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怪 談   作者: 冬月 真人
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【霊山(前編)】



北浦翔は透の無二の親友だ。

透は翔を疑ったことが無い。

何故なら翔は透に嘘をついたことも裏切ったことも無いからだ。

そんな翔の言葉なら、蟻を象だと言っても透はそれを信じるだろう。

それは翔がそんな嘘をつくことは無いという透なりの信頼の証だ。

絶対的信頼を寄せるエピソードの数々はまた別の機会の物語。

今日はそんな翔が透に語ってくれた恐怖の出来事を……


「透、間違ってもT山には行っちゃダメだよ」

東京から故郷へUターンした透に翔はそう忠告した。

運転免許を取ってすぐに上京した透は北海道の各地をドライブするのがマイブームだった。

休みの日は長距離。

仕事が早く終わった日は地元の各スポット。

愛車のミニを駆って北海道を満喫していた。

そんな透を案じての言葉だった。

「T山?何処にあるの?」

「あの山だよ」

翔が指差した先には沢山の山。

そこには山地と山脈がそびえていた。

「どれ?」

指の先を辿ってもサッパリ分からない。

「奥の山脈のずっと手前。なんかマッターホルンっぽい山頂の山だよ」

なるほど良い例えだ。

「あれがT山…でもどうして?」

「言わなきゃダメかい?」

「出来れば知りたい」

透は言い淀む翔にしつこく食いついて話を聞き出した。

「本当は思い出したくも無いんだよ」

そう言った翔の表情は酷く沈んでいた。

申し訳ないとは思いながらも好奇心が勝るのは透の良くない癖。

翔の次の言葉をジッと待った。

「あれは1年前の話……」


仕事終わりの土曜の夜。

翔は高校時代の同級生、純一、秀樹、佑樹と車を走らせていた。

4人でそれぞれに4台。

若さにまかせた荒い運転が楽しい年頃。

もっと気ままに走らせられる郊外へと、気が付けば辿り着いていた。

誰が先頭だっただろうか。

郊外から田舎道、そして山道へと車は向かう。

ヘアピンや連続カーブ。

タイヤを鳴らして前のテールランプを追った。

暫らく走ると舗装路面が砂利道に変わり、すぐに行き止まりになった。

「なんだよここ」

「うわっ、気持ち悪りいな」

「マジかよ、アレ」

4人が車から降りるとそこには朱い鳥居。

そして無礼な客を睨みつけるように鎮座する狛犬が居た。

「……?なんだかここ、おかしくないか」

翔は違和感を抱いていた。

が、それはずっと分からないまま。

日本人として当たり前のそれを目の前に、日本人として不自然な光景を見ている翔。

この話を透にするまでそれは腑に落ちないまま胸にあった。


黙って話を聞いていた透が口をはさんだ。

「翔、それはあり得ない。神社に鳥居と狛犬は当然だけど『お地蔵さま』はあり得ない」

「ああ!」

翔が目を丸くして叫んだ。

そう。

そこの神社には何故かお地蔵さまが立っていたと言うのだ。

透は話を続けるよう促すと再び黙った。


鳥居の前の広場。

翔達が車を停めた端に十数体のお地蔵さまが立っていた。

佑樹が使い捨てカメラを手にすると、翔と秀樹がお地蔵さまの前に座った。

そしてあろうことか純一はお地蔵さまに跨ってピースサイン。

佑樹は大笑いしながらシャッターを押した。

4人は鳥居や狛犬の前でも写真を撮った。

大声で騒ぎながら境内を散策して回った。

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