~騎士達の輪~
「───はい、ちょっと注目!」
リィは大声を出し、騎士達の視線を集めた。
「今日は、これまで練習してきた魔法を、皆に披露して。その上で改善点を見つけていこう!」
厳しい訓練ではないと騎士達の表情が明るくなる。
───まあ、たまの息抜きも必要だろう。
いつもの訓練場で一列に並んで座る。
順番はくじびきで決めた。
一番は───ロート。
彼は炎の馬を生み出し、自由自在に操ってみせた。立体的に保つイメージ力はさすがである。
ヴェールは風の刃で丸太をすっぱり切り落とした。形のない風を刃とするのは実はかなり難しいのだ。
他の騎士達もそれぞれの技を見せていく。
残るはエイスとリィ、そしてレイルだ。
エイスの体から冷気が吹き出し、ピシピシという音が響いて───
氷像が出来上がっていた。
ただ、その、何というか。
「独創的な・・・氷像、だね・・・」
何を作ったのかすらも分からない。
まわりの騎士達も実に微妙な表情を浮かべている。なんともいえぬ空気の中、氷像を魔力に戻したエイスが座った。
「次は・・・」
「僕、だね」
レイルは前に出ると、目を閉じた。
次の瞬間、全員の視界も闇に包まれる。
───いつの間にか、薄暗い廊下にリィは立っていた。出口を探そうと歩き始めるが、歩いても歩いても景色は変わらない。確かに前に進んでいるのに、廊下の先に行けないのだ。仕方なく、近くのドアを開け───
水の中から浮かぶように、意識が現実へと帰還した。他の騎士達も頭を手で押さえてたり、顔を振ったりしている。
「レイル、今のは・・・」
「幻惑魔法みたいなものかな。リィぐらいだと抵抗できるようになるよ」
「・・・」
最後はリィだ。
少し勿体ないと思いつつ、この訓練場にくるまえに採ってきた花から花弁だけをとる。そして、用意していた水をはった水槽に、花びらが乗った手をひたす。
───結晶化した水の中には、桃色の花びらが閉じ込められていた。新婚旅行でも作った、世界でたったひとつだけのクリスタル。
「「「おぉ・・・」」」
騎士達が感嘆の声をあげるが、これは序の口だ。
訓練場が、純白の輝きに包まれた。
ちらちらと、幾千もの光の粒が宙を舞う。
幻想的な光景。光はやがて薄れ、消えてしまった。
騎士達はしばらく無言だったが、はっと我にかえると拍手をした。
「凄いです騎士長!綺麗でした!」
ひとしきり感想を言うと、輪になって改善点を考えることに移った。
ここはこうしたほうがいいと、意見を交わす騎士達。
もっと力がのびていけば。この輪が、どんどん広がっていけば。
国は、変わる。きっと、変わっていけるはずだ。
私が出来なかったことを、仲間とともに私がやるのだ。
僅かに残った光の粒子が空へ昇っていった。




