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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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80/92

~準備2~

   1


騎士達が訓練している間、リィはサクリとテセウスのもとにやってきていた。

「・・・何も起こらなければいいんだけど、起きたときのためにサクリに頼みたいことがあるの」

「何?」

「サクリに、回復(ヒール)をやって欲しい。私は手が離せないし、騎士達も衛士達も、負傷するだろうから」

サクリは納得したように頷く。

回復魔法、もしくは治癒魔法は多くの魔力を使うのだ。だから───

「───魔力量が多い私がやると、効率がいい」

リィはさっきからずっと黙っているテセウスの方を見た。その表情に、息を飲む。

「すまぬ。こうなることは、想定できたはずだ。いや、それ以前に・・・民衆の不満に気付かずいた余の責任だ」

声に抑えきれない自憤を滲ませ、テセウスは拳を強く握りしめた。

「余は何もできぬ。そなたらとともに剣を持つことも、魔法で守ることも・・・」

リィは何も言えない。手が届かない自分への怒りはリィも───否、リピアも慣れた感情だからだ。

そうして無言を貫くリィに変わって声をかけたのはサクリだった。

「───自分が届かないものは、周りの人に手伝ってもらえばいいの。元王子だって言っても、一人の人間には変わりないんだから。・・・一人の手はこの世界まるごと持てるぐらい大きくも、長くもないんだよ?」

リィも、テセウスも驚いた。

「ああ、本当に・・・サクリの言うとおりだな」

「でしょ?」

サクリの首を傾けて言う姿が可愛くて、テセウスは微笑んだ。


「テセウスに、リュナとルアをお願いしたいの」

テセウスは何故か頬をひきつらせたが、頷き、

「リィも気をつけるのだぞ」



   2


リィ達が準備してまわっている頃───。

黒いマントを羽織り、フードを被った人物が立ち上がった。

「・・・やりますか」

小さく呟くと、木箱に乗り、


「これまで皆は不作が続く中、厳しい暮らしに耐えてきた!いつか必ず変わると信じて!」


村人達が大声で肯定する。


「変化はあった!だがそれは、皆の望んだものではない!ただでさえ足りない土地を、異国の民に奪われるなんてことは、断じて!」


高い声を張り上げ、フードの人物は叫ぶ。


「そんな皆を嘲笑い、良い暮らしをしているのはどこの誰だ?」


「「「「王族!騎士!」」」」


問いかけに、村人達もまた叫び声で答える。


「言葉が届かない場所にいる王族と騎士達に、不満を訴えるにはどうしたらいい?」


「「「「戦う!武力で訴えてやる!」」」」

フードの奥で、唇が弧を描いた。


「ならば、共に全力を尽くして戦おう!積み重ねてきた(・・・・・・・)力で、奴等に思い知らせてやろう!」


村人達の声が響く中、誰にも聞こえないくらいの音量で、

「───せいぜい上手く踊って、ぶつかり合って、消えてください」

フードを被った『彼女』は、楽しげに笑った。

笑い続けた。

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