第四章『第五王子、隣国へ』
1
「リィ」
「何?」
「・・・正式に、フリーデン王国の騎士団に入ろうと思うんだ」
「そう・・・って、ええ──────⁉」
レイルの言葉が脳内に浸透して、驚きのあまり硬直してしまう。
「え・・・で、でも、そっちの騎士団は大丈夫なの?」
レイルはここだけの話、と前置きしてから、
「実は、このあいだテセウス殿下に呼ばれたんだ」
テセウスは、リーシア王国───レイルの故郷───とフリーデン王国を合併しようと考えている。その旨を父である国王に伝えると、テセウスが主導するという条件下で許可された。
「今のままでは、何かが起きたときにすべて崩れる。そうならないように、さまざまなことを学ばせ、騎士団の規模を大きくする。それに協力してくれないかと言われたよ」
二つの国が一つになり、改革が成功すれば、他の国々も現状を考えるようになるだろう。
「合併するなら、こちらの騎士団に入っても、大丈夫ってことなのね。・・・ん。分かった。それと、私も合併に協力するわ」
「そう言うだろうと思ったよ」
2
「二人とも、協力してくれるか!感謝する!」
「勿体ないお言葉です、殿下」
「五日後、リーシア王国にむかう。そちらの了承をとらねばならぬからな。───リィ、レイル、護衛を頼む」
「「はっ」」
五日後。
早朝から馬車で王宮を出た。護衛は二人。あとは御者だけだ。馬車の窓のカーテンは締め切られている。第五王子とはいえ、狙われる可能性はゼロではない。景色を見られないのは残念だったが。
無事リーシア王国の王宮についた三人は割り当てられた部屋で少し休憩したのち応接室に通される。しばらくすると、ドアが開かれた。部屋に入って来るのは───国王だ。
「お久しぶりです、陛下。騎士団脱退の件はお手を煩わせてしまい、申し訳ございません。そして、他国の王族に仕えることに、深く謝罪を」
「気にするでない。以前会ったときよりも、顔が明るくなった。───今のレイルの方がずっと良い」
レイルは深く頭を下げた。
「レイルのとなりにいるそなた、名を何と言う?」
「リィと申します」
「リィか。そなたに合う、良い名だ」
「は。ありがたき幸せ」
「して、あなたがテセウス殿でよろしいかな?」
「はい。この度はお目通りの機会をくださり誠にありがとうございます、ルイス陛下。───文書でもお伝えした通り、我がフリーデン王国と合併していただきたく」
「その、理由を聞かせてくれまいか?」
「戦争は絶対な悪とされる世界は、争いごとはほとんどなく、安寧を維持しています。しかし、何百年と続いてきた平和な世界は堕落を生み出してしまった。・・・先日、我が国で結界が破れ、リーシア王国の騎士達に救われました。このようなことは今後も起こるかもしれない。そうなったときに、大切な人々を守るには戦力がもっと必要です。しっかりと状況を見極め、判断するための知識も。合併で多くの人が取り組み、結果がついてくれば、他の国も興味を持つでしょう。───それを実現するには、ルイス陛下のご協力が必要なのです」
ルイスは数十秒ほど黙考し、言った。
「テセウス殿のお考えは分かった。───良かろう」
「ほ、本当ですか、陛下!」
「世界が停滞しているのは私も感じていた。ならば、新たな風を吹き込んでみようと思ったのだ」
3
帰り道の馬車の中。
「テセウス殿下、国名はどうするのですか?」
「まああちらの意見も聞かねばならないがな。余は『レイリア国』がよいと思っておる」
「レイリア国・・・ですか。いいと思います」
「であろう?」
夕暮れの道を馬車はゆっくりと進んでいった。




