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後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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これまでに三人の女性が消えている

 

キョウ道士が三人女官に数珠を与えた真の目的は、なんだったのでしょう?」


 朱翠影が疑問を呈した。

 飛頭蛮ひとうばん除けのお守りと言って渡したらしいが、気難しいキョウ道士が三人女官を守ろうとしたのは、確かに不思議だ。

 その点について、桃義とうぎから聞いた話で、興味深い事実が分かっている。


桃義とうぎは自分の手柄だと主張していました」


「手柄?」


「彼女はキョウ道士を尊敬しているようです。今仕えているおう賢妃けんぴの悪口を言ったら、キョウ道士に気に入られたらしく、色々と面倒を見てくれるようになったのだとか……。おう賢妃けんぴの出家先を見学するため、東北部の沶竟いけいに旅立つことも事前に報告していたみたいです。それで旅のお守りとして、キョウ道士から数珠をもらったそうで」


「なるほど」朱翠影の視線が鋭くなる。「桃義とうぎが話したことで、キョウ道士は、おう賢妃けんぴの旅の目的地が沶竟いけいであることを知っていたわけか……」


「それが何か?」


 雪華の問いに、朱翠影が答えてくれた。


「高位妃の旅程は、周囲に詳細が漏れぬよう、機密扱いになっていたはずです。おう賢妃けんぴが出家するということは誰もが知っているけれど、実際にどこへ行くのか、いつ旅立つのか――そういった詳しい内容は、公開されていません」


「なるほど……皆に具体的な行き先まで知らせる必要はないですものね……安全上、問題も出そうですし」


「そのとおりです。もしかするとキョウ道士は、皇后に頼まれたのかもしれませんね――『おう賢妃けんぴがどこへ出家するのか、調べておいてよ』と。そこでキョウ道士は、女官の桃義とうぎを手なずけて、色々聞き出すことにした」


「皇后お気に入りの道士からお守りの数珠をもらったら、桃義とうぎは有頂天だったでしょうね。旅程以外にも、色々話していそうだわ」


キョウ道士は強情な人ですが、必要とあらば、そういう親切な演技もできるので、余計に厄介なのです。桃義とうぎのように自分が賢いと思い込んでいる人間は、意外と簡単に騙される――キョウ道士にとってはよい鴨だったでしょう」


 朱翠影の話は考えさせられた。

 確かに桃義とうぎはよい鴨だ――雪華がキョウ道士の立場でも、秘密を聞き出したいなら、桃義とうぎを狙っただろう。

 大柄で物柔らかな豊紈ほうかんは、一見押しに弱そうだが、実は芯が強くて本心を簡単に出さない気がする。


 ところで……皇后がおう賢妃けんぴの行く先を知りたがったのは、どうしてだろう?

 もうすでに皇后の勝ちは確定しているのに……まだ負かし足りないということ?

 それとも単に、皇后は用心深い性格で、おう賢妃けんぴが後宮から完全に去るまでは気を抜かないつもりなのかしら?

 だとすると行先などを探ったのも、『念のために』そうしただけあり、今回の飛頭蛮ひとうばん騒動とは無関係の可能性もある。


 考えを巡らせていると、朱翠影から驚きの新事実を知らされた。


「寺院がある沶竟いけい地方は、ここ最近、いくつか重大な問題が起きていました」


 重大な問題……?


「それはおう賢妃けんぴ飛頭蛮ひとうばんを目撃する前ですか? あとですか?」


「前です」


 朱翠影が小さく息を吐く。


沶竟いけいでは過去半年、若い女性が行方不明になる事件が続いていました。いずれも家柄の良い娘ばかりです。これまでに三人の女性が消えています」


「いなくなった女性たちは、後宮と関係がありますか?」


「いいえ、地元で暮らしていた女性が行方不明になったので、後宮とは無関係です」


飛頭蛮ひとうばんが食べたのでしょうか?」


「さあ……どうかな。沶竟いけいという場所はもともと、飛頭蛮ひとうばんの目撃談が多い地域でした。昔、戦でたくさんの首が刎ねられたという歴史があり、そこから派生した怪談なのかもしれません」


 そういうことか……。



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