第十四話 イカナ国の王女ナコ
と私がイカナ国の王女であるナコを警戒していると、何とナコは私に丁寧に頭を下げた!
「この度はカイト第一王子とのご婚約、おめでとうございます、エマさん。もちろん明日の婚約披露パーティーにも出席して、改めてお祝いをさせていただきます。でもその前にエマさんがどういう方なのか知りたくて、カイト様に無理を言ってここに連れてきていただきました」
お。丁寧な挨拶。さすがは一国の王女だ。なので私も、頭を下げた。
「丁寧なご挨拶、ありがとうございます、ナコ王女。私はただの、貴族令嬢です。でもカイト様と縁があって、婚約することになりました。このカヒリ国とイカナ国は、友好関係にあります。なので明日の婚約披露パーティーでは、この両国の関係が更によくなるように精一杯おもてなしをさせていただきます」
するとナコは、微笑んだ。
「そうですね、ありがとうございます。それでは明日の婚約披露パーティーを、楽しみにしています」
それを聞いて、私は安心した。何だ。ナコは良い娘じゃないか。少なくても今の段階では、私からカイト様を奪う気は無さそうだ。あれ? でもこのパターンって……。と私は、嫌な予感がした。それはカイト様の発言が、きっかけとなった。カイト様は笑顔で、ナコに告げた。
「それではエマさんとの挨拶が終わったようなので、今度は城にいきましょう。先ほどは城に中を案内させていただきましたが、今度は明日の段取りを説明させていただくので」
そしてカイト様は、この場からこの屋敷の出口に向かった。おそらくナコも、ついてくると思っているようだ。でもナコは、この場から離れなかった。そして、悪い顔になった。や、やはりこのパターンは……。と私がナコを警戒していると、ナコは悪い表情のまま話し始めた。
「エマさんでしたっけ? 私は思うんですが、やはりあなたはカイト様の婚約者にはふさわしくありませんわ……」
そう言われてもちろん私は、カチンときた。だが冷静を装って、聞いてみた。
「あら。それは、どういう理由からですか?」
するとナコは、自信満々な表情で話し始めた。
「だって、考えてもごらんなさい。一国の第一王子の婚約者が貴族令嬢とは言え、民間人と釣り合うと思いますか? いえいえ、釣り合いません。やはり一国の王女である私でなければ、釣り合いませんわ」
くっ、なるほど。そう言う理由か……。と私が少しだけ精神的なダメージを受けていると、ナコは言い放った。
「そして先ほどカイト様に城の中を案内していただきましたが、やはりカイト様は紳士でお優しい方でした。そして、イケメンでした! なのでエマさん、私は今ここであなたに宣言します! カイト様は、この私があなたからいただくと!」
それを聞いて、私はずっこけた。な、結局はそれかーい! 私からカイト様を奪いたい理由は、カイト様がイケメンだからかーい! だが私は、思い出した。この乙女ゲーム『誰でもプリンセス』で、ナコは強敵だと。やはりナコはこのカヒリ国と友好関係にあるイカナ国の王女なので、悪役令嬢の私よりも有利だからだ。
私の記憶では貴族令嬢のシズと同じくらいの、強敵だ。くっ。明日の婚約披露パーティーで、この強敵のナコと対決して勝てるのか? カイト様を奪われずに、すむのか?……。と私は、ピンチの表情になっていたのだろう。私の顔を見つめながら、ナコは再び言い放った。
「それでは今日が、あなたがカイト様の婚約者である最後の日よ! 明日の婚約披露パーティーで私があなたからカイト様を奪って、私がカイト様の婚約者になるので! オーホッホッホッホッ!」
そしてナコはこの場から、この屋敷の出口に向かった。その後ろ姿を見て、私は思わずため息をついた。はあ。何だかこのゲームのキャラって、ロクなのがいないような気がするんだけど。前回対決した貴族令嬢のシズは、カイト様と結婚してカイト様の妃になることだけが目的だったようだ。そして今回のナコがカイト様を奪おうとしている理由は、カイト様がイケメンだからのようだ……。
二人とも本当に、ロクな理由じゃないな! その点、私がカイト様と結婚したい理由は違う。紳士的でまた男らしさもあり、優しいカイト様の妃になってカイト様を支えたいからだ! うん。我ながら純粋で、素晴らしい理由だ。
おい! 見てるか自称クソ守護女神! 私の方がナコよりも、カイト様の婚約者にふさわしいのは明らかだろう! 私を元の世界に戻さないと言うのなら、せめて明日は私の味方をしろ! と言ってもあの自称クソ守護女神のことだから、あてにはできない。それならば、考えるしかない。どうやって民間人の私と、一国の王女であるナコの差を縮めるか。うーん……。
と私は屋敷の廊下で、考え込んだ。でも、良いアイディアは出なかった。マズイ、これはマズい! 婚約披露パーティーは明日だから、今日中に何とか良いアイディアを出さないと! でも焦れば焦るほど、良いアイディアは出てこない。マズイ。本当に、どうしたら良いの?! と私が大ピンチになっていると、さらにピンチがやってきた。何と私に向かって、廊下を歩いて貴族令息のエカデがやってきた!




