~What am i to you?~
1
リィは寝台の上で体を起こした。
「・・・痛っ」
サクリの治癒魔法のおかげで傷はくっついたが、引きつるような痛みはまだ残っている。
多量の血を失った体は重いが、動けないほどでもない。
立ち上がり、部屋の隅に洗って干してあったワンピースに着替える。脇に立て掛けてあった剣を剣帯に差し込む。
部屋を出、騎士控室に向かう。歩く速さはいつもより遅く、廊下が長く感じた。
ようやく控室にたどり着くと、騎士達全員の視線がむけられた。
「何でこんなとこまできてるんですか!」
「何でって・・・仕事」
「騎士長昨日大怪我したんですよ⁉今日ぐらいは休んでください!」
「あれは、私がそうしろって・・・皆にこれ以上、迷惑かけられないし・・・」
「そんな様子で仕事されるほうが困る‼」
リィの後ろのドアが開いた。
「───やっぱりここにいた」
「・・・レイル」
「何でここにいるんだ?休んでないと」
レイルはため息をつくと、リィに飲み物を渡した。
「今医務室に行ったんだけど、誰もいないから」
喉が渇いていたのだろう、黄色がかった飲み物をリィは一気に飲み干した。
そのまま───ふらりと上体がゆれる。レイルが支えると、リィは目をとじていた。───眠っている。
「睡眠薬でも、入れたんですか?」
「いいや。林檎の発泡酒だよ。リィはお酒に弱いから」
騎士達はなるほどと頷く。レイルはリィを抱え上げると、部屋を出て行った。
「いいな・・・騎士長・・・お姫様抱っこされてる・・・」
「馬鹿野郎、お前は男だろうが!されてどうする!」
ロートの突っ込みが入った。そして、独り身の騎士達は揃ってため息をついた。
2
「ん・・・」
瞼を持ち上げ、何度も瞬きする。
顔を横に傾けると、レイルの顔が見えた。
「レ、イル・・・」
「っ・・・!今、何時・・・?」
「午後四時」
「四時・・・行かなきゃ」
「本調子じゃないだろう。まだ休んでいて」
「・・・私が勝手にやったことで、休むなんて・・・」
「少しは・・・少しは、僕達のことも頼ってくれよ‼」
「───」
「何もかも、自分でやるんじゃなくて、もっと頼ってくれよ‼」
「皆に、迷惑かけるわけには・・・」
「───リィにとって、僕達は何なんだ?」
「迷惑をかけたくないからって、そんなに僕達は頼りないのか?」
「そんな、こと・・・」
「皆に頼って、頼られて・・・どうにか良い方にしていこうっていうのが、仲間なんじゃないのか⁉」
激情に顔を歪め、レイルはなおも叫んだ。
「頼ることを迷惑だって思って、頼らないなら・・・リィにとって、僕達は・・・僕は、何なんだよ‼」
「答えて・・・答えてくれよ・・・‼」
肩を震わせ、レイルは声を絞り出すようにして言った。その言葉は情けないくらいに揺れていた。
部屋の外で、様子を見に来たロートとヴェールが聞いていた。レイルの声が嗚咽に変わり、ドアから耳を離す。そのまま控室に戻るために歩き始める。
「───騎士長は、自分で答えに辿り着く。それまで、俺達はあの二人を支えようぜ」
「ああ、そうだな」
ロートに答え、ヴェールは空を見上げる。
沈む夕日が金色に輝いていた。




