【ボクのせいでした】
近藤と恐怖の夜を体験した納品先。
あれから近藤と一緒になることはなく、深夜の納品も平和だった。
ある夜。
いつものように箱の観音扉を開けてホームにトラックを接車させた。
倉庫の鍵を開けて、接車した場所のシャッターを開けると猫が居た。
観音扉を開けたトラックの荷台に黒い仔猫。
(冗談じゃない。倉庫の中に入られて商品を破損されたら俺の責任問題だ)
透は仔猫を追い払うと改めて納品を始めた。
が、数回往復するとまた仔猫が居た。
(やれやれ)
ガッカリする透。
(可哀想だけど・・・)
透は倉庫のシャッターを閉じると意を決して仔猫を威嚇しながら追い回した。
その甲斐あって仔猫は何処かに逃げて行った。
……ハズだったのに、数分後にはまた荷台に戻っている。
納品が遅々として進まないことに苛立った透は本気で仔猫を追い回した。
そうして仔猫はようやく本当に姿を消した。
それが本日最大の間違いだったと透が気付くのはその少し後のことだった。
「アレ?」
奥のスイングドアが揺れたのを見た透は思わず声を出した。
スイングドアに繋がる部屋のドアを開閉した時の気圧や風圧的なもので動くことはよくあるが、今は透ひとりだし、透は何もしていない。
首を傾げた。
それでも心は強く持つ。
納品はあと少し。
(幽霊だろうが何だろうが俺の仕事の邪魔はさせない)
そう思った自分を(なんか今のカッコいい)と思う透だった。
そして納品が終わった。
この場所には紐を引いて開閉する電動のドアがある。
透は紐を引いてドアを閉じた。
閉まるのをしっかりと見た。
その数秒後、振り返るとドアが空いていた。
反射的にもう一度紐を引いて、シャッターを下ろしてトラックに逃げ込んだ。
幸いにして、今日は別便が後から来る。
(それが来たら納品の手伝いをしよう)
(そして一緒に戸締りをしよう)
(いいの。帰りが遅くなってもいいの)
完璧に邪魔をされた透だったがやはり恐怖には勝てない。
(それにしても…)
透はあの仔猫のことを考えていた。
(普通、1度追い回されたら2度と来ないよな)
(2年位来てるけど、虫と鳩以外の動物って初めてだなぁ)
(もしかしたらあの猫は護りに来てくれたのかもしれない)
ぼんやりと考えていたその時。
「あっ……」
透は短く小さく叫んだ。
そして笑った。
笑うしかなかった。
数メートル先のセンサーライト。
何も無いのに灯りが点いた。
乾いた笑いが車内にこぼれた。
(どうやらボクのせいでした)
もう笑うしかなかった。




