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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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53/92

~騎士見習い~

   1


「あのー、ここが騎士控室でしょうか?」

少女がやってきたのは昼過ぎだった。

若葉色のショートヘア。髪よりも少し濃い色の瞳。

「そうですが・・・ご用件は?」

「用件。用件は・・・」


「ボクを、騎士団に入れて下さい!」



   2


とりあえず控室の中に入れると、フォリアと名乗る少女はきょろきょろと周囲を見回した。

「それで、何故騎士団に入りたいと?」

「はい。ボクは、騎士様に救われたんです」

「救われた?」

「魔獣がボク達の村を襲い、もうダメだって思ったとき、騎士団の人達が来てくれて。───凄く、格好良かった。それが忘れられなくて、ボクも騎士になりたいと」

リィは目を瞑り、質問した。

「なんていう、村?」

「アスール村、です」

アスール村。まだ記憶に新しい。そこは、レイルが留守のときに結界が破れ、リィが即席の結界をつくった村だ。

「・・・あなたの気持ちは分かった。でもそれでは足りない」

「確かに、実力はないです。それは騎士団に入ってから───」

「実力の話ではないの」

「───」

疑問の表情を浮かべるフォリアに、

「あなたは、大切な人達を守るために、『命』を斬れる?」


「この世界はかつて、激しい戦争をしたわ。勝者なんてなかった。多くの命が失われ、二度と同じことを繰り返さぬよう、戦を絶対な悪と定め、禁じた。だから、今の脅威はほぼ魔獣だけと言っていい。───それはきっと、長く続かない」

「続かないって・・・」

「人には、欲がある。今は抑えられているけど、いつか爆発するでしょう。すぐにでも起こり得ることよ、人と人との争いは。───もう一度聞くわ。あなたは、同じ人間を斬れますか?」

フォリアは俯いた。己の手を握りしめ、

「・・・斬れる。たとえ、あとで後悔したとしても、その瞬間は躊躇わない。だって」


「やらないで守れなかった後悔をするよりも、自分の手で傷つけた後悔をするほうが良い」

リィは強い光を宿した目でフォリアを射抜き、

「人の命を失うことには、変わりはないのよ」

「ボクは、誰も失いたくない。だから、敵であったとしても、手を伸ばす。それでもだめなら・・・斬ることは、厭わない」

リィはため息をついた。

「その手を伸ばしたところを、狙われないようにね」

「!なら!」

「ええ。フォリア、騎士見習いとしてあなたの入団を許可する。───訓練は、厳しいわよ?」

リィの笑みに、フォリアも笑って答える。

「望むところです!」



   3


「早速だけど、フォリア、あなたの属性は?」

「属性は、土と陰です」

「ん。じゃあ、まずは土魔法を完璧にしよう」


練習を始めると、フォリアは上達がもの凄く速かった。言われたことを言われたようにこなし、自分でアレンジする。魔法だけではない。剣においても、同じことが言えた。

フォリアは技術というより、感覚で戦うタイプだ。何となくの質が高く、内心で戦慄したほどだ。

いつの日か、彼女はリィを超えると確信した。

フォリアの才能は天賦のものだ。実力があり、何より覚悟が決まっている。この若さで、驚くべきことだ。

一枚の葉が枝から離れ、風に弄ばれながらゆっくりと地面に落ちた。リィは、葉をじっと見つめていた・・・。

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