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怪 談   作者: 冬月 真人
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【蒸発】



山脈を貫く国道の長いトンネル。

透が運転するトラックのミラーに後続車のライトが写った。

点から光芒へ。

そしてライトの形状が分かるまでに接近してくるには10秒強。

(ずいぶん飛ばしてくるなぁ)

丸いヘッドライトの乗用車が真後ろに隠れる。

こうなるとトラックの大きな箱のせいで車の姿はまったく見えない。

横に広がり漏れる明かりだけが乗用車の存在を示していた。

(抜いてくるかな?)

透の経験上、このテの接近の仕方をするドライバーはトンネルだろうが追禁だろうが、はたまたカーブの途中だろうがお構いなしに追い越して行く。

対向車にブレーキをかけさてまで行く自殺志願者のようなドライバーを目撃することもしばしば。

そんな連中に巻き込まれて免許や経歴にキズがつくのはまっぴら御免だ。

透はミラーをこまめにチェックしながらドライバーの暴挙に備えた。

……が、意外にお行儀良かったらしくそのままトンネルを通過。

いささか拍子抜けした瞬間。

トンネルの出口、渓谷に架かるヘアピンカーブの橋で乗用車が追い越しを仕掛けて行った。

「えっ!?」

驚いて思わず声が出た。

抜かれたことにでは無い。

その乗用車のヘッドライトライトの形は長方形だった。


真後ろに居た丸目の乗用車は何処に消えたのだろうか?



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