第十話 ハッピーエンド?
私はカイト様に抱きしめられていたので、カイト様の顔は私の耳元にあった。なのでカイト様の表情は分からなかったが、カイト様の真剣な声が聞こえた。
「申し訳ありません、エマさん。私の心は一瞬ですが、シズさんに傾いてしまいました。でも今はもちろん、エマさんと婚約してエマさんが私の妃になって欲しいと思っています。なのでどうか、こんな私を許してほしいです。どうでしょうか?」
何だ、そんなことか。でもそれは、これがそういうゲームだから仕方がない。なので私は、答えた。
「もちろん許しますわ、カイト様。でもそれは、一度きりです。二度目はありませんよ?」
するとカイト様が私を抱きしめる力は、更に強くなった。でも、痛くは無かった。それが今のカイト様の、愛情表現だと思ったからだ。そしてカイト様は私と見つめ合うと、真剣な表情で話し出した。
「ああ、エマさん。これから私がエマさんにキスをすれば、私たちの婚約は正式なモノになります。でも婚約しただけで、あなたを今晩城に泊めるのは問題があるでしょう。でも私は、それでも構わない。私はどんなに批判されようと、今日はあなたを帰らせたくない。それでも、構いませんか?」
そう言われた私は、黙って頷いた。するとカイト様は、私にキスをした。それは、優しかった。すると会場が、盛り上がった。
「よし! これで正式な婚約だ!」
「ええ、ええ。お似合いの二人だわ」
「お二人とも、お幸せに!」
カイト様とのキスが終わりふと見てみると、国王も王妃も満足そうに、うんうんと頷いていた。やったわ。私はこのゲームに、勝ったのね。このゲームを、クリアしたのね。すると、ふと考えた。すると私は、これから元の世界に帰るのかしら? ああ。この世界でこれからカイト様と結婚して、暮らしていくのも悪くないと思うんだけど……。
すると私の全身は、眩しい光に包まれた。あ。これは私がこの世界にきた時と、一緒だわ。やっぱり私は、これから元の世界に帰るのね。でもこの世界は、楽しかったわ。ひょっとしたらカイト様に婚約破棄されるかも知れないと思って、ドキドキしたりして。でももう、私は元の世界に帰ります。ありがとうございました、カイト様。カイト様のおかげで、この世界で楽しい時間を過ごすことができました。さようなら。そしてまた、ゲームで会いましょう……。
そして次の瞬間、私はベットに仰向けになっていた。ああ。私は、元の世界に帰って……、って、あれ? ここは見慣れた、エマの部屋? あれ? 一体、どうなってるの?! するとこの部屋のドアがノックされて、メイドの声がした。
「おはようございます、エマ様。朝食のお時間です」
それを聞いた私は、ものすごく嫌な予感がした。ま、まさか……。私は嫌な予感を確かめるために、この部屋を飛び出した。そしてもうすでに慣れ親しんだ屋敷の中を走って、食堂のドアを開けた。するとそこにはやはり、エマの父親と母親がいた。私を見ると、二人は話しかけてきた。
「おはよう、エマ。さあ、ちゃんと朝食を食べなさい」
「そうよ、食事は大事よ。何と言っても明日は、あなたとカイト様の婚約披露パーティーなんだから」
それを聞いて私は、床に膝から崩れ落ちた。や、やっぱり元に戻ってる。ゲームの初めに、戻ってる!(白目)これはない。これはないわ、あの自称クソ守護女神! 私は、もちろん元の世界に帰りたい。でも最悪、この世界でカイト様と結婚して暮らすのもアリだと思った。でも、最初に戻るのはない! 私は念のため、この屋敷中をあの自称クソ守護女神を探し回った。でも、どこにもその姿は無かった。
するとなぜか、笑いが込み上げてきた。くくくく。そういうことか、あの自称クソ守護女神。私はまだ、元の世界に帰りたいと思っている。つまりはまだ、私はこの世界に完全に満足していないということだろう。くくくく。いいだろう、やってやるわ! こうなったら私が完全にこの世界に満足するまで、やってやるわ! さあ、次の相手は誰?! 友好国の王女? 敵対国の王女? それともお城のメイド? 誰でも良いわ。誰がきても、必ず対決して勝ってざまあしてカイト様に溺愛されてやるわ!




