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21 酒豪ルーヴェル

「閣下、話とは何でしょうか?」


 フリードリッヒは大将軍の執務室で、上官と向かい合った。


「座ってくれ。長い話になる」


 シルヴィンは座りながら向かいを顎で示した。フリードリッヒは警戒しながら腰掛けた。会議終了後、執務室に来るように耳打ちされたのだ。


「同行させる私の部下だが、エドガーを連れて行ってくれ」


 フリードリッヒはまったく予期せぬ申し出に、目をぱちくりさせた。


「エドガー副将ですか?」

「そうだ。彼を知っているな」


 エドガーは裏方任務を専門としていた。敵への工作、諜報活動に長けている男で、非常に重宝されていた。アールファレムはエドガーをいずれ直属とする事も視野にいれていた。


「勿論存じております。ゾレストに潜入させるおつもりですか? 流石にカスパード陣営には顔が割れています。情報収集も得意ですから、役には立つでしょうが」


 フリードリッヒは語尾を濁した。その様な事、シルヴィンが考えない筈がなかった。


「任務はゾレストの内情の調査が主になる。表向きはな」


 怪訝な顔をするフリードリッヒは、シルヴィンの情報を小出しにするやり方に少々苛立たしく思ったが、顔には出さなかった。今までは気にならなかった事が、気に障るようになったみたいだ。これまでフリードリッヒはシルヴィンに対し、特に不満を持った事はなかった。アールファレムの秘密を守る為には、自分の不信感を誰かに気付かれる訳にはいかない。自制心を強くする必要がありそうだった。


「エドガーはゾレストに潜入、モーリッツの家族を救出するのが任務だ。可能であれば内部の切り崩しも行わせるが、そちらはついでだ」

「モーリッツの家族の救出?」


 フリードリッヒは完全に虚をつかれた。


「モーリッツが家族を人質に捕られているのは間違いない。妻だけなら、冷たいようだが、無視できた。しかし三歳児となると話は別だ。政治的にも見殺しにする訳にはいかない。如何なる犠牲を払っても奪還するように命令を出している」

「ルーヴェル閣下はモーリッツを最初から疑っておられました。先程の会議でモーリッツが赦免されたのは、何故か考えていました」

「もしあの場で糾弾すれば家族の話に触れない訳にはいかないだろう。現時点で全面的に軍を動かす訳にはいかん。だが三歳児を見殺しにするなど皆の前で発表する訳にいかない」

「ですが結局こうして救出作戦を行うのです。何故秘密にする必要があるのですか?」

「失敗する可能性が高過ぎるからだ。帝国の権威を守る為だ」


 フリードリッヒは体が震えるのを我慢できなかった。


「閣下はモーリッツの子供を政治的に利用なさるおつもりか!」

「勘違いしないで貰おう。利用したのはカスパードとデュークだ。我々は帝国を守る。どちらを優先すべきかは言うまでもない。言っておくが陛下は今回の件は御存知ない。私とルーヴェル閣下とアルスラーダ閣下の三人で決めた事だ。陛下はお優しい。カスパードすら許そうとなさった」

「でしょうな。シルヴィン閣下をお許しになられたぐらいですから」


 フリードリッヒは遂に我慢しきれなくなった。一歩も引く気もなく、シルヴィンを見据えた。

 シルヴィンは声を上げて笑いだし、フリードリッヒが重ねて糾弾しようとしたのを手で制した。


「笑ってすまない。そう、私は許された。陛下の恩情によってだ。だからと言って、私の罪が消えるわけではない。私は私を許さない。一生かけても償えるとは思っていない。私は今後陛下を害する者全てからお守りする事を誓った。私自身からもだ。陛下がカスパードやデュークごときに貶められるのを見過ごす訳にはいかない」


 シルヴィンは最早笑ってはいなかった。フリードリッヒの鋭い視線を受け止め、真剣な眼差しで見返した。


「モーリッツになんと説明をすれば……」


 フリードリッヒは頭を抱えた。


「そのまま説明すればいい。救出部隊を差し向けるのだから、文句はあるまい」

「しかし、成功確率は低い」

「お主とエドガーが組めば、確率は格段に上がる。フリードリッヒ、成功させる為に出来る事はなんでもしてくれ。上手くいけば、内通者が出るだろう。モーリッツにも勿論協力させろ。内部情報に明るいだろう。先程も言ったが、犠牲は気にしなくていい。全面的にこちらに攻め込むような真似はしないだろう。戦力が違い過ぎるからな」

「必ず成功させます。モーリッツの為にも、陛下の為にもです」

「ああ。任せる」

「実際はエドガーに任せるだけですが。私には待つしかできません」

「それでも我々より出来る事は多い。場合によっては、攻め込んで混乱に乗じて作戦を行ってくれても構わん。作戦終了後、速やかに撤収してくれればいい」

「危険が大きすぎます」

「極端な例だ。陽動作戦を同時に行い、注意を分散させるんだ。現場の判断は任せる。何があろうと責任は全て私がとる。勿論手柄を横取りはしない。一応、パルナン近郊には兵を待機させておく。いつでも、救援に向かえるよう手配はする」

「……ハリーを止める必要があります。あいつはモーリッツの家族の事を気に掛けていました」

「マルティンにはよく言い含めておく。苦労するだろうがな」


 二人はマルティンに同情した。春を一番待ち望むのは、いったい誰だろうか。


「閣下、カスパードの事はよろしいのですか?」


 シルヴィンはフリードリッヒを面白そうな表情で眺めた。


「私が弟を討つのに、良心の呵責を覚えると思うか?」

「口で仰られるほど、割り切っておられるとは思えません」


 フリードリッヒはどこまでも油断の出来ない男だった。シルヴィンは目の前の頼もしい筈の部下を苦々しく思った。


「春には本格的に討伐戦を行う。会議でも言ったが先鋒は二人で競いあってもらう。だがカスパードの首は残してくれ。あいつは私が殺す」


 シルヴィンは淡々と言ったが、内心がどうかまではフリードリッヒには分かりかねた。


「話は以上ですか?」


 フリードリッヒは腰を浮かせかけたが、シルヴィンは制した。


「まだ聞きたい事がある。陛下の秘密にいつ気付いた? 他に気付いた者はいそうか?」


 フリードリッヒは再び腰を落ち着け、記憶を探った。


「はっきりとは覚えていません。即位なさる前だった筈です。勿論、誰にも洩らしていません。他に気付いた者がいるかは、私には分かりません。我々の様に黙っている者がいる可能性はあります」

「確かにな。いずれ陛下は公表なさるおつもりだ。お主の考えを聞きたい」


 フリードリッヒは暫く考え込んだが、結論は一つしかなかった。


「万一の事を考えると、その方がいいでしょうな」

「皆が受け入れると思うか?」

「寧ろ、より忠義を深める者が増えると思います。我々のようにね」

「ほう、先程は一緒にするなと言っていなかったか?」


 シルヴィンは面白がり、本心を尋ねた。


「本質は違うと断言します。私は不器用なんです。もし陛下が男であれば、恋人を作るのに躊躇いはなかったと思います。ですが陛下が女性であれば、私にとっての最優先の女性は勿論陛下です。それでは恋人に対して失礼でしょう」


 本心から信じている様だった。


「それが恋慕ではないと何故言い切れる? 理由をつけて自分の思いから逃げているだけにしか思えんな」

「或いは閣下が正しいかもしれません。ですが陛下に対して、大それた願望を抱いた事はありません。無意識に封印していたのかも知れませんが、今後溢れてくる事はありません」

「私は既に失敗したが、お主なら可能だろうな」


「冷たい水の中から、陛下を引き揚げた時、冷たい御体を抱き上げました。シルヴィン閣下、あのような陛下を二度と見たくありません。約束して下さいますか?」

「二度と信頼を裏切らないと陛下にお誓い申し上げた。ルーヴェル閣下、アルスラーダ閣下、そしてお主が私を見張っている事を、常に心掛けておく」


 フリードリッヒはシルヴィンを信用する事にした。


「陛下がお許しになられた以上、私がこれ以上申し上げる事はありません。もう一度閣下を信じる事にします」


 フリードリッヒは頭を下げると、立ち上がった。

 シルヴィンは握手を求めるか迷ったがやめる事にした。柄でもないと自分でも思ったからだ。


「これまでこの国を導いてこられたのは陛下です。性別によって功績が変わる筈がありません。それを理解出来ない者が幹部にいるとは思えません。ですが今は時期が悪いと思われます」

「カスパードの問題が片付いてからになる。その時は協力をして欲しい」

「勿論です」


 簡潔に答えると、フリードリッヒは敬礼して退出した。

 シルヴィンはフリードリッヒの出ていった扉を眺めながら、暫し物思いに耽った。

 この戦いで何人の兵士が亡くなるかを思うと、溜め息しか出なかった。しかも内戦である以上、どちらもガルフォン人なのだから勝っても喜べないのである。犠牲を少なくする為には、内部から瓦解してくれるのが一番だった。

 シルヴィンにとって一番の気掛かりは、皇帝が本当に出陣しないのかという事だった。今までアールファレムが安全な後方にいた事など、一度もなかった。常に陣頭指揮をとっていた。総大将としては致命的ともいえたが、頑として譲らなかった。

 今回が皇帝に即位してから初の戦になる。内戦だから忌避したのか? アールファレムの性分から考えると、後から参戦してくる可能性が高い。油断しない方が良さそうだった。

 そもそもアールファレムが優しいのは部下に対してであって、温和な人柄かといえばそうではなかった。その様な人物が乱世で生き残れる訳がなかった。圧倒的なまでの自信、優れた戦略眼で勝ち残り皇帝にまで伸し上がったのだ。獅子帝の渾名は、決して外見のみでつけられた訳ではない。


 夕刻シルヴィンの執務室をルーヴェルが訪れた。シルヴィンは隣の応接室にいるらしく、兵士に案内され座ってシルヴィンの戻りを待つことにした。お茶を飲み終えた頃、シルヴィンがドメルを伴い、戻ってきた。


「忙しそうなところ、すまない」


 ルーヴェルは腰を浮かせかけたが、シルヴィンは手振りで押し留めた。


「此方こそ待たせたようですまない。ドメル、今日はもう下がっていい」

「ありがとうございます。では失礼します」


 ドメルは敬礼をすると、ルーヴェルに会釈をして退室した。それを見届けると、シルヴィンはルーヴェルの向かいに座った。


「どうした? 首尾を確認しにきたのか? 今、フリードリッヒと部下を交えて、打ち合わせしていたところだ。モーリッツに救出部隊を出す事を伝えると、やっと吐いたぞ」


 シルヴィンはやれやれと肩を竦めた。ルーヴェルはモーリッツに同情した。


「気の毒な男だ。あの者程、間者に向かない人間はいないからな。甘いからカスパードの助命まで行う始末だ。いったい何をしに戻ってきたのやら。優先順位が子供なのか、カスパードなのかすら決めかねているのだから、こちらがひやひやしたぞ。どうやら概ね順調のようだな」

「ああ、既に先発部隊が出発したのは聞いているな?」

「ああ、アルファ様もお見送りなさったようだな。私は部屋から出る余裕すらなかった。戦があろうと、通常業務がなくなる訳じゃないからな」

「まったくだ。陛下からは激励の御言葉も頂戴した。壮行会がなければ、ハリーまで出発する勢いだったぞ」

「ははは、目に浮かぶな。しかしそれでは本末転倒だ。壮行会は、命の恩人のハリーに対しての褒美らしいからな」

「成る程な。もとを正せば私が出立を遅らせる原因だった訳か。機嫌が悪い筈の陛下が壮行会など、おかしいとは思ったんだ」

「そういう事だ。この後予定はあるのか。よければ今晩どうだ。飲み相手になって欲しい」

「喜んで付き合うさ。場所はどうする? 誰に聞かれるか分からんから、外では不味いな。家まで戻るのも面倒だ。宮殿内でいいか?」

「そうしよう。お主の部屋の方が良さそうだな」


 宮殿には、幹部全員に執務室は勿論、私室も用意されていた。ルーヴェルの私室は、アールファレムの私室区域に近すぎた。アールファレムには内緒の話がしたいので、なるべくばれないようにしたかった。


 女官が酒と料理を運び込み、二人は杯を掲げ、乾杯した。

 ルーヴェルは杯を傾けながら、ぼやいた。


「モーリッツの事だが、我々の企みなどアルファ様には、お見通しの様子だった」

「だろうな。あの御方を騙せる訳がない。しかし万一を考えれば、陛下の体面を傷付ける訳にはいかない。知らない振りをしてもらうしかない」


「ああ、見逃してくれた。ただ釘は刺されたがな」


 シルヴィンは苦々しく笑った。


「成功できればいいが、こればかりはな。簡単にはいかんだろう」

「冷たいようだが、いっそ死んでくれてた方がやり易かったな」


 ルーヴェルのこの発言には、シルヴィンは驚かずにはいられなかった。


「お主がその様な事を言うとはな。お優しい宰相閣下らしくない」

「何の責任もない立場なら、同情するだけでもいいさ。たまには愚痴をこぼさせてくれ。アルファ様には聞かせられんからな」

「だろうな。私とて内心は同じだ。もし簡単に殺されていたら、復讐に燃えるモーリッツと、御人好しの我が部下達が春まで待たずに殲滅してくれただろうさ。だからこそデュークは切り札に持ってきたのだからな。簡単に手放さんだろう。三歳児を人質など厄介極まりない。やることが悪辣過ぎる」

「しかしカスパードは何をしているのか? ここまでデュークを放置するのは、異常過ぎる」

「彼奴に正常な判断が残っていないかもしれん。もし全てがあの馬鹿の命令だとしたら、既に狂っているのかも知れん」

「女を殺すのも、幼児を人質に部下を脅すのも、カスパードがやったというのか? 馬鹿な!」

「陛下命の彼奴が反逆した時点で、既に異常なんだ。……まぁ実際はデュークの犯行だろうさ。カスパードは判断能力のないまま、追認したというところじゃないかな。もう脱け殻かも知れん」


 ルーヴェルは複雑な心境であろうシルヴィンに同情したが、シルヴィンは笑って顔の前で手を振って否定した。


「一番可哀想なのは、モーリッツだろうさ。私はカスパードを助けたいなど、一度も思った事はない。私の手で殺す」

「何があったのか聞いていいか?」

「期待に添えなくて悪いが、我々兄弟には何もない。……残念ながら血は繋がっているぞ。彼奴が勝手に対抗心を燃やしているだけで、私は特に興味はない」


 本当に興味がなければ、自分で殺すなどと言う筈がないが、指摘するほどルーヴェルも馬鹿ではなかった。シルヴィンの空いたグラスに酒を注いだ。


「身内の不始末は、自分でけりをつけるという訳か。兄貴も大変だな」

「そちらこそ、弟には手を焼いているようじゃないか」


 にやにやしながらシルヴィンはからかった。


「可愛い妹もいるからな。そちらよりは恵まれているさ」


 ルーヴェルの返答に、シルヴィンは敗北を認めざるをえなかった。


「恵まれ過ぎだ。羨ましすぎる」


 本気で悔しがるシルヴィンに、ルーヴェルは笑いながらであったが忠告した。


「おいおい。もう騒動は起こさないでくれよ。ただでさえアルスが遠慮しなくなって、秘密がばれないか、ひやひやしているんだからな」

「私のせいだな」


 シルヴィンは自嘲気味に笑ったが、ルーヴェルは睨み付けた。


「笑い事じゃないぞ」

「だが陛下はその方がお喜びだろう。だったら我々は二人をお守りするだけだ。アルスラーダ閣下にはもう少し成長して頂きたいところだがな」


 シルヴィンはどうやら一回り成長したらしい。ルーヴェルとしては、それが強がりでない事を願うばかりだった。もし自分が女なら、アルスラーダではなくシルヴィンを選ぶだろう。アールファレムの幸せの為には、シルヴィンの方を薦めたいところだったが、アールファレムの気持ちがアルスラーダにあるのは、誰よりも知っていた。なんとしてもアルスラーダには成長してもらう必要があった。


「陛下は本当に討伐戦に参加なさらないおつもりなのか?」


 シルヴィンは昼間の疑問をルーヴェルにぶつけた。


「それは私も気になっていた。アルスを参謀につけたのも解せない」


 シルヴィンはこの二日間、色々有りすぎて、その事をすっかり忘れていた。


「そう言えば、その問題もあったな。相談はなかったのか?」

「いや恐らくアルスも知らなかった筈だ。アルファ様の独断だ。カスパードの事で思うところがあったのかも知れんな。次がないのはお主だけではない。今回アルスを庇った事は皇帝としての矜持を曲げたに等しい。或いはお主に対するよりも、根は深いかも知れん。アルスに試練を与えるつもりなのかもな。あれを決めた時点でお主との問題はおきていなかったからな。不仲ではなかっただろう」


「お互いに無関心といったところだな。今では殺したいほど憎まれているがね。私が全面的に悪いからな。協力は惜しまぬつもりだ。もっとも参謀としては優秀な方だからな。頼りにするとしよう」

「よろしく頼む。それでアルファ様が出陣なさるかだが、さっぱり分からん」

「お主にすら、お考えは打ち明けて下さらないか?」

「まぁ聞けば答えは返ってくるかもしれんが、シルヴィン、そんなに焦らなくてもいいだろう。最低でも数ヶ月は先の話だ。それまでカスパードがゾレストを維持できない可能性もある」

「そうだな」

「まぁはっきりしている事もある。モーリッツの子供にもしもの事があった場合、アルファ様は必ず御自身の手で始末なさる」


 その様な事態に成らない事を祈るばかりだった。

 二人は雑談を楽しみながら、親しく酒を酌み交わした。夜更け過ぎにシルヴィンはルーヴェルを感心したように眺めながら言った。


「しかしお主、まったく酔わないな」


 シルヴィンは、周囲に転がる八本の酒瓶を見やった。


「自分だって涼しい顔をしている癖によく言うな」


 ルーヴェルは笑ったが、シルヴィンは否定した。


「いや、私はそろそろ限界だ。顔に出ないだけでかなりきているさ」


 嘘ではなく、かなり酔いが回っているのが自分でも分かった。


「そうか。そろそろお暇した方がよさそうだな。今夜は楽しかった」

「此方こそ楽しい酒だった。また呑もう。お主は明日は陛下の酒量を管理するのに忙しくなるだろうがな」


 にやりと笑うシルヴィンだが、立ち上がりルーヴェルと握手をすると、足元をふらつかせた。


「お主はどうやら酒に弱いみたいだな」


 ルーヴェルは皮肉な笑みを浮かべながら、きっちり敬礼をして、真っ直ぐな足取りで退室していった。


「化け物か」


 だらしなく長椅子に寝そべり呟いた。瞼を閉じると、ふわふわといい気持ちになり、そのまま眠りにおちてしまった。


 翌朝、何故か寝台で目覚めたシルヴィンは片付けられた応接室を不思議に思い、女官を呼び出し尋ねた。


「昨夜の記憶がないのだ私が片付けるよう手配したのか?」

「ルーヴェル様が手配され、兵士に閣下を寝台までお運びするように、お命じになられました。ルーヴェル様は見届けられてから、お部屋にお戻りになられました」


 顔を赤らめた女官は、何故か恥ずかしそうに下がっていった。

 不思議そうに首を捻るシルヴィンだったが、やがて納得した。今の女官がルーヴェル好みの顔立ちをしており、なおかつ胸も大きかったからだ。


「本当に化け物だな」


 宰相閣下は昨夜も活動的だったようだ。シルヴィンは呆れを通り越して、感心するしかなかった。

 まだ酒が残っているらしく、少し痛む頭を押さえながら、大浴場に向かうシルヴィンだった。


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