【一晩中・中編】
音が消えたのは明け方の4時頃だっただろうか。
透は結局朝まで聞いてしまった。
それからようやく眠りに就いて、起きた(起こされた)のは7時半。
店の内線が鳴った。
朝食の支度が出来たから来るようにとの連絡。
伯父は伯母のガンが分かってからは家事を半分以上。
ここ10年に限って言えば9割方をこなしていた。
美容院の仕事。
従業員への技術指導。
理美容協会の会合。
鍼灸師国家資格の勉強。
合格後は鍼灸院の仕事。
伯母の通院の送迎。
家事全般。
まるでスーパーマンだ。
そんな伯父が作る料理は信じられない位に手が込んでいる。
不謹慎ながら透は少しワクワクしながら階段を上がった。
「おはようございます」
玄関を開けて居間へと向かうとテーブルの上には沢山の料理が並んでいた。
美味しそうな料理の数々がプラスチックの大皿に盛り付けてある。
そう言えば道路向かいは弁当屋さんだった。
伯父がこの街に美容院をオープンさせて以来40年ほどの付き合い。
なるほど。
お気遣いを頂いたらしい。
少しテンションの下がった透だったが、一口食べて驚いた。
弁当屋のクオリティではない。
時代の流れでFC加入したが、商売を絡めていない今回の料理は高級店の味。
そしてよく見るとコンビニになった元酒屋さんからは大量の飲料水。
他にも様々な商店からの差し入れが周りを埋め尽くしていた。
今更ながらに亡くなった伯母がこの街の人に愛されていたのだと思う透だった。
そんな様子にとてもじゃないが、昨夜の音の話は出来なかった。
それを話すことで甥である自分が伯母の死を茶化してしまうような気がして言い出すことが出来なかった。




