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怪 談   作者: 冬月 真人
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【閉店作業】


バスガイドの仕事を辞めてから、涼子は学生時代のバイト先の飲食店でアルバイトをしている。

今では学生時代を合わせると店長よりも長い社歴になる。

『社員に…』という話もあったが閉店作業が嫌なので断っている。

涼子が閉店作業を避ける理由は、ある日の出来事にあった。


インフルエンザで早退した店長の代わりにレジ締めをしている所へ、本部から閉店作業をする為に社員がやって来た。

「ああ沢木さん、レジ締めやってくれてたんですね。ありがとうございます。」

社員はそう言うとレジ締めを涼子に任せて戸締まり等の作業に店の奥へと入って行った。


レジ締めの作業が終わった涼子はさっきから人の気配のする厨房を覗いた。

(あの人、何をしてるのかしら?)

閉店作業の重要な項目にタレのチェックがある。

店の味を守るために必要な作業で、基本はレクチャーを受けた店長が行う仕事だ。

本部の人間は店長から上がるのが通例なので、この社員もタレのチェックをしているのだろう。

だがそれにしても時間がかかっている。

『どうしましたか?』

そう声を掛けようとして息を飲んだ。

見たことのない人がタレをチェックしている。

驚いて思わず隠れてしまったが、恐る恐るもう一度覗き見るとそこには誰も居なかった。


その翌日、訃報が入った。

店の看板レシピを作った元専務が亡くなった為に、早番の人はお通夜に。

遅番の人は翌日の葬儀に参列することとなった。


涼子は葬儀に参列した。

そしてそこで、あの晩に見た男の人が写真の中では微笑んでいた。

涼子は心から手を合わせてお焼香を上げた。



正体を知れば怖くは無いが、また会いたくは無いので社員の話は断っている。




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