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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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37/92

~I will see you around~

   1


家のポストをあけると、一通の手紙が入っていた。サクリ宛ての手紙だ。封筒を裏返すと、拙い字で住所がかかれている。───ファス村。

リィとサクリの故郷からの手紙だった。



   2


手紙に目を通すサクリを、リィはじっと見つめていた。サクリは読み終えると、無言で差し出す。

内容は、リィ達の母が怪我をして、次女であるルッカだけでは家事の全てを行えないため、サクリに戻ってきてほしいというものだった。

「サクリ・・・」

躊躇いがちに声をかけると、サクリは勢いよく顔を上げ、

「大丈夫。リュナもひとりでいられるようになったし。私一人いなくても問題ないよ。・・・私、今日はもう寝るね」

一気に言うと、早足でその場を去ってしまった。

サクリがそれを望んでいないことは、取り繕った笑顔を見るまでもなく明らかだ。

「私が・・・騎士じゃなければ・・・」

リィは目を瞑り、胸元のペンダントを強く握り締める。

───途切れた言葉がリィの口から紡がれることはなかった。



   3


手紙がきた翌日、サクリは王城へとやってきていた。テセウスに別れを告げるためだ。

ノックすると、すぐにドアが開いた。

「サクリ!よく来てくれたな!中に入って紅茶でも・・・」

テセウスは不意に言葉を切った。勘の鋭い彼のことだから、サクリの表情に何かを悟ったのだろう。


「テセウス。私、村に帰らなきゃいけないの」

手紙の内容を大まかに話す。

「戻って・・・くるのだろう、サクリ?」

サクリは答えない。

「何故、答えてくれぬのだ・・・」

「・・・一度戻れば、いてほしいって頼まれる。私はそれを、断れない」

「───」

「私は村人。あなたは第五王子。・・・最初から、住む世界が違うの。それで、あなたは」


「あなたは私に、何を求めるの?」

涙が一筋、頬を伝った。

「あなたは私に、何を期待するの?」



「・・・私は明日、村に戻る。さようなら、テセウス」

ドアの前で一礼し、顔を見られぬよう部屋を出る。

ドアの外に立つ騎士が走り去るサクリを驚いたように見るが、気にしていられない。

走って、走って、走って。

気がつくと、サクリはベッドの上にいた。

「うっ・・・く・・・」

嗚咽を堪え、熱い雫を零す。

真っ白なシーツの上に水滴が弾け、薄く跡を残して、消えた。



   4


次の日。

「また魔獣に襲われるといけないから、瞬間移動で村まで送るわ。・・・準備はいい?」

「大丈夫。荷物はちゃんと持ったから」

リィは切なそうな色を瞳に宿し、サクリを見つめた。

目を瞑る。

リィが集中し、サクリの体が浮遊感に包まれて───

その、直前。



「サクリ!」

聞き慣れた声に目を開ける。

「テセウス・・・」

後ろからレイルが慌てたようにやってきた。

「何で、きたの。昨日、挨拶したのに・・・」

「サクリ」


「───余は、そなたが帰ってくることをいつまでも待っている」

「───」

「いつでも、来たいときに来るがよい」

きっと戻れないと、そう言ったにも関わらず、待っている、とは。本当の、本当に。


「テセウスらしいね」

自然と、笑みが零れて。

「であろう?」

いつもと変わらない口調のテセウスに。

ありがとうでも、さようならでもなく。


「行って来ます!」

テセウスは驚きの表情を浮かべ、それから、


「気をつけて、行って参れ」

二人の視線が交錯し、瞬時に想いが行き交う。

テセウスの笑顔をこの目に焼きつけて。


───次の瞬間、サクリの目の前には村が広がっていた。



「あれで、よかったの?テセウス」

「余が伝えたいことは全て伝えた。だから、良い」

テセウスは村にいるサクリに思いを馳せ、空を見上げる。

名も知らぬ鳥が二羽、風を切って空高く飛んでいった。

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