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怪 談   作者: 冬月 真人
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【キミだけしか見えない】


(マジかよ!)

中央分離帯の点滅する黄色いランプの機械の裏に警備員が居た。

ヘルメットを被って立っていた。

深夜3時の国道。

交通誘導をするワケでも無く立っていた。

(どこの警備会社だ?)

辺りを見回すが乗って来たと思わしい車は無い。

(なんかキモチワルイ)

そう思った瞬間に携帯が鳴った。

飛び上がる位に驚いたが遅刻した同僚からだった。

『ゴメン、ゴメン。15分後ろで追っかけてるから』

「了解ですよ。あっ、そうそう!今さっき驚いたんだけど、中央分離帯の所に警備員が立ってるから気を付けてね」

『何処の?』

「昨日から開通したバイパスの合流だよ。きっと下り車線の対面共用が解除になったから、逆走防止の為に立ってるんじゃないのかな?」

『こんな時間に?』

「こんな時間だからじゃないの?」


その数時間後、荷積み場所で会った同僚は「警備員、居なかったよ」と透に言った。



その夜は道東へ向かっていた。

深夜1時。

セブンイレブンの灯りに別れを告げるとそこから先は人里離れた山道。

最初に辿り着く集落は60km先。

歩道も無くなり狭い路肩とガードロープが続く。

ここからは人間よりも野生動物の飛び出しに注意するエリア。

鹿に直撃すればたとえ10tトラックと言えども走行不能に陥ることもある。

透の哨戒範囲は路肩よりも路外の草むらに重点がシフトする。

ヘッドライトに光る鹿の目にどれだけ早く気付くかが勝負だった。


最初の登り坂の頂点の先。

路肩が妙に暗い。

『あり得ない』

そう思うのは安全上好ましくない。

だが正直あり得ないと思い込んでる自分が居た。

とっさに右にハンドルを切った。

センターラインを割って走るトラック。

人が居たのだ。

暗闇を照らしきれない時、ヘッドライトは障害物を黒く浮き上がらせる。

だから路肩が不自然に暗かった。

透は右ミラーと助手席の窓と安全窓から路肩を見た。

黒っぽい服装でリュックのような物を背負ったオッサンが杖をついて歩いていた。

本当はオッサンかどうかは顔を見ていないので分からない。

でも透は何故かオッサンだと思っていた。

(こりゃぁ危ないな)

透はあと移動のトラックにレポートを送ろうと考えて電話をした。

聞けばセブンイレブンを通過したと言っている。

もう近い。

透はオッサンの話を伝えて警戒を呼び掛けた。

この先は曲がり角も脇道も民家も無い。

ニアミスは必至だ。


その後、納品先で会った同僚は「誰も居なかったけど……」と透に言った。



『キミだけしか見えない』

そんなロマンチックな言葉なら良いが、透の場合は『キミだけにしか見えない』だった。





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