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流星と寄り添う夜  作者: 璃依
本編
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11/92

~故郷からの帰り道~


   1


「で、レイル。私、レイルのことを何にも聞いたことがないなぁ~って思うんだけど」

村からの帰り道、突然リィが言った。

「僕の、こと?」

「そう。レイルがこれまでどんな風に生きてきたのか」

確かに、一度も話したことはなかった。否、話せなかった。家族や村の人達の気持ちを薄々感じながら、目を背け続けてきたのだから。それをしっかりと見つめ、答えを出したのはたったの三日前だ。罪悪感は残っているが、もう前とは違う。今なら、話せる気がする。他人としか思えなかった二人を、自分の両親だと言えるようになった今なら。


「・・・僕は、十歳以前の記憶がないんだ。両親は井戸に落ちたって言ってたけど」

リィが目を見開く。だが口をはさむことはせず、静かに聞いていた。

「魔獣との戦いのとき、リィと会って・・・あとは知ってのとおりだよ」

全てを語り終え、レイルは隣をゆっくりと見た。

「だから、帰ったとき・・・」

瞳がゆれ、リィはそれを隠すように瞼を閉じた。伏せられた睫が小刻みに震える。再び目をあけたとき、リィは申し訳なさそうな顔以外は普段の様子に戻っていた。

「なんか、ごめんね。話したくなかったでしょ?」

「いや、いいんだ。───僕も、誰かに聞いてほしかったから」

リィはひとつ息をはくと、

「レイルに聞いておいて、自分のことを話さないのはおかしいね。・・・私が皆から『流星』って呼ばれているのは知ってるよね?」

「うん。二十年近く前には、リピアっていう人が同じように呼ばれてたらしいね」

「私が『流星』って呼ばれるのは当然のことなの。だって」


「私は───リピアの生まれ変わりだから」



   2


「リィが・・・リピアの、生まれ変わり?でも、そんなことが・・・」

「あるの。リピアだった時の私は、いずれ都市や村を囲む結界が古くなって破れるだろうと思った。襲い来る魔獣に耐えうる戦力が無いことも分かってた。そのことを思い出したのは戦いが終わってからで、何やってるのって自分に言いたいけど。───それはいいとして」

息をつぎ、

「私がその場にいれば可能性は残る。でも、私は戦えるような体じゃなかった」

年をとり、老いた体は思うように動かない。

「そこで考えたのは、自分の記憶を結晶化させるっていう方法。結晶に触れた(リィ)はリピアの記憶を取り戻したの」

おそるおそる、レイルを見る。

自然の摂理に背き、人より長い人生を得た私を、彼はどう思っているのか───


「───それでも、リィはリィだ。リピアの生まれ変わりでも、何も変わらないよ。・・・まあ、驚いたけど」


自分の秘密を知っても、なんら変わらない態度を見て、思った。

こういう人だから、私は彼に惹かれたのだ。


「リィ?」

立ち止まったリィに、レイルが心配そうな声を出す。

瞳が潤み、視界が滲んだ。

好きだ。彼が、狂おしいほど。

指先で溢れそうな涙を払うと、レイルに笑顔を向ける。レイルが息を呑んだ。

「ありがとう・・・ありがとう、レイル」


「これからも・・・一緒にいてくれる?」

レイルは微笑むと、

「当たり前だよ。───ずっと、一緒にいよう」

 距離が縮まり、唇が軽くふれ合った。

 リィとレイルは歩くのを再開し、家に帰る。

かけがえのない、二人の家に。

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