【キミのせいかな?】
運転手稼業をしていると真夜中に納品なんてこともよくある話。
その納品先は定期の仕事で、顧客から鍵を預かっている。
先輩社員から色々と噂を聞く。
所謂『出る』と。
が、もう何度か行っているが、何も感じない。
(まあ、裏も墓地だしな。後輩を脅かそうっていう作り話だな)
透はそう確信していた。
そんなある日。
その日は物量が多く、10tトラック2台の手配。
透と同僚の近藤が配送に向かった。
無事に納品を終えて、倉庫内を出口へと歩きながら近藤と話をしていた。
その時、背後の奥の方で『ドン』と音が鳴った。
一瞬ビクッと立ち止まったが、ふたり一目散に鍵を掛けて逃げ去った。
それからまた透はここへひとりで納品に来ていたが、変わったことは何も無い。
そしてまた近藤と一緒になった日。
「近ちゃん、この間はお互いビビり過ぎたね」
納品を終えた透が前回の醜態を笑った。
「いやぁ、あれは焦るって」
近藤も苦笑い。
前回と同じシチュエーション。
ふたりは出口へ向かって歩いていた。
そして再び『ドン』
息が止まりそうなほどに驚いた。
が、透も近藤も平静を装う。
演歌の歌詞ではないが『男度胸の転がし稼業』
ハンドル持ちがいちいちビビっちゃいられない。
透はあえてゆっくりとドアを閉めて鍵を掛けた。
「っつーか、マジ焦ったぁ!」
ドアから離れて透が叫んだ。
「何だよアレ?」
近藤も目を丸くして倉庫を見た。
「俺ひとりだと何も無いんだけどね。近ちゃんに用でもあるんじゃないの」
透は意地悪い声で茶化した。
「マジで、透くんの時は何も無いの?」
「近ちゃんのせいだな」
そう言って笑おうとしたのと同時。
ドアのすぐ向こうくらいで『ガシャン』と音が鳴った。
(近付いてる!)
ふたりはそう悟って一目散に逃げ去った。
結局前回と同じ結果となった。
(キミのせいかな、近ちゃん)
走るトラック。
街の明かりが見えた頃、透は本気でそう思っていた。




