~君を助けた魔法~
レイルは初めての実戦───記憶をなくしてから───で、怖じることなく剣を振っていた。
「せいっ!」
相手の剣を破壊して、人々が下がったのを確認し、左右に目を向けた。
左のほうではロートとヴェールが戦っている。
リィの姿は───見えない。
胸騒ぎがして、レイルは探しに行こうと一歩足を踏み出しかけ、思いとどまる。
ここは戦場だ。自分がここを離れれば、隙間ができてしまう。
迷いに足を止めたレイルに、声がかかった。
「ここは俺達が守ります!」
みれば、衛兵達が広がって隙間を埋めている。
「───すぐに戻る!」
衛兵達に感謝し、先ほどまでリィがいた場所へ向かう。
そこでは、村人達が騎士側に立ち、同胞であるはずの人々に剣をむけていた。
「君、たちは・・・。何で、僕ら側につくんだ?」
思わず声をかけると、
「私達が、騎士様に救われたからです!リィさんに許可もいただきました!」
「・・・!なら、今リィがどこにいるか分かるか⁉」
村人達のさした方向にひたすら走る。
彼女の、金色の髪を探して───
リィが、地面に倒れ込んでいるのが見えた。
リィのわきには剣を頭上に向け、振り下ろそうとする男の姿が。
距離がありすぎて、どう頑張っても剣では届かない。
どうする。どうするどうする、どうする───
時が、止まったように感じた。
頭の奥底の、記憶が刺激される。
これと似たような光景を、どこかで。
あれは。
魔獣の爪を避け損なった金色の髪の少女を見て。
守らなければ、助けなければと、思って。
ほとんど無意識で、体に渦巻く力を、緑色に光る刃に変えて───
甲高い音を立てて、今まさにリィを貫こうとしていた剣が弾かれた。時間の流れが元に戻り、レイルは距離を詰める。男のこめかみを柄頭で強打する。気を失って吹き飛んでいく男を一瞥し、レイルはリィを抱えて後方へ下がった。
リィは焦点の合わない瞳でレイルを見て、
「レイル・・・?来て、くれたの・・・?」
「ああ、僕だ、リィ」
リィの傷を確認する。全身傷だらけだが、一番ひどいのは脇腹の傷だ。治療が必要と判断して、レイルはシュヴァリエへ向かう。
「さっきの、魔法・・・」
「───初めて会ったときに、リィを助けた魔法だよ」
どこかぼんやりした表情が、驚愕に彩られる。
「記憶・・・もどった、の?」
「全部。まあ、事故にあった時の記憶は曖昧だけど」
「よかった・・・本当に、よかった・・・」
気が抜けたのか、リィは目を閉じるとそのまま意識を失った。
シュヴァリエに入り、サクリの姿を探す。
「サクリ!」
「!お姉ちゃん⁉」
敷物の上にリィを寝かせ、
「一番深いのは脇腹の傷。あと魔力切れになりかけてるから、少し魔力を分けてくれると助かる」
サクリは頷くと、柔らかな光を手に纏って治療を始めた。
数分後、跡は残ったものの傷はふさがり、リィはうっすらと目を開けた。
「ありがと、サクリ」
リィはゆっくり起き上がり、
「戻らないと」
普段のレイルとサクリなら、リィを止めただろう。だが、状況が状況だ。止めることはせず、
「そのかわり」
「一緒に戦おう」
リィを一人にしておくと不安だからではない。・・・それも少しあるが、今は違う。
「ずっとしてきたみたいに、二人で」
『流星』と『夜』、二人でこの戦いを終わらせる。
誰も失わず、最善を尽くして。
───望まない戦いを、終わらせる。




