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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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36/92

~十一輪の赤薔薇~

   1


───もっと僕達を頼ってくれよ‼


繰り返し、繰り返し、レイルの叫び声が脳内で再生される。


───リィにとって、僕達は・・・僕は、何なんだよ‼


耳を塞ぐ。だが、声は変わらず流れ続ける。

もう、やめてくれ。お願いだから、やめて───


「っ・・・はぁ・・・」

目が覚め、喘ぐ。布団から両手を出し、額に浮かぶ汗を拭った。

慣れない医務室のベッドから体を起こし、脇にある時計を見ると、眠りに落ちてから三時間とたっていない。

荒い呼吸が落ち着き、リィは再び横になった。

そのあとは、どれだけ目を瞑って寝ようとしても、眠りの波はやってくることなく、朝を迎えたのだった。



   2


「・・・騎士長」

ぼんやりと天井を見ていると、声がした。

そちらに顔を傾ける。部屋に入ってきたのはロートだった。

「ロート・・・何か用?」

ロートはその質問に答えず、椅子に腰をおろした。

「騎士長、隈が濃いですよ。眠れてないんでしょう?」

顔を背けたリィをじっと見つめ、ため息をつくと、

「俺は何も言いません。騎士長を責めることもしない。騎士長には騎士長の考えがあるでしょうし」

「───」

「でも、もし」


「もし───一人で悩んで辛くなったら、少なくとも俺は相談にのりますよ」


「な、んで」

「騎士長?」

「なんで・・・どうしてそこまでしてくれるの・・・?」

「決まってるじゃないですか」

ロートは失望した様子を見せず、それどころか唇の端を持ち上げて言った。


「騎士長が───リィが、俺達の大切な仲間だからだよ」


リィと呼び、敬語を使わずに。今この瞬間は上司ではなく、対等な関係の仲間として。

一体、何度リィはロートに、仲間(みんな)に救われてきたのだろう。

自分が何故、周囲に頼ることを避けたのか、ようやく理解した。


「ありがとう、ロート。───今、レイルがどこにいるか分かる?」



   3


リィとレイルは、庭園に座っていた。奇しくもそこはテセウスがサクリに真意を語った場所だった。

「話って、何だ?」

レイルは気まずさからリィの顔を見れなかった。地面の花を見つめ、話を促す。

「レイル。・・・私が頼らなかったのは、レイルが頼りないからじゃない」

「・・・じゃあ、何で」


「私は、充分すぎるぐらいに・・・私なんかに勿体ないぐらいに、皆に救われてきた」


「貰ったたくさんのもの、まだ全然返せてないの。だから、自分で出来ることをやろうと思ってた。・・・それがレイルに・・・仲間(みんな)に嫌な思いさせてたなら、ごめんなさい」

レイルは息をのむ。

僕だ。

救われてきたのは、僕だ、と思った。

レイルが苦しいとき、いつだってそばに寄り添ってくれて。

それを返したくても、リィが頼ってくれることはほとんどなくて、感情を制御できずにリィにひどい言葉を浴びせた。

───二人とも、同じ思いだったのだ。そのことに気付かず、すれ違っていただけで。

驚きと後悔が入り交じり、自分が今どんな顔をしているのか分からない。


「私にとってレイルは・・・気軽に話せる仲間で、心の内を言える友人で───最愛の人だよ」

リィは頬を染め、真っ直ぐにレイルの目を見て言った。

全身を、訳の分からない衝擊が駆け巡る。

何なのだ。この感情は。

熱く、激しく、そして決して不快なものではない。

万感の思いがこみ上げ、まともな声が出ることを祈りながら、震える口を開いた。


「僕も同じだ、リィ。───愛してる」


二人は顔を近付け、熱い口付けを交わした。

静寂の中に、二人の鼓動だけが強く響く。

二つの体が融合し、ひとつになるような感覚。

唇を離し、至近距離で互いを見つめる。

ああ、やっぱり自分(レイル)は。

リィが好きで好きで仕方ないのだ。どうしようもないほど。

リィを胸に引き寄せ、逃がさないよう抱き締める。

彼女が苦しくないように、肩の傷に当たらないように、加減して。

───庭園で、十一輪の赤薔薇がリィとレイルを祝福するように咲いていた。

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