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怪 談   作者: 冬月 真人
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【帰省】


透達の祖父の家は二世帯住宅だ。

和恵の実兄の慎一と妻の泰子が二階に住んでいる。

慎一の長男は独立して結婚、次男は20代で早逝した。

自殺だった。

実家と疎遠だった長男は弟の死から多少は気を遣っているのか、たまにではあるが孫を預けに来るようになった。

元来子供好きの慎一。

それが孫ならば可愛がり方もひとしおだ。


ある朝、和恵は子供のお菓子を持って二階に上がった。

慎一シン、秀弥はどこだい?」

和恵の言葉に慎一は訝しげな顔をした。

「いや、秀弥は来てないぞ」

「ウソ!それじゃぁ、夕べは何か模様替えでもして……はいないみたいね」

和恵は周りを見回して自己完結した。

「どうしたのよ」

事態を飲み込めない慎一が尋ねる。

「いや、夕べはしばらく天井がドタバタしていたから秀弥でも来て走り回ってるのかと思ったのよ」

「いや、俺はまた病気が調子悪くて寝てたし、泰子は夜勤でまだ帰ってないんだよな」



「芳樹かしらね」

和恵は透にそう言った。

慎一の前では口に出来ない名前。

亡くなった次男坊の名だった。

「そんなワケ無いだろ。幽霊の帰省なんて盆だけにしてくれ」

透は否定的だ。

基本的に透はオカルトなんてものは信じていない。

オカルトというものは科学が追いついていない部分の話で、人類の叡智はいつしかオカルトを駆逐すると考える類いの人種だ。

逆説的に哲学っぽいことを言えば、それは暗にオカルトを肯定していることとなるのだが、幸いにしてそこに気付いているのは今のところ透だけだった。


「あら、透くん。こんにちは」

停めたバイクにカバーを掛けようと外に出ると泰子が出勤する所だった。

今夜は祖父の家に泊まる。

「こんにちは、おばさん。これからですか?」

「今週はずっと夜勤なの」

「大変ですね。いってらっしゃい、頑張って」

そんな会話を交わして見送った後、今度はカバーを掛けて家に戻ろうとした時に慎一が二階の玄関に鍵を掛けて出てきた。

「あら、パチンコ?」

ニヤニヤと笑って声を掛けた透に「今日は夜勤」と疲れた表情の慎一。

「あら、おじさんも」

「何もなければ朝までうたた寝かな」

老人ホームの管理人をしている慎一は週に四日の夜番をしている。

毎日やると貰う年金が減るから週四の出勤にセーブしている。

「ゆっくり出来たらいいね。いってらっしゃい」

そう言って再び透は見送りをした。


その夜。

ドスドスと天井が鳴りだした。

明らかに人が歩き回る音。

それも故意に足音を立てて歩くようなそんな響き方だ。

「母さん」

透は和恵の目を見ると天井を見上げた。

和恵も頷く。

「これよ」

「嘘みたいな話だな」

「いくらなんでもこんな風に歩いたりしないでしょ」

和恵が(母さんの言う通りでしょ)と言わんばかりの表情を浮かべる。

「いや、それ以前に二階は留守だよ。夕方に二人を見送ったもの」

透はワケが分からないとばかりのジェスチャーを見せた。

外国人のようなオーバーな仕草でおどけた。

とりあえずそうでもしないと一応の答えを求めそうになるから。

これは『絶対に確認には行かない』という意思表示でもある。

「帰省の邪魔なんて野暮はしないよ」

透はそう言って寝る準備を始めた。






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