~騎士見習い~
1
「あのー、ここが騎士控室でしょうか?」
少女がやってきたのは昼過ぎだった。
若葉色のショートヘア。髪よりも少し濃い色の瞳。
「そうですが・・・ご用件は?」
「用件。用件は・・・」
「ボクを、騎士団に入れて下さい!」
2
とりあえず控室の中に入れると、フォリアと名乗る少女はきょろきょろと周囲を見回した。
「それで、何故騎士団に入りたいと?」
「はい。ボクは、騎士様に救われたんです」
「救われた?」
「魔獣がボク達の村を襲い、もうダメだって思ったとき、騎士団の人達が来てくれて。───凄く、格好良かった。それが忘れられなくて、ボクも騎士になりたいと」
リィは目を瞑り、質問した。
「なんていう、村?」
「アスール村、です」
アスール村。まだ記憶に新しい。そこは、レイルが留守のときに結界が破れ、リィが即席の結界をつくった村だ。
「・・・あなたの気持ちは分かった。でもそれでは足りない」
「確かに、実力はないです。それは騎士団に入ってから───」
「実力の話ではないの」
「───」
疑問の表情を浮かべるフォリアに、
「あなたは、大切な人達を守るために、『命』を斬れる?」
「この世界はかつて、激しい戦争をしたわ。勝者なんてなかった。多くの命が失われ、二度と同じことを繰り返さぬよう、戦を絶対な悪と定め、禁じた。だから、今の脅威はほぼ魔獣だけと言っていい。───それはきっと、長く続かない」
「続かないって・・・」
「人には、欲がある。今は抑えられているけど、いつか爆発するでしょう。すぐにでも起こり得ることよ、人と人との争いは。───もう一度聞くわ。あなたは、同じ人間を斬れますか?」
フォリアは俯いた。己の手を握りしめ、
「・・・斬れる。たとえ、あとで後悔したとしても、その瞬間は躊躇わない。だって」
「やらないで守れなかった後悔をするよりも、自分の手で傷つけた後悔をするほうが良い」
リィは強い光を宿した目でフォリアを射抜き、
「人の命を失うことには、変わりはないのよ」
「ボクは、誰も失いたくない。だから、敵であったとしても、手を伸ばす。それでもだめなら・・・斬ることは、厭わない」
リィはため息をついた。
「その手を伸ばしたところを、狙われないようにね」
「!なら!」
「ええ。フォリア、騎士見習いとしてあなたの入団を許可する。───訓練は、厳しいわよ?」
リィの笑みに、フォリアも笑って答える。
「望むところです!」
3
「早速だけど、フォリア、あなたの属性は?」
「属性は、土と陰です」
「ん。じゃあ、まずは土魔法を完璧にしよう」
練習を始めると、フォリアは上達がもの凄く速かった。言われたことを言われたようにこなし、自分でアレンジする。魔法だけではない。剣においても、同じことが言えた。
フォリアは技術というより、感覚で戦うタイプだ。何となくの質が高く、内心で戦慄したほどだ。
いつの日か、彼女はリィを超えると確信した。
フォリアの才能は天賦のものだ。実力があり、何より覚悟が決まっている。この若さで、驚くべきことだ。
一枚の葉が枝から離れ、風に弄ばれながらゆっくりと地面に落ちた。リィは、葉をじっと見つめていた・・・。




