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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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2/92

第一章『村の少女、有名になる』

   1


 激しい光が、目を焼いた。次いで訪れたのは、途轍もない衝撃。何が、起きたのか。何も、分からない。そのまま、私は───



   2


「・・・リィ!どうしたの?」

母の呼ぶ声で物思いから冷める。長い夢を見ていたような、不思議な感覚だけがあった。

「大丈夫。少しぼーっとしてただけだから」

物思いなどしている暇はないのだ。私のする仕事はまだまだたくさんある。野菜の皮むきが終わったら、破れた服を縫って・・・

変わらない毎日は、いつまで続くのかと思っていた。



   3


 午前中の仕事を終え、昼食を食べた私は、気分転換として川にむかった。水の流れる音が響くこの場所は、私のお気に入りの場所だった。ただぼんやりと川の底を眺めていると、何かが陽光を反射して光った。落ちていたのは淡い金色をおびたクリスタル。思わず手をのばし、美しい結晶体に触れると───

クリスタルを通して、映像が流れこんでくる。

これは───私の、記憶。

失ったはずの、前世の『私』が、今の『私』に重なる。

流れこむ。記憶という濁流が。

──。

───。

────。


前世の記憶を取り戻しても、『リィ』は残っていた。

正確には、リィの人格というべきか。

私はリィであり、リピアである。

二つの人格があるとは不思議なものだ。

ふと思いついたことがあって、木の枝と落ち葉を拾う。息を整えてから、落ち葉を十数枚上に投げる。といってもただの葉っぱなので、少し舞い上がっただけだ。そのまま不規則に落ちて───こない。落ち葉は全てリィの持つ何の変哲もない木の枝に刺さっていた。


私の前世リピアの職業は騎士だ。

魔法と剣技で上に出る者はいないとされ、『流星』の二つ名を持っていた。この体でも剣は使えそうだ。次は魔法を試してみよう。


 リィがはっとして村に戻ったのは休憩時間を大幅に過ぎた時だった。



   4


 時間を無視したことを怒られるのではと思いながら戻ったリィは、人がいないことに気づいた。家に入ると、奥の部屋で、母と私の妹達が震えていた。普通の様子ではない。

「何かあったの⁉」

「村に魔獣が・・・お、襲ってきたって・・・」

魔獣とは、魔法や特殊能力をもつ害獣である。人を見れば襲いかかる、そういう生き物だ。

普段は村には結界があるので入ってこれないはずだが、それよりも。

「魔獣討伐は、騎士の仕事よね」

「リィ⁉どこへ行くの⁉」

母の悲鳴を無視して、私は窓から外に飛び出す。今は村の衛士が戦っているはずだが・・・

「あっち・・・ね」

近い。悲鳴がしだいに大きく聞こえてきた。

そして───


「う、うわああぁぁぁぁああ‼」

一人の衛士が、魔獣に向かって剣を突き出す。だが、遅い。魔獣は剣を避け、衛士に体当たりした。その衝撃で衛士は剣をはなした。剣は、リィの足もとにまで転がってくる。丁度いい。

転がってきたのはリィが得意としている細剣だった。リィはレイピアを掴むと、魔獣に向かって駆け出した。走る間に詠唱なしで魔法を用意し、発動させる。白い光を纏った剣は、魔獣に向かって突き進み───


「がああああああああああ‼」


魔獣の皮膚をたやすく貫通した。

決着は、一瞬だった。



───衛士五十人が苦戦した魔獣を、一人で、しかも一撃で倒した。十五歳の少女が。

そんな彼女がレイピア使いとして村で有名になり、剣の修行のための王都行きが決まるまで、さほどかからなかった。


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