【銀玉人生・前編】
昼と夜にはひっきりなしに車が出入りする回転寿し屋。
出来てからもう10年弱。
とても繁盛している様子に、彼は何処に消えたのだろうかと時々思う。
この回転寿し屋はパチンコ屋を改装して建てられていた。
パチンコ屋のA店が潰れ、その数年後にB店が改装して開店。
さらに倒産してC店が出店した。
開店して半年でC店が店を閉めた後、皆の予想の斜め上を行くカタチで回転寿し屋になった。
彼は最初の店、A店の時代に住みついた。
いや、棲みついた。
その日、いつものように閉店時間を間近に控えた店内は人もまばら。
日中の鉄火場が嘘のようだ。
蛍の光に乗せて翌日のイベントを謳うスタッフのMCが流れる。
勝った客は顔を上気させて明日の台の予想を立て、負けた客は恨めしげに景品カウンターを睨みながら店を出る。
いつもと変わらない閉店風景になるはずだった今日を一変させたのは悲鳴だった。
悲鳴の主は男子トイレから這い出るようにホールに来ると、駆け付けた店員と客に「死んでる!死んでる!首吊り」と叫んだ。
5kmと離れていない警察署から数台のパトカーが数分で到着した。
それに遅れて到着した救急車は搬送者無しで引き返す。
警察からの事情聴取で足止めされた閉店に居合わせた客達は、店からの口止めに一律で10万円を渡されていた。
十数人の客に手渡した100万を超える口止め料だったが、翌日には近隣の街にまで話は広まっていた。
そして数日後には『出た』『見た』との風評が拡散していった。
やがて客足が遠のき、途絶え、店は閉店を余儀なくされた。
それから2、3年後。
居抜きで購入したB店がオープン。
『見た』と言う客の噂に加えて、閉店後のホールで『見てしまった』店員達が次々に辞めてしまい、良店にも関わらず閉店してしまった、
そうして買い手も借り手もつかないまま10年近く。
荒れ放題だったこの店に、新たなオーナーが現れた。
やはりパチンコ店。
だがこの改装工事、遅々として進まなかった。




