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黄賢妃と慶昭帝

 

 ――半月後、後宮、通桂《つうけい》門前。

 出家のため旅立つ黄《おう》賢妃《けんぴ》は、美しく身支度を整え、門を前に佇む。

 扉が開かれ外の世界と繋がると、前の通りに佇んでいる慶昭帝と対面することになった。

 黄《おう》賢妃《けんぴ》は目を瞠り……すぐに艶《あで》やかな笑みを浮かべる。


 ありがとう雪華……最高の状態で慶昭帝とお別れできる。


 後宮に咲く大輪の華――黄《おう》賢妃《けんぴ》らしい見事な振舞いで、背筋を伸ばし、歩み寄る。

 慶昭帝は彼女を優しく迎え入れた。


「――そなたの献身に感謝する。達者で暮らせ、黄《おう》賢妃《けんぴ》」


 黄《おう》賢妃《けんぴ》……そう呼ばれるのも、これで最後ね。

 黄《おう》賢妃《けんぴ》の瞳に恋情が滲む……愛しい人……最後にひとめ会えた……これで悔いなく進める。


 わたくしはもう恋をしないでしょう。

 あなたはわたくしの最愛で、最初で最後の男性。


 それでいい……わたくしは後宮の華。あざやかに咲き、そして散る。

 あとに何が残るか? そうね――大切な思い出が残る。それで充分。愛するあなたの記憶に残れば、それでいい。


「ご自愛くださいませ、慶昭帝」


「美しいな……別れがつらい」


 慶昭帝が丁重に手を伸ばし、頬を優しく撫でたあとで、そっと黄《おう》賢妃《けんぴ》の額に唇を触れた。

 黄《おう》賢妃《けんぴ》がくすりと華やかな笑みを零す。


「もったいないお言葉でございます」


 よく晴れた日だった。

 黄《おう》賢妃《けんぴ》は堂々たる振舞いで、鮮烈に後宮を去った。



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