~それぞれの思いの裏側~
1
───エイスの過去を見せるという提案を受けた騎士達は、どうやってルッカに幻惑魔法をかけるか頭を悩ませていた。
「・・・ここに、連れてきたほうがいいよな」
ヴェールがぽつりと呟く。
「でも、どうやって・・・」
その時、ロートが全員に見えるように手をあげた。手の中にあったのは───
鍵。おそらくは、ルッカのいる部屋の。
騎士達は驚き、何度か口を開閉させてから───
「お前、そういう性癖だったのか・・・」
「勘違いだ!俺はただ、何かあったときのために・・・」
「───それはいいとして」
ヴェールとロートを静めたのは手を叩いたフォリアだ。
「確かにボクとしても、ロートさんの性癖には正直ひいています。ですが、今はそれを有効活用するべきでしょう」
ロートが何か言いたそうな顔をしているが、騎士達の誰もフォローしない。とことん弄られキャラだ。
「ロートの持ってる鍵で眠る少女の部屋に侵入し、少女を抱えて控室に連れ込む・・・」
「言い方!もっと良い言い方ないのか⁉誤解を招く!」
ヴェールの言い方の悪さにもの申していると、
「ロート、残念だけど、もう誤解されてるよ」
レイルが横から口を挟んだ。前より口調が少年っぽくなったレイルだが、その言葉には充分な破壊力があった。
ともかく、言い方は置いておき、ヴェールが言ったようにすることでまとまった。
問題は、誰が行くかだが───
「ロート」
「これ以上誤解されるのはこりごりだ!ひとりでなんか行かないからな!」
「・・・誰もひとりでいけなんて言ってないぞ。当たり前だろ。なのにその反応、やらしいことでも考えてたのか?」
「そんなわけないだろ!他は誰が行くんだよ!」
フォリアの瞳の、軽蔑の色が濃くなってきたので、ロートは話を戻した。代わって口を開くのはレイルだ。
「フォリアは行ったほうがいい。あと・・・ヴェールも」
「はいっ⁉」
裏がえった声で叫んだのはロートを見て笑いを堪えていたヴェールだ。ロートは笑みを浮かべ、
「どうした、そんな声を上げて。お前のほうこそ・・・」
「───もうやめてください。一言しゃべるごとに、ボクの中でロートさんとヴェールさんの評価が下がっていきます」
二人の応酬は、フォリアの冷めた声で終わったのだった。
数十分後、フォリアとロート、ヴェールの三人は、ルッカのいる部屋の前にいた。
「ノックしますよ。起きている可能性もありますが、寝ていた場合や返事がなかった場合はボクが最初に入ります。お二人はいきなり入らないように」
全く信用されていないが、確かに一番最初に部屋に入るのは同じ女性であるフォリアがいいだろう。
フォリアはドアをノックした。───返事は、ない。
フォリアはロートから鍵を受け取ると、ドアを開け部屋に入った。
少したつと、フォリアが戻ってきた。
「───寝てます。運ぶのお願いします」
ロートとヴェールが来た理由、それは移動だった。
ヴェールは部屋に入り、軽い体を抱き上げる。
「・・・ロート、ひとりで大丈夫だ」
───こうして、ルッカは眠っている間に宿舎から控室まで大移動したのだった。
2
騎士達がわちゃわちゃやっている頃。
テセウスの許可を得たリュナは、荷物を持って再び王城にやってきていた。与えられた部屋に入り、リュナは鞄を開け───
「みゃっ!」
・・・何故か、家に置いてきたルアが入っていた。
慌ててサクリとテセウスのもとへ行き、
「サクリおねえちゃん、どうしよう・・・」
「んー・・・。数日だし、いいよね、テセウス?」
「あ、ああ・・・」
テセウスの目が泳ぎ、サクリとリュナは首をひねる。
「あ・・・もしかして、猫苦手だったり・・・」
サクリの言葉が図星だったのは言うまでもないことだろう。
「・・・余のことは気にするな。ルアとやらも、ここにいるがよい」
突然、リュナの腕の中にいたルアが暴れ、思わず手をはなしてしまう。そのまま───
「みゃあ」
テセウスの肩にぴょんと跳び乗った。男性に対しては冷たいルアが、自分から。
どうやらテセウスはルア的にありらしい。
当のテセウスは引きつった表情で固まっていたが。
「リュナよ」
「───?」
「・・・ルアをおろしてくれ」
テセウスのそんな様子は珍しいと思ったサクリとリュナだった。
───その話にはまだ続きがある。
翌日、テセウスが目を覚ますと頭の横にルアが丸まっていたそうだ。テセウスは寝転がった状態のまま横に移動し、ベッドから落ちた・・・とか。
───テセウスのベッドの横で、ルアは気持ちよさそうに欠伸していた。




