~新婚旅行~
1
塩を含んだ風が、頬をなでる。
正面には、どこまでも続きそうな青い海。波の下には白い砂が透けて見える。
───リィとレイルは、新婚旅行の真っ最中だった。
2
「見て、レイル!綺麗な貝殻があったよ!」
そう言って差し出すのは淡いピンクを帯びた貝殻。とても脆く、形状が整っているものは少なかった。
「本当だ、綺麗だね。・・・僕も、こんなものを見つけたよ」
「これ、巻き貝?すごい・・・」
波打ち際を子供のように駆け回り、貝を見つけては声をあげる。
───騎士として名高い二人は、一応まだ十代なのだ。はしゃぐのも仕方ない。
他に誰もいない海を思い切り満喫し、二人は砂浜に腰を下ろした。
海の向こうに夕日が沈もうとしており、穏やかなオレンジ色の光が波にうつっている。
「うわぁ・・・」
リィの金色の髪もオレンジに染まっていて、普段よりもさらに美しい。
やげて夕日も完全に沈み、薄暗い闇が近づいてくる。
「何か・・・ずっとここにこうしてたいな・・・」
「楽しかった。・・・あっ」
波を見ていたリィが、突然立ち上がった。そして、布に丁寧に包んだ貝殻のうち二つをとると、海に近づいていく。
「リィ?何を・・・」
「そばにきて、見てて」
言うとおりにして、リィの手元をのぞきこむ。
リィは左手に貝殻をのせると、その手をゆっくりと水に浸した。水のなかで、僅かに貝殻がゆれる。次いで、右手を左手に重ねた。一瞬金色の光が手の隙間から溢れ、消えた。
水の中から手を出し、左手をどかす。そこにあったのは・・・
海の青を閉じ込めたかのような、美しいクリスタル。
顔を近づけ、よくよくみると、結晶の中に貝殻があるのが見えた。
「こうすれば、いつでもここにいるように思えるでしょ?」
「ああ・・・そうだな。ありがとう、リィ」
「どういたしまして」
リィは簡単に行うが、結晶化は易々とできることではない。陽属性を持ち、なおかつ極度の集中力、イメージ力がないと難しい。そのうえ美しい形をたもつなど。
表面上は笑顔だったが、内心では驚愕していた。
「さすが、自分の記憶を結晶化する人は違うな・・・」
「?何か言った?」
リィが首を傾げてきいてくる。
「い、いや、なんでもない。・・・うん、なんでもない」
後半は口の中だけで呟いた。
リィはしばらく不思議そうな顔をしていたが、手をたたくと言った。
「そろそろ、宿に行こう。私、お腹すいちゃった」
「僕も。・・・また、来よう」
「ねぇ、レイル。・・・宿、どこだっけ?」
「さ、さあ・・・」
見知らぬ地で迷子になり、あたふたする騎士二人なのだった。




