~リィとレイルの食事~
1
「・・・ごめんレイル・・・。またやっちゃった・・・」
二人の目の前の皿には。
真っ黒な物体がのっていた。
もとはなんだったのか見当もつかない。
流星とよばれ、剣技と魔法に長けたリィは、料理が大の苦手だった。
2
明くる日の朝。レイルは食材と向き合っていた。
リィが出来ないならば、自分がやるしかない、と思った結果である。早朝、リィが寝ているうちに起き出したレイルは、顔を洗って眠気を払ってから、キッチンに立つ。鍋に水をはって、タマゴをそのまま入れ、火をつけた。次いで包丁を持ち、キュウリを刻みはじめる。剣を使うだけあって、刃物の扱いはなれたものだ。刻む間にゆで終わったタマゴの殻をむき、細かくしたものをボウルに入れて、マヨネーズであえる。一度包丁の刃を拭き、パンをスライスした。刻んだキュウリとタマゴをバターを塗ったパンで挟む。
サンドイッチができあがると同時にリィが部屋に入ってきた。ほとんど閉じていた目が見開かれる。
「レイル?」
「はい、朝ご飯」
かたまったリィは、何度か口を開いたり閉じたりした後───
「レイルって、料理できたの──────⁉」
3
「僕も、得意な訳じゃないよ。ただ、ひとりでいることが多かったから、自然と作れるようになったんだ」
「・・・私が・・・八十年近くかけても出来なかったのに・・・自然と・・・」
「?」
「なんでも・・・なんでもない・・・」
何故かリィはがっくりしていたが、それもサンドイッチを食べるまでのことだった。
「・・・!おいしい!」
「良かった」
リィは凄い勢いでサンドイッチを食べ終えると、言った。
「レイル」
「どうした?」
「私に・・・料理を教えて下さい!」
「───」
「お願い!」
レイルとリィの血のにじむような努力により、そのおよそ二か月後には芯まで焦げた料理は出なくなり、少々拙くはあるが食べられる食事が並ぶようになった。
───多くの人々は、リィの作るおいしい料理の裏にそんな苦労があったことを知らない。・・・たぶん。




