、エマ様。もうすぐ演劇が始まります。一緒に、楽しみましょう」
「え、ええ……」
そして、演劇が始まった。まずは、二人の男女が出てきた。男性はイケメンで、女性は美人だった。二人の会話から判断すると、二人は平民で幼馴染だ。そして二人は小さな頃から結婚の約束をしていて、大人になった二人はいよいよ結婚すると言う。
だがそこに、その国の王子が現れた。王子は女性の美しさに一目ぼれをして、その女性と結婚したいと言い出した。二人の家はただの農家で、貧しかった。だからその女性は王子と結婚すれば裕福な生活ができると考えて、王子と結婚した。
だが王子との結婚生活は、苦しいモノだった。実は王子には愛人が何人もいて、しかもその女性はお城のメイドに平民の出身だと毎日嫌がらせをされた。そしてその女性はそんな生活に耐えきれずに、とうとうお城を飛び出して自分の家に戻った。
するとそんな女性を、幼馴染の男性は受け入れた。自分を裏切って、王子と結婚した幼馴染の女性を。そうして二人は結婚して、今度こそ幸せに暮らしたというストーリーだった。そんな演劇を見せられた私は、考えた。こ、これは……。
すると私の隣に座っていたエカデは、呟いた。
「やっぱり王子と結婚しても、幸せになれるとは限らないんですねえ……」
やっぱりかーい! これは私にカイト様と結婚しても、幸せになれないのでは? と惑わせる作戦かー! この、策士めー! だが演劇が終わったので、私とエカデは再び馬車に戻った。するとエカデは、御者に告げた。
「次は、宝石店に行ってくれ」




