【アイコン】
出掛けたついでに実家に寄った。
10kmと離れていないが数ヶ月ぶりだった。
勝手に上がり込むと実家住まいの妹、涼子が居た。
「あら久しぶり」
(我が妹ながら他人行儀な奴だ)
その他人行儀な妹は勝手に冷蔵庫を漁る透に夕べの奇妙な出来事を勝手に話し始めた。
「私ね、話しちゃったの」
「話すのはこれからだろ」
透は話の腰を折ろうと挑んだが妹の腰は強かった。
「幽霊と話したのよ」
「は?」
どこのオカルトサークルの降霊会かとツッコミを入れようかと考えたが話が進まなくなるのでやめた。
深夜、涼子はひどく喉が渇いて目を覚ました。
2時過ぎ。
(変な時間に目が覚めてしまったけど仕方ない)
部屋を出ると1階の台所へと向かう。
階段を降りて居間へと続くドアを開けた。
居間を通り台所へと向いた先にネクタイを締めた英雄が立っていた。
「あら、お父さんおかえり」
涼子はそう言って英雄の横を通ると台所で水を飲んだ。
ようやく渇きを癒して振り向くと英雄の姿は無かった。
(あれ?)
そう思った刹那、1階の和室から英雄のイビキが聞こえた。
(寝るの早っ!)
涼子はそれ以上何も思わず部屋に帰って寝た。
翌朝。
起きて来た英雄に労いの言葉を掛けようと話し掛けた。
「お父さん、夕べは随分遅かったんだね」
「なんで?」
英雄は不思議そうな表情を浮かべた。
「だって2時過ぎにネクタイ締めたままそこに立っていたじゃない」
「そんな時間まで働くワケないだろ。もう嘱託だぞ」
還暦を迎えた英雄は営業職だが残業は無い。
年金の関係でむしろ早上がりしていた。
「じゃあ、誰・・・?」
涼子は絶句した。
「考えてみればおかしかったのよ」
体験談を話す涼子は若干興奮気味だ。
透の相づちも質問も待たずに続ける。
「真っ黒い影だったのにネクタイだけがハッキリ赤い柄物だったの。この家でネクタイを締めるのは父さんだけだから…」
「ああ、ネクタイは父さんのアイコンみたいなものだよな」
「うん。赤いネクタイなんて持ってないのに思い込んでたの」
「よくよく出る家だな、此処は」
透は今更ながらにため息をついて言った。
「ってゆーか、私喋っちゃったのよ!話しかけたのよ幽霊に!!」
「ハイハイ、ご苦労さん。取り憑かれちゃうかもな」
テンパり気味の涼子をからかう透はそうとうに悪い顔をして笑っていただろう。
「で、どこに立ってたんだ?」
そう尋ねると涼子は無言で透の足元を指差した。
透は慌てて後ずさると顔だけは平静を装った。




