第十三話 お姫様抱っこ
でも私は、カイト様が待つ客室に行くことにした。やはりカイト様を待たせることはできないし、それに私は自分の気持ちを確かめたかった。私はカイト様とエカデの、どちらを選ぶのか。私が客室の入ると、すでにカイト様がいた。私とカイト様は白いテーブルを挟んで、座った。そして、挨拶を交わしあった。
「おはようございます、エマさん。今日は明日の、婚約披露パーティーのことを話し合いたいと思ってきました」
「はい、そうですね。そうしましょう」
そうして私たちはメイドが用意してくれた紅茶を飲みながら、明日の婚約披露パーティーについて話し合った。パーティーにきてくれたお客さんには、どういう料理を出すのか。私は、どんなドレスを着るのかなど。でも私は、うわの空だった。私はカイト様とエカデの、どちらを選ぶべきか考えていたからだ。するとカイト様は、聞いてきた。
「どうしました、エマさん? さっきから何か、ボーッとしているようですが?」
マ、マズイ。私はついカイト様とエカデのことを考えていて、ボーッとしていたようだ。だがまさかそのことをカイト様にいう訳にはいかないので、私はウソをついた。
「申し訳ありません、カイト様。実は私は、ちょっと寝不足なんです。やはり明日の婚約披露パーティーのことを考えていたら緊張してしまって、昨夜はあまり眠れなかったのです……」
するとそれを聞いたカイト様は、心配そうな表情になった。
「寝不足ですか、それはいけません。もう私が話したいことは話したので、エマさんは少し休んでください」
そしてカイト様は立ち上がり、私の隣に移動してきた。そして私に、告げた。
「エマさん。ちょっと立ってみてください」
え? カイト様は一体、何をする気なんだろうと疑問に思いながらも私は立ち上がった。するとカイト様は右腕を私の膝の裏に、そして左腕で私の背中を支えて私を抱き上げた。ま、まさかこれはお姫様抱っこ?! するとカイト様は、説明した。
「寝不足で疲れているエマさんを、一人で部屋に行かせる訳にはいかないので。なのでこのままエマさんの部屋まで連れて行きたいのですが、どうでしょうか?」
「は、はい……」
そうしてカイト様は私をお姫様抱っこしたままこの客室を出て、屋敷の廊下を歩き私の部屋に向かった。その途中、私は考えた。カイト様は私をお姫様抱っこするほど、腕力がある。つまりカイト様にも、男らしさがあると。そして私の部屋の前に着くと、カイト様は私を廊下に降ろした。
「まさか結婚前の女性の部屋に入る訳にはいかないので、これで。それではエマさん、ゆっくりとお休みください」
そう言い残してカイト様は、この屋敷の出口に向かった。私はその後ろ姿を見ながら、決心した。やはり私が選ぶべきは、カイト様しかいないと。カイト様は、誠実で優しい。それだけでも十分、男性として魅力がある。でも、男らしさに欠けると思っていた。エカデのような、強引な男らしさが。
でも強引なのは、男らしさだろうかと考えた。それは相手の気持ちを考えない、ただの自己満足ではないだろうか? その点、カイト様は違った。カイト様はちゃんと私に意見を聞いてから、私をここまで運んでくれた。カイト様のたくましい腕力で、私をお姫様抱っこしたまま。
この二人のどちらが男らしいかと言えば、それは明らかだ。明らかにカイト様の方が、男らしい。なので私は、決心した。やはり私はカイト様と、正式に婚約しようと。と私がそう決心していると、メイドが中年の女性の先生を連れてきた。
「エマ様。これから、勉強のお時間です。やはりカイト第一王子と結婚して妃になられるのなら、妃にふさわしい教養を身に着けていただく必要があるので」
そうして私は自分の部屋で、中年の女性の先生から教養を学んだ。それによると我がカヒリ国の農民は技術力が高いので、パンの材料になる小麦粉がたくさん採れるということだった。だが剣や鎧を作る、職人は少ないと言うことだった。そして昼食をはさんで、午後はこのカヒリ国の隣国であるイカナ国についての教養を学んだ。それによると我がカヒリ国とイカナ国は、昔から友好関係にあった。
そのため現在でも二つの国の国王同士の、交流がある。そしてイカナ国の職人は技術力が高く、品質が良い剣や鎧を作っている。ただ農民は少なく、パンの材料になる小麦はあまり採れないということだった。
そうして午後三時になると、やっと勉強が終わった。なので私が自分の部屋でくつろいでいると、ドアがノックされてメイドの声がした。
「エマ様。お客様がお見えになりました」
お客様? 一体、誰だろう? そう考えながら私はドアを開けて、廊下に出た。するとそこにはメイドとカイト様と、見知らぬ女がいた。その女は黒髪を肩まで伸ばして愛嬌がある可愛い顔立ちで、真っ赤なドレスを着ていた。誰? この女? と私が考えていると、カイト様がその女を紹介してくれた。
「エマさん。こちらの女性はイカナ国の王女、ナコ・イカナさんです。明日の私たちの婚約披露パーティーに出席して、お祝いしてくださるそうです」
それを聞いて、私は身構えた。出た! 友好国の王女! もちろん私からカイト様を奪おうとする女だ!




