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【書籍化決定】後宮の縁切り女官  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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黄賢妃の献身

 

 ――豊紈《ほうかん》の証言。


「夜の食事を終えたあと、黄《おう》賢妃《けんぴ》から『境内《けいだい》を散歩しましょう』と誘われました」


「散歩に誘われたのは女官の皆さん全員ですか?」


 消えた魏祥《ぎしょう》の行動が気になる。散歩の時は一緒にいたのか? いなかったのか?


「いえ……私だけです」


 豊紈《ほうかん》はそう答えたあとで、何か言いたげに同僚の桃義《とうぎ》を見遣った。『これ、話していいのかしら?』という顔つきだ。

 すると桃義《とうぎ》が片眉を上げて意味ありげな表情を作り、挑発的に口を挟んだ。


「これには事情があるんですのよ」


「事情?」


「黄《おう》賢妃《けんぴ》は魏祥《ぎしょう》が悪いことをしていると疑って、あの晩、それを突き止めようとなさったのです」


「悪いこと、というのは具体的になんですか?」


「それは色々ありますわ。こっそり男と会うとか、寺院を抜け出して町に遊びに行くとか……とにかく魏祥《ぎしょう》はすばしっこくて、油断なりませんからね。あの女はすぐに悪さを思いつくのです」


「もしかして桃義《とうぎ》さんが、黄《おう》賢妃《けんぴ》に警告したのですか?」


 尋ねると、桃義《とうぎ》の口元に勝ち誇ったような笑みが浮かんだ。


「ええ、そうです。私が黄《おう》賢妃《けんぴ》に申し上げたのです――後宮内の話ならば、女官が少しさぼったとしても、内内の話で済みますわ。けれど、黄《おう》賢妃《けんぴ》付きの魏祥《ぎしょう》が外出先の寺院で羽目を外したとなると、慶昭帝はどう思われるでしょうか――と。いつもは私が魏祥《ぎしょう》の悪口を言っても、黄《おう》賢妃《けんぴ》は軽く聞き流していました。けれどあの晩はさすがに、顔色を変えていらっしゃいました」


「なぜ黄《おう》賢妃《けんぴ》は顔色を変えたのでしょう?」


「やだ分かりませんか? それは慶昭帝を愛しているからです」


 桃義《とうぎ》が気の毒そうに眉尻を下げるのだが、雪華にはなぜかその顔が『黄《おう》賢妃《けんぴ》、ざまあみろ』と嘲笑っているように感じられた。現に、彼女の唇は綺麗に笑んでいる。


「出家について黄《おう》賢妃《けんぴ》は『これで女たちが睨み合う厄介な後宮から出られる、すっきりするわ』なんて強がっていらっしゃいましたが、実際は慶昭帝に捨てられて、身も裂かれんばかりの苦しみを味わったはずです。愛しているからこそ、慶昭帝に軽蔑されたくない――だから女の意地で、綺麗に去ろうと決めていたようです」


 それを聞き、雪華は顔を曇らせた。

 ……切ないわ……。




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