~騎士達の優しさ~
「うわああ・・・どんな顔して行けばいいんだ・・・」
ロートはベッドの上で羞恥に顔を赤くしていた。思い出すのは昨日の出来事。自分の過去を打ち明け、リィに抱き寄せられ背を撫でられながら涙を零す───
「年上の男としてどうなんだよ・・・」
そこまで考えてから、精神年齢ではリィの半分にも満たないことに気付く。
「普通に。そう、普通に、だ」
布団を勢いよくはねのけ、寝間着を脱いで騎士服に着替える。顔を洗い、鏡を見た。泣いた痕跡はほとんど残っていない。言わなければ分からないだろう。
手早く朝食を食べ、壁についているフックから騎士の証であるペンダントをとり、首から下げる。ドアを開けると、装飾のない廊下が広がっていた。ロートは王城の脇の騎士宿舎に住んでいるので、移動時間が少ないのは助かる。あまり大きな音を立てられないのは難点だが。
騎士控室に入ると、すでに他の騎士達がいた。部屋をぐるりと見渡すと、リィと目があってしまった。硬直し、どうするべきか悩んだロートはリィのほうに歩み寄り、他の人に聞こえないくらいの音量で、
「・・・昨日は、ありがとうございました」
リィは微笑んだだけで何も言わなかった。
席につくと、隣に座ったヴェールが声をかけてきた。
「おい、ロート」
「・・・なんだよ」
ヴェールは顔を近付け、
「お前・・・泣いただろ?」
「なっ・・・‼」
思わず立ち上がると、騎士全員の視線が集中した。
「何でそれを・・・!」
「いや、目が腫れぼったくなってるし」
「・・・」
さすがは長い付き合いの友人、察しがいい。口に出してほしくはなかったが。
控室のドアが開き、入ってきたのは眠そうな表情のレイルだ。起こしても起きないレイルに呆れ果て、騎士長は放置してきていたらしい。レイルは半目だけ開けた状態でロートを見つけると近付いてきた。ロートの顔をじっと見て、
「ロート・・・何かあったのか?」
「そんなに分かりやすいですか俺‼」
「だって目が腫れ・・・」
「お願いですからそれ以上言わないで下さい‼」
だいたい騎士長だって泣いていたのに何で気付かれるのは俺だけなんだ、とリィを見ると、
「泣いたあとは目を冷やすといいわよ」
「フォローなのに微妙にフォローになってません!」
リィの一言のおかげで泣いたことが知れ渡ってしまい、ロートは机に伏せる。悪気のなかったリィは首をかしげていたが。トントンと肩が叩かれ、顔を上げると、エイスの顔がすぐそばにあった。エイスは無言で何かを差し出してくる。受け取ると、それはタオルだった。中には氷が包んであり、これで冷やせという意思表示だろう。礼を言って瞼にあてる。
「貰ったタオルはキンキンに冷えているけど、その心遣いは温かい・・・!」
目を閉じて冷やしていると、だんだんと眠くなってきた。昨日の夜は恥ずかしさからあまり寝られなかったのだ。これから仕事だ。書類仕事をしなければならないのに───
ぱさり、と音をたてて、タオルが落ちた。
机の上で伸ばした手を枕にして、タオルを落としたことにも気付かずにロートは眠っている。
リィは椅子の上に置いてあったカーディガンを取ると、ロートにふわりと掛けた。そして、眠るロートを起こさぬよう小さな声で、
「仕事始めて!」
と言った。
ロートが目を覚ましたのは昼休憩が始まった頃で、仕事をせずに寝ていたことに慌てる彼に対し、
「仕事なら、大丈夫だよ。私達が手分けしてやっておいたから」
より申し訳なくなったロートにリィは言った。
「皆に頼って、頼られて・・・それが仲間だもの」
リィの横でレイルが何度も頷いている。
仕事をサボったのに怒ることなく、それどころか助けてくれて。仲間だと言ってくれて。
皆、優しい。リィも、レイルもヴェールもエイスも。
「ありがとう、ございます。・・・本当に」
リィはにこっと笑うと、
「よく眠れた?」
「はい!それはもう、しっかりと!」
三人は笑い、午後に備えて準備するために部屋を出たのだった。




