第十八話【温泉】
今回は少し短いです。
誤字脱字があったら指摘よろしくお願いします。
ヒノモト、海から吹く潮風により金属の劣化が早いこの国では木造建築の建物が多い、その為町並みは京都の様な古風な外観をしている。この国を見ると日本を思い出すな、特に俺は京都の近くに住んでいた事があったので色々と思い出す。
しかしこの国は日本ではない。道行く人々は袴や着物を着ており、草履や下駄を履いている者が多く、その暮らしぶりは現代の日本とは似ても似つかない。
そんな中で唯一現代を感じさせてくれる場所がある。それは我等がオリジナル称号持ちの内の1人、【狙撃者】の称号を持つリジット=フレアデルの拠点、湯治場だ。
この湯治場の入り口には「雑魚お断り!」と書かれた看板が掲げられており、何故かシドニー・オペラハウスを模した外観で無駄に近代的な見た目をしている。
その為周りの建物との調和が全くとれてない。まぁそのお陰ですぐに見付けられるから文句は言わないが、なんとも言えないな………。
「しかしまぁ、何時見てもリジットの拠点は目立つよな。」
「我はこの外観はあまり好かんな、周囲の景観を損ね過ぎだ。」
「ムゥン?我が筋肉の前ではどんな建造物も見劣りするであろうがぁ!」
ガイアは景観を損ねているとブツブツと文句を言い、マッスルはモストマスキャラーと言うポーズをして筋肉を強調させながら建物相手に自分の筋肉の凄さを叫ぶ………タオル一丁で。
「HEY!policeさん!此所に変態が居ますよ~!」
「T=V、変態は放って置いてさっさと行くぞ。この世界ではタオル一丁でもファッションとして認められるんだ、警官を呼ぶだけ無駄だ。」
T=Vが必死で警官を呼んでいるが、呼んだ所で無駄なので無視した方が賢明だ。それよりさっさと湯治場の入り口へ向かう。一応湯治場として作られているので、リジットの拠点には誰でも入れる。
しかし内部には表の看板にも書かれている通り、レベルが低い人間は利用出来ない様な仕掛けが色々と施してある。
例えば俺達が今居る入り口の引き戸を開けると、矢が俺達の頭目掛けて発射される仕掛けがあったりする。
俺はそれをホルスターにしまっていたリボルバーで撃ち落とし、ガイアは無視して頭に矢を受け、T=Vは掴んで受け止め、ジョンは手で叩き落とし、マッスルは持ち前の筋肉で弾く事で難なく仕掛けを無効化する。
そして何事も無かった様に入って行くと、今度は一直線状の廊下がありその先の壁の一部がパカリと開いて、中から大砲が姿を現した。すると次の瞬間、砲弾が1発発射される。しかしあの砲弾は特別な物でもないので、ガイアが素手で受け止めて逆に投げ返し大砲を破壊する。
そうして廊下を進んで行くと今度は廊下の床がパカッと開いて落とし穴が出現した。しかし俺は天上人の靴で空中を歩く事でそのまま空中を歩いて回避する。
そして他の4人も各々で落とし穴を回避する。ガイアは背中から羽根を出して飛び、T=Vは床が開ききる前に床のある場所まで跳び、ジョンは炎になり空中を飛行し、マッスルはガイアの脚に掴まり落ちずに済んだ。
それを見てふと思い付いた疑問を聞いてみる。
「俺今までこの仕掛けに掛かった奴見た事無いんだが、引っ掛かる奴居るのか?」
「ゲームの時は年間数名程が仕掛けに掛かっていたらしいぞ。」
ジョンからのプチ知識を聞いて「へぇ~」と呟きながらも、着実に仕掛けを突破して行く。そして十数分程歩いていると遂に脱衣所に到着した。
脱衣所には1~15まで数字が書かれた棚があり、その中に木で編まれた篭が入っている。その15の篭の内10個には既に衣服が折り畳まれた状態で入っている。
「他の奴等はもう先に来てるのか。」
この湯治場を利用するとしたらオリジナル称号持ちの誰かしか居ないだろうから、篭の中に入っている服は俺達以外の奴等の服だろう。
まだ使われてない篭を探し、脱いだ服を放り込んでいく。それに続いてガイア達も服を脱いで篭にしまい腰にタオルを巻いてから風呂場へ向かう。因みに余談だがマッスルは元々タオル一丁だったが、外で巻いていた奴とは別のタオルをアイテムボックスから出して、巻き直してから風呂場へ入ってきた。
磨りガラスが嵌められた引き戸を開くと、そこには桧で作られた大きな湯船とシャワー完備の洗い場、そして何故か屋内なのに露天と書かれた扉がある。どうやら他の奴等は露天風呂に浸かりに行っているのか、此方には誰も居ない。
取り敢えず洗い場でちゃっちゃと体を洗い露天と書かれた扉から露天風呂へ行く。するとそこにはーーー。
「食らえレベリー!必殺レモンデストロイヤー!!」
黄髪の少年がカットレモンを取り出し金髪の青年の目にレモン汁を飛ばす。しかし金髪の青年ーーー【神槍】ことレベリー=ランスロッドは飛んで来るレモン汁を回避してドヤ顔で一言ーーー。
「甘い!貴公の悪戯は既に見切っーーーぶふぁっ!?」
ーーー言おうとして黄髪の少年の方を向いた瞬間、生クリームタップリのパイを顔面に食らって温泉に倒れて沈んでいった。
それを見て黄髪の少年ーーー【雷光】ことラジー=フィフィロスは腹を抱えて笑い転げる。
「シシシシシ!馬鹿だねぇレベリー!レモン汁は罠!本命は顔面パイだよぉ~!シシシシシッ!!」
「食べ物で遊ぶのは良くないわよラジー?顔面パイをやるなら小生の居ない所でやりなさい?」
すると笑い転げるラジーを見ていた妖艶な雰囲気を放つ女性ーーー【女神】ことクリミ=セイラがラジーをやんわりと叱り、顔面パイは自分が居ない所でやれと言う。
結局彼女が見ていない所ならやってもいいって事なのか?と、疑問を抱いていると新たな声が聞こえてきた。
「それよりレベリーの心配をした方がいいんじゃないですか?さっきからピクリとも動かないんですけど………。」
「死にはせんじゃろうから放っておけばいいんじゃよ。」
クリミとラジーのやり取りを見ていた金髪の好青年ーーー【勇者】ことアラン=ディアスがレベリーの容体を心配して、横に浸かっていた小さい髭モジャのじいさんーーー【鍛冶王】ことカトラー=マスタに介抱した方がいいんじゃないかと訊ねるが、カトラーは放って置けばその内治るだろうと言う言葉に納得して、レベリーを助けに行こうと上げていた腰を下ろす。
その一連の騒ぎを見ていた銀髪の獣人ーーー【神狼】ことイサム=クドウが静かにしろと愚痴を溢す。
「もう少し静かに出来ねぇのか?酒が不味くなる。」
するとそれに対して紳士風の男ーーー【紳士】ことグレイアース=ロセコがーーー。
「君こそ静かにしていたまえ駄犬。」
ーーーと聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。しかしイサムは獣人、人の数倍は耳が良い為グレイアースの小声での呟きも聞き取っていた。
「テメェ!何回言えば分かるんだこのロリコン野郎!俺は犬じゃねぇ、狼だ!」
「君こそ何度言えば理解するのだね?僕をロリコンと一緒にしないでもらえるかね駄犬君?僕は幼女を見ているのが好きなのであって、性的対象としては見ていないのだよ!YESロリータ、NOタッチ!」
「それを世間ではロリコンって言うんだぜ?ギャハハハハ!」
「「お前は黙ってろソニック!」」
「そりゃあ無理な相談だぜ!ギャハハハハ!」
イサムとグレイアースが不毛な言い争いをしている所にニヤニヤ笑っている男ーーー【道化師】ことソニック=フロートが茶々を入れて場をさらに騒がしくする。
そんな騒がしい露天風呂の端に居る2人ーーー【狙撃者】ことリジット=フレアデルと【竜王殺し】ことレギィ=クリムゾだけが静かに酒を飲んでいた。
「………うるさ過ぎる、愚かだ。」
「確かに………。」
その光景を見て俺が思い付くのはただ一言だけだ。
「カオス!!」
そう言わずには居られない!こいつ等は会う度にカオスな状況を作り出している、だから毎回騒ぐのは止めろと注意しているのだがどうやら今回も全く効果がないらしい。
まったく、どうすればこのアホ共の馬鹿騒ぎを止められるんだろうか?
「リジットとレギィ!久し振りではないかぁ!早速盃を交わそうではないかぁ!!」
「ただ単に酒を飲みたいだけだろ?」
「そうとも言うなぁ!だがジョンも酒を飲みたいであろうがぁ!」
「そこは同意する!俺も飲むぞマッスル!」
俺が目の前の騒ぎをどうするべきかと考えている間に、マッスルとジョンがリジット達の元へ向かい一緒に酒盛りを始めた。
それを見て思わず「お前等も加わるんかいっ!?」と心の中でツッコミをしてしまう。
「アラン=ディアス!貴様よくもぬけぬけと我の前に姿を現したなコノヤロー!!決闘だぁ、決闘!今日こそ貴様をジャーマンスープレックスの餌食にしてやるわ!」
「ガイア!僕もcooperationするから一緒にあのイケメン野郎を倒そう!」
「よし!やるぞT=V!先にやるから合わせろよ!」
「おうよ!」
俺が心の中でマッスル達にツッコんでいる間に、ガイア達もアランに向かって行き、いきなりの強襲に驚くアランを他所にジャーマンスープレックスをしたり、アックスボンバーを食らわせたりしてプロレスを始めだした。
「………こいつ等アホだ。」
「「「「「誰がアホだとコノヤロー!!」」」」」
「イヤイヤイヤ!お前等以外に誰が居るんだよ?」
「「「「「上等だコノヤロー!表に出ろ!」」」」」
「あ゛ぁ?クソガキ共が調子に乗んじゃねぇよ。テメェ等こそ表に出ろよ!」
「「「「「よし!なら100秒待て、風呂に浸かったら100数えるまで出たらいけないって婆ちゃんが言ってたからな!」」」」」
「………お前等と真面目に喧嘩しようとした俺が馬鹿だった。」
「「「「「フッ、今更気付いたのか。」」」」」
こいつ等ムカつくわ~、1回死ねばいいのに………あれ?そう言えば馬鹿は死んでも治らないんだっけ?じゃあ死んでも意味ないか。
………今度馬鹿が治る薬でも作ってみるか?《錬金術》で意外と作れるんじゃねぇかな?
真剣に馬鹿が治る薬の作成方法を考えながら露天風呂に浸かり、体の疲れを癒す。露天風呂なんて何年振りだろうか?まぁこの露天風呂は屋内に擬似的な空と森を作って露天風呂っぽくしてるだけなので露天とは言えないが、まぁ一応は露天風呂だ。
「食らえ我とT=Vのコンビネーション必殺技!ギロチンアックスボンバー!」
「それってただ単に前後からラリアットするだけなんーーーぐはっ!」
「ギャハハハハ!見てみろよラジー!アランが白目剥いて痙攣してるぜ。」
「シシシシシ!レベリーの顔面パイより断然面白いなぁ~。シシッ、シシシシシ!」
「言わせておけば貴公!自分をからかうのもいい加減にしてくれたまえ!」
「無駄じゃよレベリー、そやつ等に何を言おうが聞かんよ。」
「がはははは!面白いではないかぁ!もっとやれぇ!!」
「他人の不幸を笑うとは、愚かだ。」
「そう言ってやるなリジット、あれくらいしか楽しみが無いのだろう。」
………これで静かだったら最高なんだがなぁ。




