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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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27/92

~騎士の務め~

   1


「サクリ、こっちにおいで」

「リィおねえちゃん、ほんよんでくれるの?」

リィは頷き、何冊かの本をサクリの前においた。

「どのお話読みたい?」

「えっとね、これ!」

サクリが指差した本を開き、読み始める。



   2


「騎士長!大変です!また王都に魔獣が発生しています!」

「また⁉結界は⁉」

「それが・・・結界が破られそうになっています‼」

「数は⁉」

「百くらいかと!」

百ならなんとかなる、と安堵しかけたが、続く言葉がそれを許さなかった。

「ですが、一匹がもの凄く強力で・・・!」

「なっ・・・!」

魔獣達が強力になった。

自然に起こることではない。───人の手が入っている。

「まだ、結界は破れてないのね?」

肯定する騎士に叫ぶ。

「すぐに騎士と衛兵達を召集して!緊急会議を行う!」



「恐らく、誰かが力を与えている。それを止めないことには、勝てない」

「でも騎士長、その誰かを見つけられるんですか?」

「さっきから、強い魔力が溢れてるのを感じる場所があるの。そこにいる人が・・・元凶だと思う」

会議場が僅かにざわめくが手をあげてしずめ、


「私が元凶を止めにいく。みんなは、止めるまでの時間稼ぎをお願い」



   3


「・・・みんな」

武器を持ち、今までにない激戦に征く仲間達が。

「みんな・・・無事で。無事に・・・帰ってきて」

祈りを込めて、目を閉じる。


「騎士長」

ゆっくりと目を開け、言葉を発した人物を見る。


「魔獣を倒して、人々を救って、皆で帰ってくる。───それが、俺達騎士の務めだ」

ロートが敬語を使わずに言った。


「死ぬその瞬間(とき)まで、俺達は足掻き続ける。全てを拾うために。───まあ、死ぬ気なんて毛頭ないですけど」

最後のほうは茶化すようにヴェールも言う。


───死ぬその瞬間まで、足掻き続ける。全てを拾うために。

今まで、(リィ)は自己犠牲を考えて戦ってきた。もともと引き延ばしてきた命、誰かを守るためにつかい、果てるのならと。


彼らは違う。死ぬつもりで戦うわけじゃない。

生きるために、守りたいものを救い出すために、戦うのだ。


「騎士長も───リィも、生きて戻ってこい」

「はい!」

一瞬レイルを見つめ、頷きかける。


「皆!生きて、もう一度ここに集まろう!必ずだ!」

「「「ああ‼」」」



   4


「ここ・・・ね」

魔獣達を皆に任せ、リィは強い魔力を感じる場所へとやってきていた。

不意に冷たい冷気が背を撫で、リィは抜剣と同時に振り返った。

───そこにいたのは。


「サクリ・・・なの?」

リィの、末の妹だった。


「な、んで・・・ここに・・・?」

サクリが、私を見る。

その目に、生気はない。

サクリの体から、精神操作系の魔力を感じた。

恐らく魔獣に操られ、無理矢理強化させられているのだろうと直感する。


どうにかして、サクリ自身の意識を引っ張り出さなければいけない。


「サクリ・・・一緒に本を読んだこと、覚えてる?」


「ずっと帰らなくて・・・相手にしてあげなくて、ごめんなさい。だから」


「あのときの───明るいサクリに、戻ってよ──────‼」


───次の瞬間、後ろから襲いかかってきた魔獣の牙がリィの肩にくいこみ、血が飛び散った。



   5


強力な魔獣により、ついに結界が限界を迎え、破れた。

爪の攻撃を受けた衛兵が、よろめく。そこをのがさず魔獣が───

風の刃が魔獣を吹き飛ばす。

手をのばしたまま、レイルは叫んだ。

「負傷者は一度下がって、回復を!魔力は必要な分だけ使うように!」

「「はっ!」」


───こっちは僕達に任せてくれ、リィ。

リィはリィの戦いを。

離れた場所で戦うリィに念じ、レイルは剣を振り上げた。



   6


レイピアを後ろに突き出し、絶命した魔獣の牙を抜く。鮮血がふきだし、赤い雫がサクリの頬にはねる。

サクリの手がゆるゆると持ち上がり、雫をぬぐった。

手の赤を見つめるサクリが顔を上げる。



「お・・・姉、ちゃん?」

「サクリ・・・!」

サクリの瞳に、かつての光が戻っていた。

駆け寄り、自分より背の低い体を抱き締める。

「サクリ、何があったの?」

サクリはゆっくりと話し始めた。


結界のそばで転んでしまったサクリは、結界の外に出てしまった。急いで中に戻ろうとしたが、魔獣達に襲われ、意識がなくなったらしい。


これまで気付かなかったが、サクリは魔力量が通常の人より多い。だからこそ、魔獣に利用されたのだ。

「サクリ、魔獣にかけた魔法、とける?」

「うん。やってみる」

サクリの長い髪がふわりと浮き、魔法が解けたのをリィは肌で感じた。

気が抜け、途端に肩の傷は痛みを主張し始める。陽魔法で血は止めたが、完全な治癒にはいたっていない。


「急いで、レイル達のところに戻ろう。強化は解けたはずだけど、魔獣がいることには変わりはないもの」



   7


───魔獣達が急に弱くなった。

リィは、果たしたのだ。自らの役目を。

空を見上げる。

太陽の光にまぎれて、金色の光がちかりと光った。

光はどんどん、近付いてきて───


「ただいま、レイル」

「おかえり。お疲れ、リィ」

リィの隣には、一人の女の子が立っていた。

「レイル」


「さっさと、終わらせよう」

にっこり笑ってリィはそう言った。



リィとレイル、サクリは宙に浮いていた。勿論、陽魔法のシャボン玉の中だ。

「サクリ、ちょっと魔力をわけて」

血縁者だから出来る魔力の譲渡を行う。

「いくよ、リィ」

リィとレイルは、金色の膜越しに魔法を行使した。二人が初めて出会ったときのように。

炎の風に触れた魔獣は蒸発し、消滅した。



   8


「リィ、魔力強くなってないか?」

「えー、そう?」

ようやく今回の件が片付き、リィとレイルは休日を満喫していた。

「私はあんまり分かんないけど・・・やっぱり」

───己の騎士のあり方をしっかりと定めたから、だろうか。

口の中で呟く。

「やっぱり?」

「何でもない!」

全てを救うために、守りたいものを守るために。

これからも、戦い続ける。

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