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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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51/92

~祈り~

   1


「どうしよう。緊張する・・・」

「リィが緊張してどうするんだよ」

「だって、明日は!」


「明日はサクリとテセウスの結婚式なんだよ!」

結婚式の前日で、リィは何だか落ち着かない気分を味わっていた。自分の結婚式より緊張している気がする。

「そんなに緊張しなくても、サクリちゃんは大丈夫ですよ」

その場をぐるぐる回り始めたリィに声をかけたのはロートだ。

「でもさぁ・・・」

「それより、早く訓練場に行きましょう。イリス様も待ってます」

素直に頷いて歩き出したリィの足が、ずるりと滑った。

「きゃっ」

倒れ込むまではいかなかったが体勢を崩したリィに、

「・・・騎士長、落ち着いてください。サクリちゃんの前に、俺はあなたが心配です」

「まったくもって同感」

ロートとレイルは互いの肩に手を置き、何やら通じ合っている。今度は滑らぬように、ゆっくりと訓練場に向かうリィだった。



   2


イリスが自身の回りに虹色の結界を張った。リィの魔法に耐えきれることを確認し、

「うん。魔力量の調整もしっかりできてる。・・・今度は『強化』してみて」

強化とは、対象に虹の魔力を注ぎ込み、一時的にステータスを上昇させるのだ。

虹の魔法は破壊というものではなく、万物に力を与えるものだ。守り、強化する。バファーにぴったりな魔法だ。

イリスの強化で、リィの体は淡い虹色に包まれている。試しに軽く地面を蹴ると、そのまま数メートルを一瞬にして移動してしまう。

「イリス!凄いわ!」

思わずイリスに駆け寄ってハイタッチしてしまう。

兄の作り出した魔法を、イリスに伝えることができた。

これが、誰かの役に立ちますように。

リィは頭上を見上げ、祈った。



   3


翌日。

雲一つない青空の下、式は行われた。真っ白なウェディングドレス姿のサクリは眩しくて、小さかったサクリが結婚するという事実が迫ってきた。

式が無事終わり、披露宴に移る。

披露宴が進み、料理も食べ終えた頃。

「新婦のお姉様、一言お願いします!」

「へ?わ、私?」

リィは慌てて立ち上がると、

「私は、サクリの姉のリィと申します。まずは、二人共、結婚おめでとう」

緊張した様子を見せず、堂々と話し始めた。

「私は十五歳で王都に来たので、幼い頃のサクリの印象のほうが強いです。だから、こうしてドレス姿のサクリを見ると、不思議な気持ちになります。自分がいない間にサクリも大人になったんだなぁと」


「二年間ほったらかしにしたのに、再会したとき、お姉ちゃんって呼んでくれて、とても嬉しかった。ありがとう」

次いで、テセウスの方を向き、

「テセウス。私は、あなたに何度も救われてきました」

テセウスと呼び捨てにするのに驚いた皆が眉を上げる。ただ、騎士団の面々はだまって聞いていた。

「レイルとの結婚式のとき、テセウスは一番最初におめでとうと言ってくれて。友と呼んでくれて。今度は、私が祝福する番です」

「───」

「───本日は妹と我が友のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。そして」


「サクリ、テセウス、本当に結婚おめでとう。───末永く、お幸せに」

リィが一礼し、席に着くと割れんばかりの拍手が響いた。誰もがリィのスピーチに聞き入っていたのだ。リィは隣のレイルだけに聞こえる声で言った。

「緊張、した・・・」

「そんな風には見えなかったよ」

「足が震えて・・・おかしな事言ったらどうしようって」

スピーチでは言わなかったが、リィはずっと、テセウスに申し訳なく思っていた。テセウスの想いに応えられないのに、友だと言い、辛いとき、悩んでいるときはいつだって励ましてくれた。テセウスに何か返したいと考えていた。

でも、今日の二人を見て。

サクリとテセウスを祝い、応援することが、何よりのお返しだと気付いた。

二人の幸せそうな顔を、目に焼きつける。

私は神や運命を信じないが、今、この瞬間だけは。

───新郎新婦の道筋に、光があらんことを。

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