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後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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部下が百人に

 

 ――その翌日。

 雪華は宮城前に呼び出され、慶昭帝の前で礼をとることになった。

 何やら状況がよく分からぬのだが、朱翠影がここまで付いて来てくれただけでなく、以前一度だけ合った部下九名のほかに、ぞろぞろぞろぞろ、たくさんの官吏がなだれ込んで来た。彼らは雪華を頂点として整然と並び、慶昭帝に対してこうべを垂れている。


 玉座に着く慶昭帝が、雪華に告げた。


「救国の巫女よ――期待した以上の働きである」


「ありがとう存じます」


「褒美に部下を増やしてやろう――追加で九十、どうだ少ないか」


 ……ん? 今なんておっしゃいました?


「今日からお前の部下は百名に増えたぞ」


 ええぇ……俯いていた雪華はそのまま固まり、顔色を失う。

 ……百名? あの、何度も言いますけれど、私は団子屋の娘なのですが……。


 しかし逆らうことはできない。

 慶昭帝の言葉は神の言葉である。


 * * *


 帰路につきながら、朱翠影が慰めてくれた。


「今日は出世祝いに、ごちそうを作りますね」


 慰め……いや、なぜか朱翠影は喜んでいるぞ。

 雪華が出世すると、彼は嬉しいのだろうか?


「どうしてお祝いなのですか」


 拗ねて尋ねれば、彼の口角が悪戯に上がる。

 雪華は思わずそれに見惚れた。

 朱翠影が、笑った……。


「天上天下唯我独尊――それはあなたのための言葉です」


「朱殿?」


 何を言っているの?


「あなたは地に伏せていた龍で、起きたばかり、まだまだ天高く昇れますよ。慶昭帝とは違う形で、人々を導ける。ふたりは共存できるし、互いに補い合うことで、世に安寧をもたらすことができるはずです。行けるところまで行きましょう――私はずっとおそばでお守りいたしますので」


 百名でも持て余しているのに、もっと部下が増えると、そうおっしゃる? ありがたくない言葉……。

 雪華は子供のようにむくれ、


「朱殿、私は今、我儘な気分です。点心は薄紅と、だいだいと、緑の色をつけて華やかにしてください。それで私は今日、果物しか切らないと決めましたから」


 八つ当たり気味に可愛げのないことを言ってみた。


「おおせのままに」


 ところが朱翠影はなんだか満足そう。


「……私が我儘を言った時は、たまには怒ったらどうですかね? 朱殿」


「あなたが我儘だったことなんて、過去にありましたか?」


 爽やかな風が吹き抜ける中、ふたりは仲良く並び、自邸に戻る。


 故郷の豆妹とうめいに、今夜手紙を書こう。船乗りになりたい豆妹が喜びそうな、面白いものが西市で買えたから、それも一緒に送るつもりだ。


 雪華はふと瞳を細め、ほっと息を吐く。

 ああ――今ではここが、安息の地。

 隣を見れば、朱翠影、あなたがいる……なぜか心が弾み、口元に自然と笑みが浮かんだ。




【後書き】

中華後宮ものを初めて書きました。

歴史・文化を勉強してみると奥が深く、『超難しい、覚える量が多い、しんどい』と何度も遠い目になりました。

とはいえ難しいぶん学びが多く楽しかったですし、中華後宮×恋愛×サスペンスミステリーのジャンルは、書いてみたら自分に合っているのかもしれないと思いました。現時点でプロットがいくつかできていることもあり、本作の続編含め、中華後宮ものはまた挑戦してみたいです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

飛頭蛮退治も完了し、キリが良いので一旦完結とします。

嘘から出たまことで雪華は『救国の巫女』として認められ、朱翠影はなんだかんだ幸せそうですね。

☆☆☆☆☆を押して、評価ポイントを入れていただけると嬉しいです。

それではごきげんよう。


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