~騎士達の訓練~
1
模擬戦用の、刃を潰した剣同士が甲高い音を立てた。
リィとロートは立ち位置を入れ替えながら、互いの剣を弾き、相手の体に届かせようと剣舞を舞う。
やがて、その動きに乱れが生じ───
「勝負あり、ね」
リィは剣をロートの首に突き付けていた。
二人は剣を鞘におさめると、一礼した。それから、
「ロートも大分ついてこられるようになったわね」
「いや、まだまだです」
ロートは荒い呼吸をしながら言った。対するリィは汗ひとつ掻いていない。
「ほら」
ロートにタオルと水筒を投げ渡すと、
「イリスも帰っちゃったし、これからは昼間の練習でもいいかも」
虹の魔法を使いこなせるようになったイリスは少し前にリーシア王国へと戻っていた。
「そろそろ、皆にも剣を教えるか」
ふふふと悪そうな顔で笑うリィに引きつった表情のロート。
「ロートは覚えが速かったから楽だったけど・・・」
「ありがとうございます」
「ん。じゃあ明日からやるよ。皆に言っておいて」
2
次の日。
早く来て皆にその旨を伝えると、反応は薄かった。
「「「まあ大丈夫だろ」」」
楽観視している騎士達に、
「お前らは分かってない・・・分かってないだけだ・・・」
「それは大袈裟すぎないか?」
首をひねるヴェール。
「・・・体験すれば分かるさ・・・」
数十分後。
「・・・ロート」
「なんだよ」
「・・・お前の話、信じなくて悪かった・・・」
訓練場に立っているのは、リィとレイル、そしてロートだけだった。残りは地面に寝転がっていた。騎士達は「地獄か・・・」「嫌だ・・・やりたくない・・・」などと虚ろな表情で呟いている。
「・・・でも、何でお前は平気なんだ・・・?この訓練が辛いって知ってたのもそうだが・・・」
「言ってなかったっけ」
会話に入ってきたのはリィ。
「ロートは一カ月くらい前から今の訓練をやってるの。自発的に剣を教えてくれって」
「は・・・」
「ロートはあなたたちが帰宅したあともここで頑張ってたのよ。あなたたちが帰宅したあとも」
リィはトドメの一言を口にする。
「どんなに苦しくても、彼は『もうやめたい』とは言わなかったわね」
空気が、凍りついた。
騎士達が、ゆっくりと立ち上がる。
「「「ロートに出来て、俺たちにできないはずはない!」」」
リィの煽りにのせられた皆。リィはにこりと笑うと、
「あと十周!頑張れ!」
一瞬で騎士達の顔が死んだ。
・・・騎士長、目が全然笑ってません。
ロートはため息をつくのを堪え、再び走り出した。
───お昼の時間になり、リィが手を叩くまで訓練は続いたのだった。




