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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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66/92

~レイルの本質~

   1


レイルが記憶をなくしてから一週間。傷は癒えてきたが、記憶は戻らないままだ。レイルは文字や言語という最低限生活に必要なことは分かるのだが、自分に関する記憶が全くないらしい。

リィはほとんどの時間をレイルと過ごし、二人の関係や出会ったときのことを話していた。リュナも傍を離れようとせず、リィが席を外すときは彼女にレイルを見ているよう任せている。

窓の外を見ていたレイルがリィのほうを向いて、

「リィさん、少し外を歩いてみてもいいですか?」

リィさんと呼ばれることに胸を斬られるような痛みを感じ、それを表に出さぬよう気をつけながら頷いた。

医務室を出て、王城の庭園に向かう。

薔薇は葉が生い茂り、メインが紫陽花に取って代わっていた。紫陽花は庭園を囲むように植えられていて、どこを向いても満開の花を楽しめる。また、色とりどりのハーブが薔薇のわきで咲いていた。

赤薔薇の咲く季節、レイルと二人でここにきて愛を誓い合ったことが遠い昔のようだった。

懐かしさに涙がこぼれそうになるのを必死で我慢した。今泣いたらレイルに迷惑をかけてしまう。


「リィさん」

「───」

「僕は、何も覚えていません。でも、リィさんを───リィを、皆を苦しめているのは分かります。だから」


「僕が記憶を取り戻せるように・・・支えてくれませんか」


───レイルだ。敬語を使っているけれど、この人はレイルだ。

テセウスの言うとおりだった。記憶をなくしても、レイルの本質は、どこも変わっていない。

今度こそ堪えきれず、溢れた大粒の涙が宙できらめいた。涙の跡を、レイルの指先が優しく拭う。

「───勿論よ」

レイルがカモミールの花を数本とり、泣き笑いの表情を浮かべるリィの髪にそっと差した。青リンゴのような香りがふわりと鼻腔をくすぐり、リィは微笑んだ。



   2


「レイルの様子はどうだ?」

「傷はほとんど治りかけてるけど、記憶はまだ戻らないみたい」

リィは庭園から戻り、テセウスの自室にやってきていた。

「そのわりには、リィが元気そうで安心したぞ。・・・何かいいことでもあったのか?」

テセウスの質問に頷くだけで答えず、リィは髪に差した白い花にふれた。カモミールには陽魔法がかかっており、しおれたり枯れたりすることはない。

「・・・レイルが治ったら、あちこち二人でまわってみたいの」

何か思い出せるかもしれないから、という部分をテセウスは察したようだった。深く頷いて、

「行って来るが良い。それと」


「近々余も見舞いに行く。よかろう?」

「───うん。ありがとう、テセウス」



   3


リィとレイルはベッドに腰掛け、三日月を眺めていた。リュナは簡易用ベッドですうすうと寝息を立てている。

レイルはリィの髪に触れ、優しく梳かした。

「・・・もう。───やっぱり、レイルはレイルだね」

「そうですか?」

「うん。・・・今のレイルのしゃべり方はイリスに似てるかも」

「イリス・・・?」

「えっと、イリスはね・・・」

二人で話す時間が嬉しくて、レイルも楽しんでいるのが分かって。


───月がかなり高い位置に移動しても、話し声は続いていた。

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