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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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78/92

~予兆~

   1


合併してよかったと思うことがひとつある。

騎士団専用の建物ができた。

とにかくなにもかも広い。

そして、そんな新しい騎士団の一室で───


二日酔いの騎士達は机に伏せていた。

酒を飲めないリィと、あまり飲まなかったレイル以外は、全員である。

「急に出動する事態になったら、どうするの・・・」

リィは騎士達全員の机にカップを置いてゆく。

中身は蜂蜜とすりおろした生姜をお湯で割っただけのものだ。

「ああ・・・蜂蜜の甘さが五臓六腑に染みわたる・・・」

「それ飲みながら、仕事頑張って」

リィは騎士達を見渡すと、

「あれ、フォリアは・・・?」

「フォリアなら、数日前に休日申請してたからしばらく休みだよ」

「・・・フォリアって、休みの日何してるんだろ・・・」

首をひねり、リィは手をぱちんと合わせた。

「それよりも!二日酔いだからって、仕事も訓練も容赦しないからね!」

二日酔いの騎士達のために蜂蜜生姜湯を用意したリィが言うと、皆は苦笑いした。

───こうして、初日からリィへの好感度は急上昇したのだった。



   2


合併してよかったと思うことがひとつある。

それは───

「騎士長、かっこいいし、優しいし、好みだなぁ・・・」

あの少女とともに仕事ができることだ。

元リーシア王国の騎士、ギルは宿舎のベッドで今日の出来事の数々を思い出していた。

そして、がばっと起き上がると───


「明日、さっそく告白しよう!」


もし、彼のまわりに人がいたらひいていたことだろう。そのうえで、言っていただろう。

「えっ、お前頭の中お花畑なの?」と。

残念ながら、ここはギルひとりの部屋。

彼の決意は止められないまま、朝を迎えたのだった。


で、今。


騎士達は微妙な表情をしていた。


「お願いしますっ!付き合ってください!」

「「お前、抜け駆けするつもりか・・・!」」

「「「え?」」」

皆の前で告白する騎士、抜け駆けに怒りを抑える騎士数人、それに驚く騎士達。

フリーデン王国の騎士の面々は、必死で笑いを堪えている。


「・・・あの」

「───」

「・・・ごめんなさい」

リィの謝罪に、部屋が静かになる。

「分かり、ました。でも、最後に」


「理由を教えてもらえませんか・・・?」

リィは嘆息した。


「───私、結婚してるの」



ギルだけじゃなく、リーシア王国の騎士達が沈黙した。

ギルが、震える声で問う。

「・・・誰と?」

「・・・レイルと」

驚きに目が見開かれる。


「「「なんでだあああああ!」」」

絶叫する騎士達を見て、ロートがヴェールに言った。

「・・・なあ、この光景どっかでみたよな?」

「ああ、見た。どこだったかは思い出せるようで思い出せないし、深く思い出したくない悲しい記憶だったろうと思うけど、どっかで見た」

「やっぱ、どこも一緒なんだな。急にあいつらに親近感わいてきたよ」


───気まずい空気の中で、一日は始まり、仕事がひと段落するころには皆疲れ果てていたのだった。



   3


合併から一週間たち、リィはロートとともにフリーデン王国とリーシア王国の境にある村の様子を見に来ていた。

村に近付くと、なにやら怒鳴り声が聞こえてきた。

「こっちは俺達の村だ!」

「俺達のとこは、作物が採れない!少しくらい分けてくれたっていいだろう!」

「それは俺達だって同じだ!」

リィ達は言い合いをしている男にかけよると、

「何を争ってるの?」

男はリィの服装と騎士の証であるペンダントに目をとめ、

「お前・・・騎士なんだろう・・・?わざわざこんなとこを見に来て笑ってるのか?」

その瞳に浮かんでいるのは、憎悪に近い感情だった。そのまま、突き飛ばされそうになる。

「出て行け!見下されるために、俺達は生きてるわけじゃない!」

リィは息をのみ、

「・・・今日は、帰りましょう」


帰り道、リィは一言も喋らなかった。

そのまま騎士団の建物───通称『シュヴァリエ』───に入り、書類仕事場にしている部屋のドアを開ける。

「おかえり・・・どうかした?」

レイルがリィの強ばった表情に気付き、声をかけた。

「このままだと・・・」

「「「このままだと?」」」

騎士達の声が揃う。


「戦いが起こる・・・。人と人との、争いが・・・」


───部屋に、重い沈黙が落ちた。

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