【銀玉人生・後編】
「なぁ剛、今入ってる現場ってあのパチ屋跡なのか?」
透は妹の旦那の剛に言った。
「そうなんですよ。ヤバイですよ、あの現場」
「なんだか随分と進んでないけど、アレのせいか?」
透は両手をだらしなく胸元でぶらぶらさせた。
「何人かの作業員が見たせいで、現場は夕方5時には解散ですよ。ボクも地下でおかしなのは見ましたからね」
「毎日がノー残業デーか」
透が笑うと「カネにならなくて参りますよ」と剛は苦笑いを浮かべた。
「どんなのが何処に出るんだ?」
興味本位のみの透は剛を質問攻めにする。
「1番多く出るのはトイレですね。あとはボクの見た地下とか…最初の頃、残業を普通にしていた時にはホール全般で見掛けてましたよ」
「幽霊ってどうして夜になると動き出すのかなぁ。あいつらカブトムシか暴走族の親戚なのか」
「たしかにそうですねぇ。地下も薄暗いですし、あそこのトイレって窓がありませんし」
「そういや最近のパチ屋のトイレって窓が無いんじゃね?」
「なんか意味があるんですかね?」
「わからんなぁ…っつーか話を戻すけど、剛はどんなのを見たんだ?」
透は本題に戻ると身を乗り出した。
「いやぁ、ボクが見たのは人影ですね。地下に降りたら人影が見えたんで声を掛けたんですけど返事が無かったんです。そのまま奥に行ったけど誰にも会わなかったんですよね。細長い地下なんです。すれ違わなければ出て行けないんですよ」
「たまらんね」
透は身震いして見せた。
「はい。結局地下の作業はしないで出て来ましたもの。今度投光器全開でやります」
「それ、スゴく暑くならない?暑さを超えて熱いでしょ」
「オバケに会うよりマシです」
そんな紆余曲折を経てオープンした新店は3ヶ月で撤退した。
それもそうだ。
連日のように得体の知れない何かが店を歩き回っているのだから。
客足はオープン3日目には引いていた。
このいわくつき物件は1年後に回転寿し屋になった。
初めてここにパチンコ屋以外が店を構えることとなった。
以来何故か幽霊の目撃は無い。
連日賑わう人気店。
この幽霊はパチンコ以外に興味が無いのかもしれない。




