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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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48/92

~リィの苦悩~

   1


「あの、騎士長」

「何?」

「聞きたいことが」


「イメージ力でどう鍵開けを行ったのか説明して下さい‼」

「ああ、あれ?」

───あれってレベルの行動じゃないんだけどなぁ。

「宿舎の部屋の鍵は全部把握してるから、それを魔力で再現して開けただけよ」

聞き捨てならないことをきいた気がする。

「ぜ、全部把握─────────⁉」

一つや二つではないのだ。数十個もある鍵を僅かな誤差もなく記憶し、合鍵を作り出すなど───

「・・・うちの騎士長は、人間の範疇を超えている」

不可能だ。あり得ない。だが確かにロートはドアが開くところを見た。

「どこまでいくんだろう、騎士長・・・」

人を超え、彼女は何になるのか。

恐ろしいと同時に、見たいと思った。

隣で、とは言わないが、後ろから追いかけていきたい。そのためには───

「俺に、剣を教えてくれませんか」

リィは目を見開く。それから、

「分かった。どのみち、皆にもやってもらおうと思ってたの。でも、昼間はイリスの訓練がある。───夜は、どう?」

「お願いします!」



   2


はぁ、はぁという自分の呼吸音が響く。

「もっと速く!あと十周!」

剣を学びたいというロートにかせられたのは、『走る』ことだった。

走り終わり、地面に倒れ込む。ひんやりとしめった土が心地良い。

少し休憩し、足さばきの練習に移る。

疲れ切った足はもつれ、思うように動かない。それでも、ひたすら繰り返し続ける。もっと刻み込め。もっと───



「はっ!」

目が覚めた。見えたのは、自室の天井。

「夢・・・?痛っ・・・」

体を起こそうとすると、全身の筋肉が悲鳴をあげた。あれは夢ではない。現実だ。

「騎士長が、運んでくれたのか・・・」

昨日の夜を思い出して、げんなりした。

「ん?」

ふと窓に目をとめると、暗い。

「夜、なのか・・・?」

なら、今はいつなんだ。何時間眠っていたのか。



───そのころ。

「リィ」

「うっ・・・」

「さすがにやりすぎだ。疲れきって二日も眠り続けるような運動をいきなりさせるなんて」

「・・・ごめんなさい」

レイルはため息をついた。リィは俯き、

「思い、出したの」

囁くような声を聞いて、レイルはリィの顔を覗き込んだ。

「思い出した・・・?何を?」

「他者の過去で苦しんでたエイスを助けるために、私は・・・」


「救えなかった皆を・・・思い出したの」



   3


「救えなかった、皆・・・」

「私は、弱くて・・・強くなるために、無茶なことばかりしてたの。その感覚でロートに・・・」

「リィは、弱くなんてないよ。救えなかったのも、リィのせいじゃ───」


「皆、レイルと同じように言ってくれた」

「───」

「リピアのせいじゃないって」


「でも、どんなにそう言って、ひとりじゃないって言ってくれても」


「───私が守れなかったことに、変わりはないの」

深く息を吸い、

「私は、エイスのように、それで納得できない」

同じことを、同じように感じていても、考え方はさまざま。思いは、けっして同じではない。

「・・・もし、自分が死んでも、皆が助かる道があるなら、そっちを選ぶのか」

レイルは押し殺した声で問うた。

「・・・うん」

「その結果、周りの人が───」

「だって、私は・・・っ!」

レイルの声を遮り、リィは叫んだ。

「私はもう、誰かが失われるのを見たくないんだ・・・‼」


「足掻いて足掻いて、方法がそれしかないなら・・・私の命で救われるなら、私は喜んで差し出す」

「・・・リィ」

「でもそれは、未来の話よ。もういない皆に、『もし』なんてない・・・!」

レイルはリィが、何十年とたった今でも苦しんでいたことを悟った。

レイルは何も言わなかった。

ただ、震えているリィの体を強く引き寄せた。リィは抵抗せず、むしろ縋りついてきた。

リィは、ずっとこの思いを誰にも言わず、悩んできたのだろうか。

守れなかった記憶とともに、強くなることだけ求めて、歩んできたのだろうか。

これは、誰かが教えてやれることじゃない。

リィが自分で、折り合いをつけていくしかないのだ。

震える声で誰かの名前を呟くリィを、レイルは抱き続けていた。

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